AIは時折、「弱いAI」と「強いAI」や「汎用型AI」と「特化型AI」といったような分類をされる。では、弱いAIと強いAIとは何なのか。
弱いAI、強いAIの定義はアメリカの哲学者、ジョン・サール氏が1980年に定義されたとされる。ジョン・サール氏は強いAIの実現は不可能だとしている。
本記事では、弱いAI、強いAIに関して紹介する。
弱いAI
弱いAIとは、人間の知能の一部に特化した機能を実現するAIのことである。特化型AIも似たような意味で使われる。
画像処理や言語処理、将棋や囲碁の思考など、人間が設計した通りに動作するものである。与えられた仕事に対しては、自動的に処理ができる一方、想定外のことが起きたときは対応できない。
Googleが開発した囲碁AIプログラム「Alpha Go」は、2017年に世界最強棋士と呼ばれていた柯潔に勝利したが、自動車を安全に運転することはできない。
世の中に存在するAIは、現状全て弱いAIであると言える。
強いAI
強いAIとは、人間の知能に近い機能を人工的に実現するAIのことである。汎用型AIも似たような意味で使われる。
映画やアニメに出てくるような人間と同じように考え、自律的に行動するものだ。想定外のことに対しても、過去の別の経験に基づき学習し行動すると期待を寄せられている。
しかしまだ存在していない。
Googleの傘下であるディープマインド社のCEO、デミス・ハサビスは、「脳の働きは非常に複雑だがコンピューターで再現できないものはないというのが我々の現時点の見方だ」と語っている。
AIを活用した事例
画像認識
[参考記事]
京セラコミュニケーションシステムとRist、公共図書館システム「ELCIELO」と画像解析AIを組み合わせた蔵書点検システムを開発
京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)とKCCSグループの株式会社Ristは、公共図書館システム「ELCIELO」とRistが提供する画像解析AIを組み合わせた蔵書点検システムの開発を開始した。
まずスマホやタブレットなどで図書館の書架一面を撮影し、画像データをRistが提供する画像解析AIに取り込む。続いて画像に写る複数冊の書誌の背表紙からタイトル・著者名・分類番号をAIが分析、図書館が保有する書誌登録データベースとマッチング・照合し、蔵書点検を行う。
ディープラーニングの登場以降、画像認識技術は飛躍的に向上しており、2015年にはAIの画像認識の精度が人間の精度を超えたとされている。
音声認識
[参考記事]
TIS、音声対話AIでコールセンターの一次対応を自動化する「電話自動応答サービス」を提供開始
TIS株式会社は、一次対応をAIで自動化することで、コールセンターでの定型業務の比率を削減し、有人で対応すべき業務への人的リソースの割り当てを可能にする「電話自動応答サービス」を、音声・対話AIサービス「COET」のラインナップとして提供している。
AIによる音声認識を行うことで、広い分野の業務を自動化することができる。
需要予測
[参考記事]
西友と日立、 AIによる需要予測に基づき自動発注を行うシステムを導入開始
西友と日立製作所は、日立のAIによる需要予測に基づき自動発注を行うシステム「Hitachi Digital Solution for Retail/AI需要予測型自動発注サービス」を全国の西友の店舗へ導入した。
AIによる需要予測を行うことで、これまで経験や勘に頼っていたものをデータに基づき行うことができる。
上記の事例のように、様々な分野でAI(弱いAI)は活用されている。強いAIが実現されなくても、弱いAIやその他の技術を組み合わせることで、人間のような振る舞いを再現することは可能なのかもしれない。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

大学卒業後、メーカーに勤務。生産技術職として新規ラインの立ち上げや、工場内のカイゼン業務に携わる。2019年7月に入社し、製造業を中心としたIoTの可能性について探求中。