米国SAS Institute Inc.(以下、SAS)は、グローバル・ビジネス・リーダー450人を対象に、IoTおよびAIテクノロジーの利用についての調査結果を発表した。同調査は、IDCのリサーチ/分析部門とともにSAS、Deloitte、Intelが実施している。
同調査では、組織全体のIoTイニシアティブによる価値の実現のために最も重要な要素は、AIの活用であることが明らかとなった。IoT運用にAIを多用している調査回答者の90%は、期待を上回る価値が得られていると回答した。また、AIとIoTを併用している組織は、IoTのみを使用している企業よりも、従業員の生産性、イノベーション、運用コストといった多様なビジネス指標が、2桁の差で競争力が高いと考えられている。
SASのCOOであるオリバー・シャーベンバーガー氏は、次のように述べている。「今回の調査結果から、IoTデータを取り扱っている組織は、データから具体的な価値を引き出すためには、AIとアナリティクスが必要であることを認識していることが分かります。最も成功しているIoT運用は、実際にはAIoT運用であると言えるでしょう。」
AIoTとは、AIテクノロジーの支援を受けて、コネクテッドIoTセンサー/システム/製品データを組み合わせて行う意思決定だ。AIテクノロジーには、ディープ・ラーニング、機械学習、自然言語処理、音声認識、画像分析が含まれる。
同調査の、その他の調査結果は、以下の通り。
- 上級リーダーの79%は、IoTプロジェクトの意思決定に関与しており、このリーダーのうち92%は、AIoTの価値が期待を上回っていると答えている。
- 企業の68%は、日常的な運用における意思決定のためにIoTデータを活用し、スプレッドシートや他の非AIテクノロジーを通じて情報を得ている。IoTを用いて計画立案の意思決定のために情報を得ている回答者はわずか12%だったが、AIが関わると、そのデータを日常的な計画立案に用いている回答者は31%まで増加する。
- 回答者の34%は、AIoTを利用する最も重要な目的は増収だと回答した。その他、イノベーション能力の向上(17.5%)、顧客への新しいデジタル・サービスの提供(14.3%)、運用コストの削減(11.1%)が続いた。
- AIoT機能を開発した企業は、運用の高速化、新規デジタル・サービスの導入、従業員の生産性の向上、コストの削減など、組織の重要目標の達成に優れた成果を挙げている。例えば、AIを導入せずにIoTデータを使用して運用の高速化を図っている企業は、スピードが32%アップしたのに対し、構成にAIを追加した企業は53%アップした。
- IoTプロジェクトで利用される分析手法のリストの上位には、ビジネス・インテリジェンス(33%)、ニアリアルタイムのモニタリングと可視性(31%)、状況ベースのモニタリング(30%)などがある。
Intel Americasの最高データ・サイエンティストであるメルビン・グリア氏は、次のように述べた。「AIとIoTは、もはやバラバラのコースを進んでいるわけではありません。AIは、IoTデバイスがデータを収集/生成するIoT環境を完成させるとともに、そのデータに基づく重要な選択と対策の自動化を促します。」
続けて「現在、IoTを使用している組織の大半は、IoT資産によって何が起きているのかを認識し始めたばかりの、最初の『可視性』段階にいるにすぎません。しかしこうした企業は、信頼性、効率性、生産性という、より高度で、強固なAIを必要とする段階に進みつつあります。」と述べた。
IoTデータを活用して日常的な意思決定のために情報を得ている企業の圧倒的多数が、スプレッドシートや他の非AIテクノロジーを採用して、そのデータを運用の意思決定に使用している(68%)。
インフラストラクチャ・プロバイダであるWestern Digitalでは、すでにAIが同社のIoT戦略に実質的な影響を及ぼしているという。同社のシニア・ディレクター、ガウタム・ケラ氏は次のように語った。
「どのようにストレージ・デバイスを構築し、迅速に学ぶことができるのか? どのようにその品質と収益を確保できるのか? どのように市場投入期間やコスト発生期間を短縮できるのか?当社では開発プロセス、研究開発、工場においてこうした取り組みを促進するために、AIスキームを使用しています。」
こうした重要な躍進は、結果に大きな影響を及ぼすような、より高度かつ迅速な意思決定がAIによって可能になることを示唆している。「この機器は動作するか否か」といった運用上の問題から、需要と供給、製品の品質、小売における商品計画、医療施設の疾病の蔓延など、さまざまな意思決定へと焦点を拡大している。
IDCのインテリジェント・プロセス・オートメーション担当プログラム・バイス・プレジデントであるモーリーン・フレミング氏も、ケラ氏に同意している。「AIと組み合わせて、センサーデータ収集時のデータ更新のスピードをアップすれば、運用の問題を素早く特定/解決しつつ、即座に計画立案にフォーカスする組織の能力が高まります。この組み合わせにより、機動力と効率性が向上します。」
Western Digitalのケラ氏によると、同社でIoTデータとAIを組み合わせる際には、粘り強く前進し続ける必要があったと述べている。「これらのプロジェクトは現在、AI活用のための記録プロセス計画に組み込まれており、効果的に機能し経営陣の信頼も得ています。」
続けて「当社は現在、アドバンスド・アナリティクスを使用して、研究開発における課題に取り組んでいます。さまざまなアドバンスド・アナリティクス手法を用いてデータの形態を理解し、特徴や推進要因を理解し、また従来の手法や人の目では気づかない異常値の、隠された影響を探すことができます。」と述べた。
グローバルな金属メーカーであるUlbrich Steelの最高執行責任者、ジェイ・シー氏は、全社的にAIoTへの賛同を得ることが最優先であると、次のように語った。
「人は、自分の仕事を失うのではないかと恐れています。私の考えでは、AIoTによって、人の働きは現在より少なくとも2段階は向上します。この結果として、オペレーターが事業部門のマネージャーとして機能している様子を、私は実際に目にしています。SAS Analytics for IoTは、能力駆動型の戦略をより効果的に実行するために使用できる、AI組み込みソリューションの1つだと思います。」
Deloitte Consulting LLPのプリンシパルでありInternet of Things Practiceのリーダーであるアンディ・デッカー氏は、AIoTの成功に最も重要なことは、トップから始めることだと語っている。
「こうしたイニシアティブは本来、CEOの検討課題に含める必要があります。CEOは繰り返し、『これは組織内で必要なことだ』と主張するべきです。ビジネス部門がAIoTイニシアティブを主導しなければ、その成功はあり得ません。これらは実際には、テクノロジ・イニシアティブではなく、ビジネス・イニシアティブなのです。」
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