画像認識AIの現場導入は、AIモデルの現場毎の個別開発から、開発済みのモデルの横展開による効率化に注目が集まっている。しかし、撮影条件が異なる環境では、認識性能が低下してしまう課題がある。
一般的に認識性能を向上させるには、新しい環境における大量の教師データが必要であり、コストや時間を要する。これに対し、学習に効果がありそうなデータをAIが自動的に選出し、少量のラベル付けのみで、全てのデータにラベル付けした場合と同等の効果を得る「アクティブドメイン適応法」という手法が提案されている。
アクティブドメイン適応法は、新しい環境の情報を効率的に獲得するために、AIモデルにとって「予測結果に自信がない」データを優先的に選択する。一方、AIモデルが「見落とした」データは、未検出を防ぐ重要な情報を含んでいるにも関わらず、学習データとして選出されにくい、という特性があった。
そこでパナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)は、AIモデルが見落としてしまった物体に着目することで、少ない学習データで精度良くAIモデルの横展開を可能とするAI技術を開発した。

今回開発されたアルゴリズムは、AIモデルが「見落とした」データも考慮することが可能で、ベンチマークデータセットを用いた評価実験では、新しい環境のデータのうち5%の画像にラベル付けをすることで、全データにラベル付けした場合と同等の認識性能であることが確認された。
特に見えの変動が大きい車載カメラのベンチマークセットに対する評価実験で有効性を確認できたことから、物体検出タスクに広く適用可能と考えられている。
利用シーンとしては、サプライチェーンマネジメントにおける現場最適化ソリューションやサーベイランス、車載センシングなどの分野における、AIモデルの多現場展開への貢献が期待されている。
なお、この技術は、2024年6月17日から6月21日まで米国シアトルで開催されるコンピュータビジョン分野のトップカンファレンス「The IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition(CVPR2024)」で発表されるとのことだ。
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