大規模で複雑なプラントでは、異常を早期に検知する必要があり、様々な異常予兆検知AIの開発が進められているが、大規模で複雑なプラントにおける検知精度の向上が課題となっている。
そこで株式会社東芝は、プラントに設置された数千点のセンサーが得た膨大な時系列データから、プラントの状態の変化の中に埋もれた異常の兆候を早期検知する異常予兆検知AIを開発した。
この異常検知AIは、プラントの状態変化に伴う大量のセンサーに跨る複雑な関係を学習することにより、従来では捉えられなかった異常の兆候を検知する。
東芝独自の深層学習技術を用い、センサー値の微小な変動に埋もれた異常の兆候を検知する。二つの深層学習モデルを用いてセンサー値の正常状態を予測することで、センサー値と予測値のずれから、従来では捉えられなかったセンサー値の複雑な変動に埋もれた微小な異常変動を検知することができる。
発電や水処理などポンプを用いて流体を扱うプラントのセンサー値には、プラントの運転操作や出力変動などに伴い、多くのセンサーで同時に起きる、比較的振幅が大きくて周期が緩やかな「大まかな変動」と、ポンプの振動や局所的な温度変化などに伴って、少数のセンサーで同時に起きる、比較的小さく速い「微小な変動」という、二つの主要な信号がある。
「大まかな変動」と「微小な変動」という異なる変動から得られる二種類の信号を、各々の変動特性に合わせて設計した二つの深層学習モデルで学習し、各モデルからの予測値を足し合わせることで、センサー値の正常状態の高精度な予測を実現した。
この異常検知AIを使用し、水処理試験設備の公開データで異常検知を実施したところ、検知性能は従来技術よりも12%向上した。
また、東芝エネルギーシステムズ株式会社子会社である株式会社シグマパワー有明が運営する三川発電所にて、異常検知AIの実証実験を進めており、大量のデータをオンラインで監視し、早期に異常を検知するという結果が確認されている(トップ画参照)。
今後東芝は、発電プラント向けPoC用システムの提供準備を2021年度中に完了し、他の様々なプラントにおいても性能実証を行っていく予定だ。さらに、今回発表された技術を用いた異常予兆検知システムを、ユーザーのニーズに応じ、産業分野向けIoTサービスのポータルサイト「Toshiba SPINEX Marketplace」への展開や、オンプレミスの両方での提供を目指し検討を進めている、としている。
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