地熱エネルギーの活用においては、地下の状態を高精度に推定し、将来のエネルギー生産量を予測することが不可欠だ。しかし、地熱資源が存在する地熱貯留層は複雑であり、その不確実性は高いため、これまでの方法では地下の状態を推定することに限界があった。
こうした中、東北大学流体科学研究所の鈴木杏奈准教授、同大学大学院工学研究科の橋田俊之教授らと、大阪大学産業科学研究所の福井健一准教授、東北電力の石崎潤一氏、小野寺真也氏との共同研究グループは、地下の状態の把握・予測・設計を目的とした地熱貯留層モデリングに機械学習を用いる新手法を提案した。
この手法により、計測データに基づいて、自動的かつ迅速に数値モデルの推定を行うことが可能となった。さらに、この手法は実際の地熱フィールドを模擬したデータに対しても、高い精度でパラメータ推定を行うことができることが確認されている。
具体的な手法としては、数値計算を用いて圧力や温度など、実際の地熱フィールドで計測可能なデータを大量に計算し、その結果を用いて複数の機械学習アルゴリズムを訓練することで、計測データに基づいて数値モデルを自動で推定することができる。

なお、開発した機械学習アルゴリズムを学習データとは異なる特徴を持つ実際の地熱フィールドを模擬したデータに適用したところ、高い精度で模擬フィールドデータを再現できることが確認された。これにより、学習データの特徴に依存せずに、実際のフィールドにも適用可能であることを実証した。

研究グループは、「この研究のアプローチでは、計測データから直接数値モデルを自動で推定できるため、貯留層モデリングにおける入力パラメータ選定の試行錯誤を排除することが可能である。
その結果、数値計算を何度も繰り返す必要がなくなり時間を節約できるほか、データに基づく客観的な貯留層モデリングが可能となり、経験の浅い開発者もこのモデリングに取り組むことが可能となる」のだとしている。
なおこの研究成果は、2024年3月1日に、再生可能エネルギー分野の国際学術誌「Renewable Energy」に掲載された。
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