日本は、経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development)加盟国の中で睡眠時間が最も短く、かつ年々短くなる傾向にあることが知られている。
近年、話題となった「睡眠負債」とは、日々の睡眠時間の短縮が本人の気付かないうちに蓄積されること、それにより日中の集中力低下、精神状態の悪化、生活習慣病を含む様々な疾病リスクの増大などの多くの悪影響が現れることを意味している。企業においても同様で、従業員の睡眠不足が蓄積、もしくは従業員の睡眠障害によって、労働生産性の低下や経営効率の低下を招いている。
このように、睡眠負債が大きな問題を引き起こす一方で、睡眠課題を解決する医学的・科学的エビデンスに基づいたソリューションはまだまだ社会実装が進んでいない状況にある。
株式会社ブレインスリープと東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)は、睡眠におけるデータ分析基盤の構築および睡眠障害診断のAI予測に関する実証実験を共同で開始した。内容は以下の通り。
- 睡眠データ利活用基盤を構築
- AIによる睡眠障害診断予測
- 企業の健康経営促進を支援
- 新しい睡眠ソリューションを創出したい企業およびスマートシティを推進する自治体を支援
ブレインスリープが所有する睡眠に関するデータおよび今後の研究データを一元的に蓄積し、AIによるデータ分析等で更なる活用が可能な睡眠データ利活用基盤を構築する。今後、健康経営を促進したい企業、新しい睡眠ソリューションを創出したい企業およびスマートシティを推進する自治体へ、同データ利活用基盤を用いた支援を実施するという。
太田睡眠科学センターと連携し、睡眠障害の診断をサポートするAIモデルの構築を開始した。
現在、睡眠障害の確定診断には施設宿泊型の終夜睡眠ポリグラフ検査(以下、PSG検査)(※1)が必要であり、睡眠障害の疑いのある人の時間的・コスト的な負担が大きい状況にある。一方で、近年国内では睡眠障害を訴える人が急増し、適切な医療体制が必要とされているが、正確な診断ができる睡眠専門医が所属する医療機関や睡眠専門医そのものの人員不足も深刻な課題の一つとなっている。
同プロジェクトでは、太田睡眠科学センターの受診者でPSG検査により確定診断が下された約一万人の問診・検査データを活用し、AI技術を用いて睡眠障害を予測するモデルを構築することで、よりスピーディーかつ効率的に睡眠障害の診断をサポートする環境の構築や睡眠障害の早期発見を目指すとのことだ。
睡眠偏差値forBiz(※2)を活用し、従業員の睡眠およびエンゲージメントを可視化し、表面化されていない課題を分析することで、従業員のプレゼンティーズム(※3)改善の支援を実施する。分析では、睡眠だけではなくストレスや生産性など多角的な分析を実施し、課題を明確化したうえで解決のためのソリューションを用意するという。
日中の眠気による労働生産性の低下に対して、適切な仮眠が生産性を向上させるだけでなく、疾病リスクの減少にも効果があることが明らかとなっている。第1弾として、センシング・IoT技術を駆使してひとり一人の最適な仮眠時間および覚醒タイミングを特定し、スムーズな目覚めを促すための技術検証を実施する。
同検証によって取得した知見およびノウハウを提供し、新しい睡眠ソリューションを創出したい企業およびスマートシティを推進する自治体を支援する。
※1 PSG検査:脳波・眼球運動・心電図・筋電図・呼吸曲線・いびき・動脈血酸素飽和度などの生体活動を、一晩測定する検査。
※2 forBiz:ブレインスリープが提供する睡眠可視化Webサービス。
※3 プレゼンティーズム:出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題により、充分にパフォーマンスが上がらない状態。
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