発電タービンなどの機械製品の中には、多数のしゅう動部(摩擦部)があり、その面には摩耗や異物の混入による損傷が常に生じている。その損傷は、機械の停止や破壊など、重大インシデントを引き起こすが、しゅう動面の直接観察や故障予測の技術は進んでいないのが現状だという。
そうした中、東北大学大学院工学研究科の村島基之准教授、名古屋大学大学院工学研究科の梅原徳次教授らの研究グループは、しゅう動している変形表面(表面の形状を変形させることができる新しい機能性表面)から生じる摩擦の信号をAIにより分析することで、損傷部位を特定する新しい技術を開発したことを発表した。
通常の機械しゅう動面は平坦面であり、相手面に損傷が生じてもその存在位置を特定するすべはない。
しかし、変形表面を用いると、相手面と接触している位置関係を意図的にアンバランスにすることで、損傷部と接触した際の摩擦振動に特徴が現れる。(トップ画左:金属薄膜を用いた変形表面試験片 右:圧縮空気圧に応じた変形量)
今回の研究では、変形形状の違いに応じて生じる摩擦信号の特徴をAIに学習させることで、目では見ることのできない摩擦相手面に存在する損傷部の位置を特定している。
加えて、変形表面の形状を連続的に制御することで、特定した表面損傷部を回避する新しい摩擦システムも開発した。
この研究の実験では、変形表面の形状変化を模擬した新しい接触点制御摩擦試験機を用いて実験が行われた。

この技術により、しゅう動面で重大な損傷が発生した場合に、摩擦の状態を安定させ、機械を安全に停止させることが可能になる。
なお、今回の研究成果は、2023年1月26日にトライボロジー(摩擦学)の専門誌「Tribology International」にオンライン掲載されている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?

IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。