昨今の金融ビジネスでは、債務の不履行など発生頻度が低い事象を、より高精度にAIを活用して予測していくことが期待されている。
しかし、従来のディープラーニングでは、データの発生頻度が低いと「ノイズ」に左右されやすく過学習(※1)を引き起こす傾向があることや、予測式が複雑であるため予測根拠が「ブラックボックス化」することがあり、開発の課題とされてきた。
住信SBIネット銀行株式会社と株式会社日立製作所(以下、日立)は、今回、日立の新しい人工知能「Hitachi AI Technology/Prediction of Rare Case」(以下、AT/PRC)と住信SBIネット銀行のデータハンドリング技術といった両社の技術・ノウハウを組み合わせたAI審査サービスを提供する合弁会社設立に関する基本合意書を締結した。
両社は、AI審査サービスの第1弾として、地域金融機関をはじめとする複数の金融機関に対し、地域創生に向けたサポートや業務効率化ツールである住宅ローンのAI審査サービスを本年10月から提供することを目指すとしている。
また、今後は資金決済情報などに基づいて先進的な審査をサポートするトランザクション・レンディングや、多重債務防止の観点からより精緻な審査が求められるカードローンなど、AI審査サービスの適用分野を順次拡大していくとのことだ。
日立の「AT/PRC」は、発生頻度の低い事象を高精度に予測することを特徴とした人口知能である。日立独自の「シグナルノイズ学習(※2)」により過学習を抑制し、予測根拠を定量的に提示する「影響度算出技術」を用い、予測根拠を説明しやすくすることで、冒頭の従来のディープラーニングの2つの課題の解決を図った。
また同社は、今回の取り組みをデジタルソリューション「Lumada」のユースケースとして広げていく方針だ。
※1 発生頻度の低い事象を扱う際に、教師データとなる実績データが少ないことから、汎用性のない特徴(ノイズ)までを学習し、必要以上に予測対象を限定してしまい、結果的に予測精度を下げてしまうこと。
※2 日立にて特許出願中。
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