製品・システムの予知保全市場の拡大により、異常検知とその対策が求められているが、インフラ機器など異常発生のメカニズムが複雑なものの対策を立てるためには、異常検知で得た異常が「なぜ」発生したかが分かる技術も同時に求められている。
そこで株式会社東芝は、社会インフラ設備における、機器の異常検知と異常発生要因を判定する物理モデルを自動生成するAI技術を開発した。
今回発表されたAI技術は、測定した時系列データから、対象となる機器の状態や動作を表現する物理モデルを自動で生成する。
自動生成される物理モデルでは、データ項目の相関をネットワークで表現し、項目間の関係性は物理学や、工学に基づく関数を組み合わせて表している。
関数の候補は、東芝が保有する機械工学の知識に基づいてデータベース化されており、突発的な温度変化や風の流れといった複雑な現象にも対応可能。
さらに、従来のAI技術では難しかった、関数の物理的な意味を変えずに行う組み合わせ作業を、関数の物理的な影響度合いを考慮できるスパース推定アルゴリズムや、関数の候補を選択する空間探索アルゴリズム、およびデータ拡張アルゴリズムを組み合わせて開発している。
また、従来の物理モデルの生成には必要だった機器の寸法や部品の物性データは不要となり、センサーによる計測データのみで物理モデルを生成できる。
これにより、製品・システムの運用中に物理モデルを定期的に更新することが可能。更新された物理モデルの変化を分析することで、製品・システムの異常発生の予兆検知と、その原因を特定することができる。
さらにこの技術を、電力制御や電力供給に関わる回路を集積した部品であるパワーモジュールの異常検知で重要になる、温度予測に適用することで、物理モデルの自動生成において、発熱チップから冷却器に熱が伝わり、空冷ファンにより冷却器から放熱される伝熱形態が正しく選択されることが確認された。
生成した物理モデルは平均誤差1℃未満で温度を高精度に予測でき、計算に数千~数万倍の時間を要する詳細数値シミュレーションに代わり、リアルタイムでの予知保全を実現することが可能になる。
今後は、社会インフラ関連製品やシステムへの適用範囲の拡大と有効性の検証を進め、2023年度の実用化を目指すとしている。
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