社会インフラにおける特定の異常は、様々な異常画像と正常な画像を大量に収集し、異常を検出するモデルを作成・学習する必要があるが、発生する異常や異常につながる変状には様々なものがあり、多種多様な異常の種類ごとに大量の学習データを用意し学習させるなどが必要であった。
しかし、点検員に危険が伴い立ち入りが難しいといったことや、現地への移動に手間や負担がかかるインフラ施設では、学習に必要な大量のデータ収集や、正常時の画像と正確に位置合わせをした画像の撮影が困難だ。
そうした中、株式会社東芝は、インフラ点検向けに、点検個所の数枚の正常画像から、ひび・さび、水漏れ、異物の付着、部品の脱落などの、発生頻度が低く未学習の異常を検出するAIを開発した。
今回発表されたAIでは、点検画像と正常画像の比較を、事前学習で学習済みの深層モデルの特徴量を用いて行うことで、従来必要だった現場での学習が不要だ。
従来技術で計算した異常スコアマップに、数枚の正常画像から同じような特徴部分を差し引いて、異常スコアマップを補正する独自の技術を用いることで、異常個所の過検出の抑制に成功。

また、このAIを用いた太陽光パネルの裏面の点検を模擬した実験を実施し、異常個所を正確に検出できることが確認されている。

さらに、東芝独自の補正技術により、点検画像の撮影位置や角度が正常画像とずれていても異常検出が可能であり、正常であるにも関わらず特徴的なパターンを異常として検出してしまうといった、過検出も抑制する。
ユースケースとしては、点検員の危険や移動の負担が伴うような山岳地の鉄塔、橋梁の高架下、法面、太陽光パネルの裏面など、現場の画像が少なくAIの導入が困難だった現場への適用が期待されている。
今後東芝は、今回開発された技術を、2023年度中にインフラ点検システムへの適用を目指していくとしている。
なお、このAIの詳細は、2022年5月25日にイタリアで開催されるコンピュータビジョンの、国際会議ICIAP2021(21th International Conference on Image Analysis and Processing)にて発表される。
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