Eco-Pork、母豚が自由に動ける「フリーストール」環境下でも発情検知や個体識別が可能な殖豚管理AI技術を開発

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国内で飼養される繁殖豚(母豚)のほとんどは、飼養管理の効率性・困難性の面から1頭のみを収容する「ストール」と呼ばれる柵で飼われている。ストールの中で受胎から出産までの繁殖サイクルを6回~7回程度繰り返して飼養されることが一般的である。

近年、EU加盟国を中心に動物福祉「アニマルウェルフェア」の観点から、繁殖豚の飼養方法として、動物が動物らしく自由に活動可能な大きさの区画内で多頭飼養される「フリーストール」への転換が図られている。

アニマルウェルフェアは、世界の動物衛生の向上を目的とする国際獣疫事務局(OIE)において「動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されている。家畜を快適な環境下で飼養することで家畜のストレスや疾病を減らし、結果として生産性の向上や安全な生産体制にも繋がりうるとされ、欧州を中心に普及が進んでいる。欧州では2013年1月より、原則的に繁殖母豚を群れで飼育すること(ストール飼いの禁止)が完全施行された。

農林水産省でも、アニマルウェルフェアの考え方を踏まえた飼養管理を普及するべく、令和2年3月に「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」の技術指導通知や「アニマルウェルフェアに関する意見交換会」を令和3年度より開催し、普及に係る活動を実施している。

従来のストールでは、1頭ごとに区切られた区画で豚が飼養されるため、それぞれの状態に合わせた管理が可能だった。しかし、フリーストールでは、大きな区画において複数頭を群飼養するため、1頭1頭に合わせたきめ細やかな管理が難しいことが新たな課題となっている。

株式会社Eco-Porkは、フリーストール飼いの環境下でも「発情検知」や「個体識別」を可能とするAI技術を開発し、実証を完了したことを発表した。

同技術は、AIカメラが区画内にいる繁殖豚を自動で見つけ、それぞれの繁殖豚の耳に取り付けた識別子(耳標の色組みあわせ)を検出し、その色味の組みあわせパターンを用いて個体を特定する。移動する繁殖豚をAI技術で自動追跡し、複数の画像を用いて判断することで、99.7%の精度で個体の特定が可能だ。これにより、フリーストール内に豚が複数飼われている状態でも、特定の豚を識別することが可能となる。

Eco-Pork、母豚が自由に動ける「フリーストール」環境下でも発情検知や個体識別が可能な殖豚管理AI技術を開発
耳標組み合わせ(イメージ)
また、AIカメラが繁殖豚の生殖器の状態を分析し、発情/非発情のいずれであるかを判別する。生殖器の状態を適切に捉えるための最適な静止画を、AIが動画から自動取得し発情判定を行うことで、判定精度98.3%を実現した。豚舎の明るさや環境が異なる場合でも、判別精度を保つ事が可能だという。
Eco-Pork、母豚が自由に動ける「フリーストール」環境下でも発情検知や個体識別が可能な殖豚管理AI技術を開発
発情判定と個体識別を同時に行う(イメージ)
Eco-Pork、母豚が自由に動ける「フリーストール」環境下でも発情検知や個体識別が可能な殖豚管理AI技術を開発
明暗の異なる複数写真から最適な画像を選択し判定する(イメージ)
Eco-Porkは今後、同技術により養豚農家の効率化を支援し、アニマルウェルフェアに養豚農家が対応する際のソリューションとして、2023年度内の製品化を目標に開発を継続するとしている。

なお、同技術は、生物系特定産業技術研究支援センターの「令和3年度スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)」の支援を受け開発された。

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