2021年10月、IoTNEWSの会員向けサービスの1つである、「DX情報収集サービス」の会員向け勉強会が開催された。本稿では、その中からパナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社 松田栄治氏のセッションを紹介する。
ネットワークカメラは、主に「見て、録る」といった用途に用いられる。近年では、AI技術よって、多様な用途に使われるようになり、画像センサーとしての位置づけが強くなってきている。
そこで、パナソニックi-PROセンシングソリューションズ株式会社(以下、i-PRO) S&Sジャパン ビジネスアライアンス マネージャー 松田栄治氏に、同社の提供するAIネットワークカメラに関する技術やソリューション、それらの取り組みを通じて注力している共創についてご講演いただいた。
i-PROカメラの特長
代表的なi-PRO製品には、Visibility(究めた高画質)、Compression(究めた高圧縮)、Reliability(究めた高信頼・高耐久)、Data Security(究めたデータセキュリティ)、Analytics(究めたデータ分析)の5つのコンセプトがあるという。
これらのコンセプトに基づいて生み出されたi-PROカメラのコアテクノロジーについて松田氏から説明があった。
暗い場所を鮮明に映し出すカラーナイトビジョン
i-PRO社製のカメラでは、暗い場所でも高画質な画像をカメラに収めることができるそうだ。上の画像のオレンジの車を見てもわかるように、光が少ない暗い時間帯でも、色の再現性を高く保つことができるという。
スマートコーティングテクノロジーによるデータ圧縮
画像データは、非常に大きな容量になるので、圧縮処理が必要になる。i-PROでは、データ圧縮にスマートコーディングを用いている。
スマートコーディングとは、人の顔は鮮明に写すために低圧縮、背景の部分は高圧縮、というように被写体によってメリハリをつけてデータ圧縮処理を行う技術だ。結果、従来に比べ、最大で50%近くのデータを削減できるのだという。
インテリジェントオートによる画質最適化
高速で走る車などを映像に収める際、高速にシャッターを切ることで、動画を生成している。ただ、輪郭やナンバープレートのような細かい部分の画像にブレが生じてしまうと、正確に識別することが難しくなる。インテリジェントオート機能は、高速で動く物体を検知し、動体に多くのデータ領域を与えることで、輪郭やナンバープレートのブレ・歪みを抑制することができるという。
どんな環境でも運用可能な高耐久性
IK10規格に則った耐久試験では、重さ10kgのおもりを高さ20cmから落下させて、壊れるまでの試行回数を測定する。他社製品は、この試行を4回で停止しているのに対し、i-PRO製品は、同じ試行を18回繰り返しても映像を映し出すことができる。
風雨に対応した親水コーティング
台風など激しい風雨に曝された際は、カメラの画像が水滴で見えづらくなる。i-PROでは、親水コーティングをすることで、水滴を表面になじませて落とすことができる。また、コーティングの効果で、汚れの付着も抑制できる。これによって、映像が見えやすくなることはもちろん、カメラで録画した映像を画像処理する場合でも、処理しやすい映像を提供することができるのだという。
エッジAIネットワークカメラ構想
Society4.0やIndustry5.0に向けて社会的にDXが求められている中、i-PROは、カメラ技術で貢献していくべく、エッジAIネットワークカメラ製品に注力しているのだという。
i-PROは、ソフトウェア開発キット(SDK)を用いて、顧客の要望に沿ったアプリケーションを開発できる環境を提供している。i-PROのネットワークカメラとアプリケーション開発できるパートナー企業とが連携し、AIネットワークカメラソリューションを展開しているという。
例えば、ネットワークカメラ自身がAIアプリケーションによって、人間や自動車、二輪車などを自動検知し、その部分のビットレートだけを向上させることで高画質な映像を実現している。また、映像からあらゆるデータを取得・解析するアプリケーションを入れることで、映像を用いたセンサーとして使うこともできるそうだ。
1つのi-PROネットワークカメラに、最大3つのAIアプリケーションを追加することが可能だ。例えば、映像データからリアルタイムに、侵入を検知し、人物の顔特徴量・デモグラフィックな情報を取得するといった同時動作もできるそうだ。このように、単体のカメラに複数アプリケーションを追加することで、マルチ機能の映像センサーのように動作できるという。
オープンな連携を拡大
i-PROは、アプリケーション開発できるパートナー企業との共創に注力しているそうだ。SDKを無料で公開してアプリケーション開発の機会を提供している他、AIモデルの変換や実装を行う開発者に対して技術サポートなども行っているという。
共創の事例として、不審行動検出のVAAKと連携が紹介された。この例では、クラウドの映像録画サービスの「みえますネット」と連携して不審行動検出AIサービスを展開している。その他にも、NEXT-SYSTEM、Vieureka、KONICA MINOLTAなどのパートナー企業と連携し、製品化しているのだという。
i-PROは、パートナー企業との連携を加速させビジネス機会を創出するために、「i-PROパートナーズサークル」というコミュニティを発足させた。i-PROパートナーズサークルに参加すると、技術サポートやパートナー間のマッチング、展示会などを通じた共同マーケティングなどのメリットがある。
最後に、松田氏は、ネットワークカメラのコア技術を持つi-PROと、独自の強みを持ったパートナー企業様との連携を通じて、AI社会の実現に貢献してゆくと講演を締めくくった。
IoTNEWSが提供するDX情報収集サービス
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本稿は勉強会のダイジェスト記事だが、実際の勉強会では、IoTやAIの現場を担当している有識者からさらに深い話を聞くことができ、直接質問する事ができる。勉強会以外にも、株式会社アールジーンのコンサルタントが作成するトレンドレポートの提供や、メールベースで気軽な相談が可能なDXホットラインを提供している。
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大学院卒業後、メーカーに勤務。光学に関する研究開発業務に従事。新規照明技術開発を行う。2021年4月に入社し、DXの可能性について研究中。