ステップ2、インストアマーケティング
原: 次に2つ目は、インストアマーケティングにつながる話です。
マクロミルではインターネット上でアンケートをする以外にも、直接パネルにインタビューをしたり、会場に来てもらってCMを見てもらったり、パッケージを見てもらって調査を実施するCLT(セントラルロケーションテスト)をすることがあります。
そこにNECさんのセンシング技術を組み合わせることで、お客様へ提供するアウトプットの精度を上げていきたいと考えています。
CLTでは、擬似的に再現したコンビニやスーパーなど店頭の棚を見てもらって、参加者が注目していた商品や、何を手に取ったのか、どれとどれを比較したのかなどを観察します。
それを、NECのセンシング技術、主に視線解析を使うことで、棚のどこを何回見たのか、どこにどれくらい視線が滞留しているのか、などをデータ化することができます。
これまでの視線解析技術は特殊なゴーグルをかけて調査を実施するのが一般的でしたが、NECさんはカメラを棚側につけておいて、それを撮影することで、視線の動きが推定できる、という技術を持っています。この技術を使って視線を科学的に数値化することを検討しています。
そこにもう1つ組み合わせようと思っているのが、我々のニューロサイエンス技術です。NECさんの技術で視線の動きはわかりますが、その視線が行ったポイントでどういう感情になっているのかはわかりません。
我々のニューロサイエンス技術を組み合わせることができれば、例えば、脳波の前頭左右差という指標を分析すれば、今見ているものに対してポジティブに感じているのか、ネガティブに感じているのかというのがわかります。
小泉: 生体反応で理解しようと?
原: はい、生体反応で測定することで、よりホンネに近い消費者心理を明らかにすることを考えています。また、まだ全くの構想段階ですが、そのような計測をリアルな店舗でも実施できるようにできればいいと考えています。
リアルな店舗で消費者行動・心理を計測することで、メーカーさんが棚割などについて流通さんと商談をする際の科学的な材料を提供したり、消費者の購買までのプロセス(棚前で立ち止まった率や滞在時間等々)を可視化することでより科学的なショッパーマーケティングができるように支援できるようになると理想的ですが、未だ全くの構想段階に過ぎません。
ステップ3、セルフAIサービス
原: 3つ目は、これからの世の中においてAIの普及を加速できるかどうかのカギを握る「AIの民主化」をコンセプトに掲げたNECさんのセルフAIサービス「dotData」との協業です。
dotDataは高度な専門知識のある人間でなくても、ある程度のデータ分析の知見があれば、簡単に機械学習ができるツールです。
例えば、従業員満足度調査において、経営のKPIである「総合満足度」を上げようと考えた時に、調査結果データをこのツールと連携すると、独自のアルゴリズムで解析をした結果、「総合満足度に一番寄与度の高い変数は担当プロジェクト数である」というような結果を自動で出してくれます。
このようなセルフAIサービスはいくつか出てきていますが、NECさんの「dotData」の一番の強みは、独自の技術をベースに、大量のデータから特徴量を自動で抽出してくれるという点です。
つまり、属人的なデータサイエンティストのセンスが必要なく、限りなく自動に近い形で機械学習ができます。
小泉: 私は以前から「始めから総当りすればいいのでは」と思っていました。特徴量なんて決まっているわけだから、ある程度これは要らないだろうみたいなのを、人がやるにしても、それを勝手に想定すればいいんじゃないかと思ったんですけど、やっぱりやる人達出てくるんですね。マシンパワーとかきっといるんでしょうけど。
原: 昨今話題のディープラーニング自体も考え方としては随分前から存在していたものの、実現できるマシンパワーが不足していたと聞きます。同様に現在のマシンパワーが進化・発展していることがベースにあり、更にはNECさんのこれまで長く蓄積されてきているデータサイエンス技術がこれを可能にしていると思います。
このNECさん独自の技術・ツールに我々が保有しているデータを組み合わせてパッケージングして、クライアントにマーケティングの意思決定や施策に繋がるサービスを提供していきたいと考えています。
小泉: そういうことですね。コンシューマデータを持っているマクロミルじゃないとできない話ですね。
原: 弊社は横断的に消費者をトラッキングすることでカスタマージャーニー全体を見ることができるのが大きな強みであると考えています。
最終的に特定の商品を購入した人がそれより前にどういう広告に接触していたのか、比較検討をしているときにどういうwebサイトややアプリを閲覧しているか、などを分析したりすることもできますし、購入後のリピート状況などをトラッキングすることも可能です。
小泉: 物を売ることに関してこんなにつらい時代が来るんだって、昔は思っていませんでした。そんな中で今お話いただいたサービスは、救世主的かもしれません。今までできなかったことがフォローできる感じがします。
原: そういうクライアントの課題に応えられるソリューションにしたいと考えています。先程構想中とお話したリアル店舗の文脈でお話すると、メーカーさんや流通さんが課題と感じているのは、Amazonのようなプラットフォーマーのデータの独占です。
弊社はNECさんとの協業を通じて、横断的なデータを深く収集・分析することで、ショッパーマーケティングの分野において日本のメーカーさん・流通さんを支援していきたいと考えています。
小泉: この業界はもう変わらないなってちょっと諦めていたんですけど(笑)少し希望が見えてきました。店頭ポップの検証とかもできそうですよね。
原: そうですね。その辺の検証を重ねたデータを貯めていって、例えばポップのクリエイティブまでコンサルティングしていくようなサービス展開もありえるかもしれません。
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