企業内に存在するデータの大部分は、契約書、スプレッドシート、プレゼンテーション資料などの非構造化データであり、これらはAIにとって価値の宝庫である一方、機密性が高く取り扱いに注意が必要となる。
特に規制の厳しい業界においては、これらのデータへのAIアクセスに対する信頼性の高い技術と、セキュリティおよびコンプライアンスへの準拠が不可欠だ。
こうした中、BoxとIBMは、IBMのエンタープライズAIプラットフォーム「watsonx」とBoxのAI機能「Box AI」を連携させ、契約書や報告書といった非構造化データからインサイトを得るコンテンツ主導型ワークフローにおけるAI導入支援を加速すると発表した。
具体的には、IBMのエンタープライズAIスタジオ「watsonx.ai」を通じて、オープンソースであるIBMの「Granite」モデルやMetaの最新「Llama」モデルなど、多様な大規模言語モデル(以下、LLM)を「Box AI」で利用できるようになる。
これにより、企業はデータ抽出、自動文書処理、コンテンツ分析といったAIを活用したユースケースに対応し、ビジネスプロセスの自動化やコンテンツ管理にAI機能を組み込むことが可能となる。
特筆すべきは、Box自身がAIモデルのライフサイクル管理において、IBMの「watsonx.governance」を社内で採用し、AI利用におけるリスク管理やコンプライアンス遵守、AIのライフサイクルに対処している点だ。
また、Kubernetesベースのハイブリッドクラウドアプリケーションプラットフォームである「Red Hat OpenShift」の利用も継続し、クラウド環境全体でのスケーラブルなAIアプリケーションの開発・導入を推進する。
IBMもまた、「Box AI」と「IBM watsonx」の連携ソリューションを自社の業務に導入し、従業員の生産性向上を図るとともに、パートナーがどのようにwatsonxを自社のソリューションに組み込み、IBMのテクノロジーを顧客に提供しているかを従業員に体験させているという。
Boxの共同創業者兼CEOであるアーロン・レヴィ氏は、「AIは、インターネットの誕生に匹敵するような、まったく新しいインパクトを企業にもたらしている。BoxはIBMとのパートナーシップを深化することで、企業がAIを安全に、責任を持って、大規模に活用できるように支援する」と述べている。
また、IBMのソフトウェア担当シニア・バイス・プレジデント兼チーフ・コマーシャル・オフィサーを務めるロブ・トーマス氏は、「企業は、チームがデータ主導で迅速な意思決定を行えるような、目的に特化したAIソリューションを求めている。Boxとのパートナーシップにより、企業はAIを主要なプロセスにシームレスに統合することができ、生産性の向上と業務の変革を支援することができる」とコメントしている。
なお、この「Box AI」と「IBM watsonx」を組み合わせたソリューションは、「Box AI Studio」および「Box AI API」を通じて、「Box Enterprise Advanced」の顧客向けに既に提供が開始されている。
また、IBMはBoxの認定リセラーであるため、IBMを通じて「Box AI」対応のBox製品を購入した顧客も、watsonxのモデルを利用可能だ。
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