角層細胞は、皮膚の内部で誕生した細胞が、約1カ月かけて皮膚の表層に移動しながら代謝した細胞だ。
そのため、角層細胞の「かたち」や「タンパク質」は、細胞が元々持っている遺伝的要素と、代謝過程における影響を反映した後天的要素を有する。この角層細胞の特徴と皮膚機能の関係は、多くの研究が行われている。
そうした中、株式会社ファンケルは、皮膚表面にある角層細胞の「かたち」と「タンパク質」を認識・推定するAIモデルを新たに開発し、数理モデルと組み合わせて解析することにより、1枚の角層画像から、皮膚のさまざまな生理状態を評価する新たなAI技術の開発に成功したことを発表した。
また、同技術の一部は、従来ファンケルが提供していた「角層バイオマーカー解析」を進化させ、無償サービスとして提供されているカウンセリングサービス「AIパーソナル角層解析」に応用している。このサービスは、2022年9月16日より、全直営店舗で開始している。
今後ファンケルでは、研究で構築したAIモデルおよび数理モデルを発展・向上させるとともに、技術を皮膚科学研究に応用するとしている。
なお、この成果は、2022年7月に行われた第25回画像の認識・理解シンポジウム、および2022年9月に行われた、第32回国際化粧品技術者連盟 学術大会にて発表されている。
研究内容の詳細
2つのAIモデルを構築
皮膚表面の角層細胞を粘着性のテープで剥がし、採取する「テープストリッピング法」で採取した、約1,000人の女性の角層細胞の画像を、デジタルカメラを搭載した顕微鏡である「デジタルマイクロスコープ」で撮影。東芝デジタルソリューションズ株式会社の東芝アナリティクスAI「SATLYS(サトリス)」を用いて機械学習することで、2つのAIモデルを開発した。
①「かたち」の特徴を数値化するAIモデル
角層細胞の画像に含まれる一つひとつの角層細胞の領域を機械学習させることで、細胞の「かたち」を自動で認識。細胞の大きさ、丸み、明るさや内部にあるシワなど、「かたち」の特徴値を約70種類の分析が可能なAIモデルを開発した。

②「バイオマーカー量」を推定するAIモデル
角層細胞の画像と生化学的な方法で測定した角層バイオマーカーの量を組み合わせて学習させることで、角層細胞の画像から、9種類の角層バイオマーカー量を推定するAIモデルを開発した。
皮膚の生理指標値を推定が可能
それぞれのAIモデルで分析した、約70種類の「かたち」の特徴値と、9つの「角層バイオマーカー」の量を元に、皮膚の生理的状態との関係を数理解析した。
その結果、肌の水分量、バリア機能、弾力、シワや炎症など、さまざまな生理指標値(生体の状態、機能や生理的変化などを知るための指標を定量した値)の推定が可能であることを発見した。この結果は、1枚の角層画像から皮膚のさまざまな生理状態を知ることを示唆している。

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