河川ポンプは、大型河川において降水量が増加した際に本川から支川へ逆流するのを防ぐための樋門(ひもん)が閉じられた際、行き場を失った支川の水流を本川へ汲み出すために排水機場に設置されている設備である。
クボタ機工株式会社は全国の河川ポンプを管理保全しており、各自治体や事業会社からの要請を受け、1箇所に対し実地での撮影点検、判定、報告書作成までを2~3人の点検員が1週間~2週間ほどかけて実施していた。ポンプの点検方法は、内視鏡カメラをポンプ内に挿入して映し出された映像を人が目視で確認するもので、内部の腐食・異常を発見するのに時間がかかる、判定するのに一定の経験や技術習得が必要という課題を抱えていた。
今般、クボタ機工とAIソリューションを開発・提供するAutomagi株式会社は、排水機場の河川ポンプ内のサビをAIが検知するツールを共同開発した。
同ツールは、内視鏡カメラで撮影された動画データをクラウド環境上のAIに転送し解析すると、元の動画上のサビがある箇所に対して劣化度ごとに色付けされたデータを確認することができる。
クボタ機工がこれまで点検した動画データをもとに教師データを作成し、Automagiの保有するサビ検知AIの開発技術を応用して開発された。サビ検知AIは深層学習による画像映像解析を活用しており、膨大なサビデータを学習させたモデルによって画像や動画からサビを98%の精度で検知、腐食の進行度に応じた劣化レベルの表現を可能にする。
これにより、人では取りこぼしてしまっていた箇所まで網羅的に検知ができ、補修の必要性を判断するサポートを受けることができる。また、動画のどの部分が特に劣化度が大きいかが可視化されるため、全体の点検の効率化にも繋がるほか、AIが統一基準で検知するため、人による判定のばらつきを軽減する。
今後は、まず今回開発したツールを運用しデータを追加していくことでより精度の高いエンジンの開発を継続する。さらに、目視で判断していたサビ以外の劣化や異常も並行して検知するモデルを構築しており、順次実装を予定しているほか、現地ですぐに結果が見られるリアルタイム化も見据えて検証・開発を進めるとした。
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