日本電気株式会社(以下、NEC)は、固定無線向けに、AIを活用して無線の通信距離を最大2倍にすることができる歪補償技術を開発した。また、このAI歪補償技術を汎用的な小型無線装置へ搭載するため、回路規模を小さくする小型化技術も合わせて開発されている。
歪補償技術は、デジタル信号処理によって信号増幅器の歪をキャンセルする技術だ。通信距離を拡大するため、無線信号の送信を大出力化するアプローチがあるが、信号増幅時に生じる歪によって送信できる出力には限界があり、この限界を解消するために、近年研究されている。
今回開発された技術では、無線通信の広帯域化や回路の複雑化などから生じる、従来の歪補償回路では処理しきれない歪を、AIを活用して処理する。
補償性能が向上することで高出力化が可能となるため、通信品質を保ったままで最大2倍の伝送距離を実現。その結果、必要な通信装置の台数を半分以下に削減することができる。
従来のAIを適用した歪補償技術は、必要な演算量が多いため回路規模が大きくなってしまい、小型の無線装置に搭載できないという課題があったが、信号増幅器の物理的構造を考慮したフィルタ構造とニューラルネットワークを生かした回路構造を組み合わせたNEC独自のハイブリッド構造により、従来のニューラルネットワークを活用した歪補償回路と比べて、同等の精度で回路規模に相当する演算量を1/3に削減した。
さらに、ニューラルネットワークの回路設計にニューラルネットワークの枝刈りを効率的にできる条件を独自に発見したことで、精度劣化を抑え、演算量を1/33に削減している。
なお、実験結果の論文は、IEEEの論文誌であるIEEE Accessで採択されて、2022年10月30日に公開されている。
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