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テクノロジーで生活者の未来はどう変わるのか ―IoTNEWS生活環境創造室 キックオフセミナー

IoTNEWSを運営する株式会社アールジーンと株式会社電通は業務提携を行い、コンシューマー向け事業会社のIoT/AIを活用した新プロダクトの企画・検討を支援するための新組織「IoTNEWS生活環境創造室」を2月1日に正式ローンチした。

「IoTNEWS生活環境創造室」は、コンシューマープロダクトに関する定量調査や取材を通して、事業開発者にとって有益な情報を提供するとともに、コンシューマプロダクトを提供する事業会社の新規事業企画の支援を行う組織だ(詳細はこちら)。

同日、両社はキックオフイベントとして「デジタルトランスフォーメーション時代のBtoCサービスの生み出し方」(主催:IoTNEWS/電通)を開催。「IoTNEWS生活環境創造室」の紹介やゲストスピーカーによる講演、トークセッションが行われた。本稿では、その内容をダイジェストで紹介する。

テクノロジーとヒトの未来

冒頭、「主催者挨拶」として、株式会社電通 執行役員の鈴木宏美氏が登壇。鈴木氏は「IoTNEWS生活環境創造室」の発足について、「生活者のみなさんにストレスのない、便利な体験を届けるには、テクノロジーとヒトをつなげることが重要だ。IoTNEWSと電通という組み合わせには、そうした化学反応を恣意的に起こしていく狙いがある」と述べた。

続いて、株式会社盛之助 代表取締役社長 日経BP社 日経BP総研 未来ラボ 客員研究員の川口盛之助氏(トップ画像・左)が登壇。まず、「テクノロジーとヒトの未来を語る上で参考になるのは、SF作家が描いた未来だ」として、日本の代表的なSF作家である手塚治虫のSF漫画『鉄腕アトム』(1951年~)に言及し、そこで描かれていたテクノロジーから、実現できているもの、未来に持ち越されているものを解説した。

次に、テクノロジーの変遷は「萌芽期」「成長期」「成熟期」のS字ライフサイクルで表せるとして、これまでどのようにイノベーションが生まれ、変化していったのかを説明。そして、未来においては、土木や建築、機械といった成熟期を迎えた技術はデジタルと組み合わさって価値を生むとともに、新たなテクノロジーとして「人間の体と脳に肉薄する」技術が主役になるだろうと述べた。

体においては、iPS細胞やゲノム編集などの分野が萌芽期にあると説明。また、最先端技術を活用し、障害者が競技を行う国際的なスポーツ大会である「Cybathlon」(2016年に第一回が開催)などに言及し、「健常者が身障者にかなわなくなる時代がくるかもしれない」と予測した。

一方、脳においては「夢の可視化」や脳科学の知識をマーケティングに応用する「ニューロマーケティング」など、さまざまな例を紹介。そして、「ヒトの心はマーケットそのものだ」として、脳の次は心に肉薄する技術が進展すると述べた。

IoT時代のものづくりに必要なこと

テクノロジーで生活者の未来はどう変わるのか ―「IoTNEWS生活環境創造室」セミナー レポート
(左):株式会社電通 執行役員 鈴木宏美、(右)IoTNEWS代表 小泉耕二

続いて、IoTNEWS代表の小泉が「IoTビジネスの現状と大きなチャンス」というテーマで講演を行った。小泉は、「2020年には500億個のデバイスがつながるとして期待されてきたIoTだが、つながっているモノのほとんどはスマートフォンであり、実態はそこまで進んでいない。今、ようやく2020年に向けて花咲き始めた市場だ」と説明。

コンシューマプロダクトの事業企画においても、「2020年に向けて今始めるべき」と述べ、CES2019でP&Gなどの非テックメーカーが目立ったことや、昨年のCEATECでローソンが出展し、大きな反響があったことを説明した。

そして、非テック企業でデジタルサービスをつくる際に新規事業担当者が抱える悩みについて、その実態と解決策を提示。「顧客をよく知ること」「デザインシンキングを目的化しないこと」の重要性や、「ニッチマーケット戦略」などについて説明した。

続いて、IoTNEWS代表の小泉がモデレータとなり、株式会社Shiftall代表取締役の岩佐琢磨氏と株式会社Photosynth代表取締役の河瀬航大氏がトークセッションを行った。

テクノロジーで生活者の未来はどう変わるのか ―「IoTNEWS生活環境創造室」セミナー レポート
(左):株式会社Shiftall代表取締役 岩佐琢磨氏、(右)株式会社Photosynth代表取締役 河瀬航大氏

岩佐氏と河瀬氏は、自らスタートアップを立ち上げ、IoTプロダクトのものづくりを最前線で実践している。

元Cerevo代表の岩佐氏は昨年の春、古巣のパナソニックの資本を受け新会社Shiftallを設立。今回は、CES2019年でも出展した新サービス「DrinkShift」(※)について紹介するとともに、新規プロダクトをつくるために大切なことを、中国の工場を渡り歩いた経験や苦労話も交えて語った。

