横河電機と奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)は、2018年にIEEE国際学会で「プラントへ活用可能な強化学習技術」として認められたFKDPP(Factorial Kernel Dynamic Policy Programming)というアルゴリズムを共同開発している。
そして2019年には、プラントを模した制御トレーニング装置での実験に成功し、2020年4月にはプラント全体を対象にしたシミュレータ上での制御の可能性を確認するなど、自律制御AIを理論から実用に範囲を広げてきたという。
この技術には、既存の制御手法(PID制御・APC)では自動化できなかった箇所に適用でき、相互干渉する目標に対応できるなどの強みがある。
そうした中、横河電機株式会社とJSR株式会社は共同実証実験を行い、AIが化学プラントを35日間、自律制御することに成功したことを発表した。
今回の実証実験では、実際のプラントにおいて強化学習AIが安全に適用できることが確認された。また、既存の制御手法(PID制御・APC)が適応できず、運転員が制御で使用するバルブの操作量を自ら考えて入力する、手動制御のみでしか対応できなかった箇所をAIが制御できることを確認したという。
さらに、蒸留塔の留出物の品質や液面レベルを適切な状態に保ち、かつ排熱を熱源として活用するという条件をAIが満たし、品質の安定化、高収量、省エネ制御を実現した。

この制御箇所では、急激な外気温の変化が制御の状態を乱す大きな外的要因(外乱)であったが、降雨や降雪などもある中、精製された製品は厳しい基準を満たし、既に出荷されている。良品のみが生産されるため、規格外品が発生することによる燃料や人件費等の損失、時間的損失がなくなった。
両社は今後も、プラントでのAIの活用方法を検討していくとしている。
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