日本の橋梁や鉄塔といった鋼構造インフラの多くは現在老朽化し、その維持管理は喫緊の社会課題となっている。特に鋼材の腐食は構造耐力を低下させ、施設の破損や崩壊に繋がるリスクがあるため、定期的な点検と適切な補修が不可欠だ。
しかし、現行の点検は多くの場合、施設の状態に関わらず一律の周期で行われており、非効率かつコスト増大の一因となっている。加えて、熟練技術者の不足も深刻化しており、点検・診断業務の効率化・高度化が急務である。
こうした中、日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、デジタルカメラで撮影したインフラ施設の画像から、数年後の鋼材の腐食進行を予測する技術を確立とを発表した。
今回確立された技術は、施設の現在の画像、設置場所の環境データ、予測したい年数をAIモデルに入力することで、数年後の鋼材腐食の広がりを予測した画像を生成するものだ。

予測には、入力データの特徴を学習することで、擬似的なデータを生成することができる生成モデル「敵対的生成ネットワーク(GAN)」をベースとした深層学習モデルを採用している。
具体的には、GANに経過年数と腐食の増加量に加えて、過去と現在の施設画像を活用して腐食の面積・形状・色等の情報を学習させたモデルを構築した。
さらに、気温や降水量等の化学的に腐食進行に影響すると想定される複数の環境データの中から、最適なパラメータを選び出し、画像と一緒にモデルに入力できる構成とした。
その結果、画像中の個々の腐食の進行速度を正確に予測できるモデルを確立した。
道路橋等を用いた実証では、数年後の腐食領域の増加率を、平均誤差9.9%という精度で予測できることを確認したのだという。

これにより、将来の腐食状況を施設毎に把握できるため、点検の周期や補修工事の時期の最適化が可能になり、維持管理業務の効率化によるコスト縮減を実現するとしている。
今後NTTは、この技術を2025年度中にNTTグループ会社が管理する道路橋を対象に事業化する予定だ。また、鉄塔など他の鋼構造物や、ひび割れや裂傷といった他の劣化事象にも技術適用範囲を拡大するとしている。
なお、この技術の詳細は、2025年5月15日~16日開催の「つくばフォーラム2025」にて紹介される予定だ。
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