IDC Japan株式会社は、生成AI(Generative Artificial Intelligence)の取り組みに関する国内と世界の企業ユーザー動向調査の比較分析結果を発表した。
IDCでは、生成AIの取り組みに関するWebアンケート調査を日本、その他アジア、北米、欧州において2023年3月から継続的に実施しており、同調査レポートでは国内と世界全体を比較分析している。アンケート調査の回答者は、マネージャー以上で、かつ従業員500人以上の企業に勤務するIT投資購入意思決定者である。
同調査レポートによると、国内の生成AIへの期待度は世界よりも高く、2023年3月と2023年7月の調査結果の比較において、生成AIの適用分野への可能性の検討、2023年の投資傾向の両方の割合が上伸していることが示されている。国内と世界の比較において、日本が優勢する状況は比較的珍しい状況と考えられ、このことからも改めてChatGPTをきっかけとして国内の企業がAIの活用を再検討し、デジタルビジネスの計画と実行を加速していることがうかがえる。
同調査では、国内と世界の企業が想定する生成AIのユースケースや、影響を与える事業領域についても調査を行っている。調査時点では、生産性の向上に貢献する社内向けのユースケース(コード生成、会話型アプリケーション、デザインアプリケーションなど)に期待が高く、マーケティングアプリケーションが低い点は、国内と世界で同じ傾向だが、世界では、ユースケース全般で期待を持っている点が特徴的とのこと。
また、生成AIが影響を与える事業領域についてソフトウェア開発/デザイン部門が高いと考える点は、国内と世界で同じ傾向だが、世界では、サプライチェーンやカスタマーサービス部門への影響を想定する割合が、国内と比較すると高い傾向にある。これらの違いを勘案すると、世界では社内外のユースケースや事業領域に対して幅広に生成AIの利用を検討していることが想定される。
このようなユースケースの傾向は、2015年以降の一般的には第3次AIブームと呼ばれる時期において、国内の企業が機械学習の利用を開始した際の傾向と類似する点がある。もちろん、当時の状況と現在を単純には比較はできず、生成AIの特性である、生成や要約などの新たな機能が追加されている点や、ハルシネーションなどの異なるリスクが加わっている点は考慮する必要があるという。
今後の企業における実証実験の結果や、AIのリスク管理、ガバナンスの運用次第ではあるが、世界が多様な目的で生成AIの利用を検討している傾向を考えると、国内企業は生成AIの潜在的な可能性と活用用途をさらに探る必要があるとIDCは考えている。
IDC Japan Software & Services リサーチマネージャーの飯坂 暢子氏は「技術革新による生成AI製品の連続的な市場投入によって、AI技術の最新技術、人的リソース、AIのリスクに関心が向きがちであるが、生成AIへの投資の意思決定に関わるキーパーソンは持続可能なAIモデルの開発や運用への意識を高め、生成AIを生かした具体的なデジタルビジネスのモデル構築支援を求めている」と述べている。
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