株式会社東芝は、保守点検やトラブル対応の作業手順を適切に提供するための対話エージェント技術を開発した。
この技術は、OpenAI社のChatGPTなどの大規模言語モデル(Large Language Model: LLM)を活用した生成AIを搭載したチャットボットである「応答生成AI」に加え、新たに開発した「応答評価AI」を組み合わせて使用し、ユーザからの曖昧な質問に対しても適切な回答を提供する。
「応答生成AI」は、ユーザの質問文から複数の応答候補を生成し(下図①)、「応答評価AI」は応答生成AIで生成された応答候補それぞれについて、適切さを評価する(下図②)。
これら二つのAIの協調により、ユーザの質問文に対する複数の応答候補と、それらの適切さの点数を導き出す。そして、この点数に基づき最適な応答を選択し、ユーザに対して応答する。
また、「応答評価AI」が質問が曖昧で回答が難しいと判断した場合には、質問に直接回答するのではなく、問い返しによって質問が具体化するように自動的に誘導する。
具体的には、「応答生成AI」が、ユーザの質問に対して「回答する場合の応答候補」、追加の情報をユーザに入力してもらうために「問い返す場合の応答候補」のような複数のパターンの応答候補を生成する。
「応答評価AI」は、各応答候補が「質問文に対して正しい情報をだけを含むか」「冗長でないか」という二つの観点で回答の適切さを採点する。
次に、点数が最大となる応答候補をユーザに対して応答する。ユーザの質問文が十分に具体的であった場合は、対話エージェントは「回答する場合」の応答候補の中から選んで回答を返するが、質問文が曖昧で具体化が必要な場合には「問い返す場合」の応答候補から選び、ユーザへ問い返す。
問い返された場合には、ユーザは指示に従って追加の情報を入力する。こうしたやり取りを行うことで、曖昧な質問でも的確かつ正確に知りたい情報が得られるようにサポートする。
東芝は、この新技術の有効性を、設備の保守作業におけるトラブル対応というユースケースで試した。具体的な質問と曖昧な質問の両方で検証を行った結果、従来の「応答生成AI」だけでは曖昧な質問に対する成功率が30.0%だったのに対し、新技術では73.3%と改善された。
曖昧な質問文に答える際、従来技術は全て1ターン目で回答していたのに対して、本技術は平均で2.3ターンのやり取りを行っており、この結果から、問い返しによる質問の具体化を通して適切に回答できていることが確認された。
なお東芝は、この技術の詳細を、2024年9月10日から13日に、日本工業大学で開催される「電子情報通信学会ソサイエティ大会」で発表する。また、同技術の実用性を確認するため、東芝グループ内において、設備の保守作業の現場への適用に向けて取り組んでいくとしている。
さらに、同技術を活用して、今年度中に設備の保守作業の現場での問い合わせ業務の実証実験を開始する予定だ。その後、社外へのサービス提供を目指し、研究開発を進める計画だ。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。