道路をはじめとする社会インフラは、老朽化の進行、点検コストの増加、点検員の不足といった課題がある。
そうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、画像認識AIを用いて、様々な社会インフラ設備に発生した錆の高精度な検出に成功したと発表した。
画像認識AIは、必要な機器や装置を車両に搭載し、走行しながら空間情報を取得するシステム「Mobile Mapping System」(モービルマッピングシステム、以下MMS)を用いて、取得した沿道の画像から、複数のインフラ設備を識別し、それぞれのインフラ設備(道路附属物および柱上設備)に発生している錆を、97.5%の精度で検出できることを確認した。
今回の撮影では、MMSで沿道のインフラ設備を一定間隔で撮影し、横向きのデジタルカメラによって道路附属物(ガードレール、標識、ミラーなど)の画像、上向きのデジタルカメラによって柱上設備(金物、ケーブルなど)の画像を取得。取得した道路附属物の画像1000枚(設備に錆がある画像は587枚)、柱上設備の画像1000枚(設備に錆がある画像は135枚)に対して、画像認識AIを用いた設備の認識と、各設備の錆の検出を行った。
検証の結果、道路附属物と柱上設備の合計で、画像2000枚中1885枚において設備を正しく認識し、錆がある画像722枚中704枚において錆が正しく検出された。
これにより、MMSで同時に撮影した画像から、複数のインフラ設備を一括で識別・点検できるため、インフラ管理者毎に実施していた現地点検の集約による、稼働削減が期待できる。
さらに、画像認識AIによる点検のため、点検員毎によって発生していたバラツキをなくし、点検品質の均一化が可能になる。
今後は、MMSやドローンなどで撮影された画像に対して、画像認識AIによる錆検出の実用化を進めていくとしている。さらに、画像認識AIについては、錆以外の変状検出や、MMSで画像を取得する際のGNSS情報と取得画像から、設備が設置されている経度緯度の高精度な位置推定に取り組んでいく予定だ。
なお、この技術は、2022年5月18日・19日に開催予定の「つくばフォーラム2022」にて展示される。
画像認識AIの特長
複数の設備の認識が可能
様々な設備種類・形状の画像や、異なる照度や構図で撮影された画像を、十分かつ均等に学習させることにより、複数の設備を正しく認識することが可能。例えば、道路附属物ではガードレール・標識・ミラーなどの種類を、柱上設備では金物・ケーブルなどの構成物を、別物体として認識し、それらの各領域を画素単位で検出する。
複数のAIを活用
暗い画像から錆を見つけられるAIや、微小な錆領域を見逃さないAIなど、特徴の異なる複数のAIの結果を、総合的に判断する。その結果、逆光や曇りによって暗く写った設備からでも、小さな錆まで高精度に検出することが可能。また、道路附属物や柱上設備などの属性を画素単位で付与できるため、どの設備種類や構成物に錆が発生しているかを判定することができる。
画像認識AIは、実地で取得した合計数万枚のインフラ設備と、発生した錆の画像を学習させており、対象を特定の設備に限定することなく、複数のインフラ管理者で活用することができる。
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