AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは?

東芝と理研、利用環境にあわせてAIの性能と演算量を学習後に調整可能な「スケーラブルAI」を開発

近年、AIは音声認識や機械翻訳をはじめ、自動運転向けの画像認識まで様々な用途で活用されている。また、同じ機能を持つAIでも、活用するシステムやサービスは多岐に渡っている。例えば、カメラ画像から人物検出を行うAIは、スマートフォンやスタンドアローン型の監視カメラに加え、AGV等で使用されている。利用するシステムごとにプロセッサの能力が異なり、またAGVのように近くの人物との衝突を避けるために、高精度に位置を把握する必要があるものもある。

現状は、人手で演算量と必要な精度とのバランスを試行錯誤しながら、システムごとにAIを一から開発、学習しているが、開発期間やコストがかかるとともに、利用するシステムごとに異なるAIが開発され、管理が煩雑化するため、スケールメリットを出すことが困難な状況だ。さらに、利用するシステムの演算能力に応じて単一のAIを展開するスケーラブルAIの開発が始まっているが、元のAIから演算量を落とすとAIの性能も落ちるという課題がある。
東芝と理研、利用環境にあわせてAIの性能と演算量を学習後に調整可能な「スケーラブルAI」を開発
株式会社東芝と国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)は、独自の深層学習技術により、学習済みのAIをできるだけ性能を落とさず演算量が異なる様々なシステムに展開することができる学習方法「スケーラブルAI」を開発した。

同技術は、元となるフルサイズの深層ニューラルネットワーク(フルサイズDNN)(※)において、各層の重みを表す行列を、なるべく誤差が出ないように近似した小さな行列に分解して演算量を削減したコンパクトDNNを用いる。コンパクトDNNを作る際、従来の技術は、単純にすべての層で行列の一部を一律に削除して演算量を削減するが、同技術は重要な情報が多い層の行列をできるだけ残しながら演算量を削減することで、近似による誤差を低減する。

学習中は、様々な演算量の大きさにしたコンパクトDNNとフルサイズDNNからのそれぞれの出力値と、正解との差が小さくなるようにフルサイズDNNの重みを更新する。これにより、あらゆる演算量の大きさでバランスよく学習する効果が期待できる。学習後は、フルサイズDNNを各適用先で求められる演算量の大きさに近似して展開することができる。

さらに、学習を通して演算量と性能の対応関係が可視化され、適用先に必要な演算性能を見積もることが可能になり、適用先システムのプロセッサ等の選択が容易になる。

通常、AIエンジンは適用するシステムやサービスごとに求められる演算量や性能に応じて、AIのモデルサイズ等を人が試行錯誤しながら設計・開発するが、同技術を導入することで、例えば大規模で高性能な人物検出AIを一度学習すれば、スマートフォンや監視カメラ、無人搬送車といった適用環境ごとの試行錯誤が不要になる。

また、異なる適用先に対してAIエンジンを共通化することが可能となり、AIエンジンの開発に必要なリードタイムの削減や管理の効率化が期待できる。

今回、一般画像の公開データを用いて、被写体に応じてデータを分類するタスクの精度を評価したところ、同技術によって学習したフルサイズDNNから演算量を1/2、1/3、1/4に削減した場合、分類性能の低下率をそれぞれ1.1%(2.7%)、2.1%(3.9%)、3.3%(5.0%)(カッコ内は従来手法の場合)に抑えることができた。

東芝と理研、利用環境にあわせてAIの性能と演算量を学習後に調整可能な「スケーラブルAI」を開発
スケーラブルAIの効果
東芝と理研は今後、同技術をハードウェアアーキテクチャに対して最適化することで、様々な組み込み機器やエッジデバイスへの適用を進め、実タスクでの有効性の検証を通して、2023年までの実用化を目指すとしている。

※ ニューラルネットワーク(Neural Network : NN):脳の神経細胞の仕組みをコンピューター上で表現した数理モデル。中間層が複数ある場合は、深層ニューラルネットワーク(Deep Neural Network : DNN)と呼ぶ。AIの中のひとつ。

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