テクノロジーは職場環境の全体最適をもたらすか? —八子知礼×小泉耕二【第7回】

テクノロジーが職場に普及しない理由

八子: 今日のテーマであるオフィスでの活用に戻ると、ばオフィス空間でなかなかそういったものが採用されないのはなぜなのでしょう。

小泉: 一つは、値段だと思います。

八子: 値段ですよね。「Oculus GO」のように3万円を切るような価格になってようやく、社員ひとり一人に配布しても構わないのかな、というレベルです。数十万円するというような場合には、多くのヒトには行き渡りません。

また、ガチャっとヘルメットを被るというようなタイプでは、設備的な要素が強くなり、場所を拘束されてしまう。

私の前職の会社であるシスコ・システムズでは、「テレプレゼンス」の製品を販売していました。(遠隔地にいる)相手がまさに目の前にいるように、生々しい映像と音が伝わってくる環境がつくれるシステムです。

今でこそ値段が下がり、小さくなり、持ち運びができるようになって、ようやく普及し始めました。

我々はスマートフォンによって、場所の制限から解放されました。あるいは、クラウドによって、会社に行かなくてもいいというような環境ができてきた。そのような状況の中で、場所を固定されてしまうというのは、非常に大きな制約となります。

小泉: 政府がかかげる「働き方改革」でも、「テレワーク」(インターネットなどを使い、時間や場所の制約を受けずに、柔軟に働くこと)を推奨すると言っていますね。

八子: はい、ただ、これまでの「働き方改革」では、テレプレゼンスやVRのしくみを活用することで、出張に行かなくてもすむ環境が求められていましたが、今は少し変わってきています。

弊社ウフルでもそうですが、「ワーケーション」といって、「ワーク」(仕事)と「バケーション」(休暇)を併用する取り組みです。たとえば、南紀白浜に行って、半分遊びながら半分仕事をする、もしくは日中は仕事をするのだけれども、夜はバケーションというような。

つまり、「オフィスから出て行った方がいい」、「出張してもいい」という流れになっているのです。

小泉: ずっと東京で仕事をしているよりは、集中したい時はどこか地方へ行くというようなことですよね。文豪の先生みたいですね。温泉地で執筆されたりしますから。

八子: VRのようなテクノロジーにおいては、単価がようやく下がってきて、これからまさに百花繚乱というような時期ではあります。一方で、テクノロジーに過度に依存しない、もしくはそれをベースとしながらも、オフィスから外に飛び出していって、さまざまな場所で仕事をするというような流れがある。

私は、ある程度、TPOがあるのではないかと思っています。つまり、閉鎖空間上の中ではVRが活用されることが多くなるのでしょうが、今の「ワーケーション」や「働き方改革」の観点からすると、それは逆行とは言わないまでも、オフィスの中に浸透していくかというのは、ややもすると二極化する可能性はありますね。

小泉: オフィス改革ということ自体がそもそも変だということでしょうか。

八子: 職種によって改革の度合いがだいぶ違うと思います。デザイナーなどプロダクトの設計・開発など関わるような人たちの場合には、オフィスでVRゴーグルをつけて進捗の度合いを共有するでしょう。

ただし、たとえば営業など、お客さんに会わないといけないような職種の場合には、やはりVRを活用するというのは、難しいのかもしれませんね。クラウドとスマートフォンだけで解決するような人たちも当然います。

小泉: かつてのインターネット・メールのように、何らかのテクノロジーが一足飛びに入ってきて、我々の生活を根底から覆すというようなことではなく、使われるべきところに、使われるべくしてテクノロジーが入っていく、というようなイメージでしょうか。

八子: そうですね。同時に、ブロックチェーンのようなしくみによって、個人がIDによって認証されるということが進むでしょうし、そのような場合には、共通のプラットフォームを使うことになる。そのあたりは普遍的に変わらないでしょうね。

小泉: なるほど。インフラは共通化が進み、ツールにおいてはケースバイケースということですね。ツールにおいては、これから値段も下がっていくでしょうし、毛嫌いせずに色々試していって、”よい働き方”を模索できるといいなと思います。本日はありがとうございました。

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