近年、人工知能による映像・画像の解析技術や、ディープラーニングによる人に近い視認性を持つ画像認識技術は、周辺環境の安全性把握や障害物検知などが必要とされる監視カメラ、自動運転やロボティクスなどさまざまな分野で実用化されている。また、工事現場や工場内などにおける事故を未然に防ぐためのリアルタイムな安全対策に加え、昨今の新常態(ニューノーマル)への対応として、密集密接を予防する用途としての注目も急速に高まっている。
一方、これらの実現にあたっては、システム導入前に早期に試行して検討したいという要望や、本格導入に際し効率的に短期間でシステムを立ち上げたいという要望があった。
株式会社日立ソリューションズ・テクノロジーは、独自のDNN(※)技術を用いてカメラの画像からリアルタイムに自動車や人物、危険物などを検知し距離を測定する「画像認識エッジソリューション」の機能を強化し、開発期間の短縮とPoCの早期実現を支援するツールを新たに加え、対応デバイスを拡充し、提供を開始した。強化された内容は以下の通り。
- AI学習データ品質向上支援ツール
- ソリューションパッケージ
- 対応デバイスの拡充
AI学習データ品質向上支援ツールは、学習データを解析する「データクレンジングツール」と誤認識データを解析する「誤認識分析支援ツール」から構成されている。
データクレンジングツールでは、学習データを解析し、認識率に悪影響のある不適切なデータを自動抽出する。悪影響のある不適切なデータを取り除くことで認識率を向上する。また、増大する学習データのスリム化が可能となり、学習時間を短縮する。
誤認識分析支援ツールでは、誤認識データを解析し、認識率に寄与する部分と寄与しない部分をピクセル単位で見える化して原因を明確にする。これにより、学習に効果的な画像データの選定基準を明らかにする。選定基準に合った画像を学習データに追加することで、認識率を向上する。
これらのツールにより、物体の誤認識の原因を見える化し認識率の向上とカメラAIシステムの学習期間の短縮を実現する。今回、AI学習データの品質向上により、約5000枚の学習データから不適切な学習データ約500枚を削除することで、再学習の回数を7回から3回に削減し開発期間を短縮することができた。
ソリューションパッケージは、利用ニーズの高い、物体検出/測距/検出結果解析/結果出力の機能をあらかじめパッケージ化している。企業は目的に合わせて機能を選択することで速やかにシステムを構築することができ、PoCの早期実施に寄与する。
従来より対応しているNVIDIA製「Jetson TX2」「Jetson AGX Xavier」に加え、小型で軽量、安価な「Jetson Nano」を新たにラインナップに追加した。Jetson Nanoの追加により、コストを抑えたPoCの実現とシステムの小型化への要望にも対応可能となった。
※ DNN(Deep Neural Network):人間の脳神経系を抽象化し、情報の分散処理システムとしてとらえた多層のモデル。
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