「新しいサービスを既存のハードウェアでやろうとしても、いずれはコモディティ化されてしまう。ハードウェアのものづくりは大変で、事業リスクは高い。しかし、その分ハードウェアの領域にくる人は少ないため、いったんハードウェアの領域に入ってしまえば、競合より一段優位に立つことができ、マーケットを総どりにできる可能性がある」(岩佐氏)

一方、河瀬氏のPhotosynthはスマートロック「Akerun」を手がけるスタートアップ。さまざまなモノがデジタル化される中、「カギだけが不便だ」と感じ、日本で初めてスマートロックの事業を立ち上げた。現在も法人向けにサービス導入数が2500社を突破するなど、着実に事業拡大を進めている。

「企画立案で大事にしているのは、技術的要素は無視すること。未来はこうあるべき、お客さんはこれを求めている、という理想を徹底的に詰める。実現性については、社内でいつもエンジニアとバトルしている。そうすることで、エンジニアもやってみようという気概を持ってくれる」(河瀬氏)

※「DrinkShift」は、スマートフォンアプリと専用冷蔵庫を組み合わせることで、庫内のビール残数や利用者の飲むペースを自動で判断し、ビールがなくなる前に自宅やオフィスへ届けてくれるサービス。詳細はこちら

「●●×テクノロジー」で自社の強みを活かす

テクノロジーで生活者の未来はどう変わるのか ―「IoTNEWS生活環境創造室」セミナー レポート
(左):IoTNEWS生活環境創造室長 兼 株式会社電通 ビジネス・ディベロップメント&アクティベーション局 シニア・プランニング・ディレクターの吉田健太郎、(右)ライオン株式会社 イノベーションラボ所長 宇野大介氏

次に、「生活環境におけるテクノロジーの捉え方」というテーマで、IoTNEWS生活環境創造室長 兼 株式会社電通 ビジネス共創ユニット シニア・プランニング・ディレクターの吉田健太郎とライオン株式会社 イノベーションラボ所長の宇野大介氏がトークセッションを行った。

はじめに吉田は「IoTNEWS生活環境創造室」の発足の経緯について言及。「時代は変わり、今は新しい製品をつくってもそのよさを伝えるのが難しい。そのため、IoTのものづくりをする際に、その価値をどう広めていくかも考えなければ、せっかくいいモノをつくっても伝わらないということが起こる。そこで、電通とIoTNEWSがもつ互いの知見を活かし、B2Cのものづくりをみなさんと一緒に考えていけるチームをつくった」と述べた。

宇野氏が所長をつとめるライオンのイノベーションラボは、同社が2018年1月に研究開発本部に新設した研究者集団。製品の構想段階から社外と連携する「オープンイノベーション」を推し進め、デバイスやサービス、アプリなど、新しいタイプの製品開発に取り組んでいる。

その背景について宇野氏は、「ライオンには危機感と閉塞感があった。日用品の開発を120年間続けてきたが、同じことをこの先100年やるとは思えない。また、新しいことをしよう思っても、IoTなど他の技術を持った人材がいないため、どうしてよいかわからなかった」と述べた。

吉田は、今は「●●×テクノロジー」のかけ算によって、企業の強みを変身させられる時代だと述べた。それに対して、宇野氏は「ライオンでは、テクノロジーというと化学と生物学で、通信技術などはまったく知見のない会社。だから、これとこれをくっつけたら面白いことができるのではないかと、毎日のように新しい発見をしている。すべてが新鮮で驚きだ」と語った。

テクノロジーをユニバーサルサービスにするために

最後に、慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授の夏野剛氏(トップ画像・右)が「テクノロジーをユニバーサルサービスにするために」というテーマで講演を行った。

夏野氏は冒頭、「この20年間、テクノロジーで私たちのライフスタイルは激変した」と振り返った。

一方、「テクノロジーの進展は生産性を上げる。これは人類・文明進化の方程式だ」と説明したうえで、国際的な生産性の指標であるGDPにおいて、日本はこの約20年間で0.8%しか伸びていないことを指摘した。「アメリカは139%、フランスは60%、ドイツは47%、イギリスは86%。先進国の中でGDPが成長していないのは日本だけだ」(夏野氏)

日本のGDPが各国と大きく差が開いた理由について、「日本はテクノロジーをユニバーサルサービスにできなかったからだ」と夏野氏は述べた。

「ITテクノロジーによって、テクノロジーは専門家のものではなくなった。企業であれば、営業、経理、経営などすべてにテクノロジーが入りこみ、コモディティ化している。そのようにテクノロジーが変化しているのに、日本はヒト(社会や組織)のしくみを変えなかった」(夏野氏)

「世の中にはおかしなこと、不便なことがたくさんある。しかし、日本はヒトのしくみを変えたくないがために、それを放置してきた」と夏野氏は指摘。そして、こうした現状を打開するために、「What if」(ありえないとは思うが、万が一それが起こったとしたらどうするかを考えること)という言葉を大事にしてほしいと夏野氏は述べた。

そして、「この20年間、日本は変化に抵抗してきた。今後は人口が減少し、AIとIoTの時代にはさらに世の中は変化する。みなさんは常に『What if』を意識することで、変化に対応してほしい」と語り、講演を締めくくった。

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