MaaSのカギを握る、「マイクロモビリティ」の現状と課題 ―八子知礼×小泉耕二【第18回】

マイクロモビリティ推進の目的とは?

小泉: 一度整理したいのですが、パリの中心部はとても道路が混雑します。こうしたどうにもならない街の現状を解決するために、そもそもクルマに乗らずeスクーターや自転車などの「マイクロモビリティ」を使おうという話が最初にあり(1)、でもマナーが悪いから規制をきちんとしていこう(2)、この2段階のプロセスが進んでいるということですか?

八子: そうです。マイクロモビリティを押し進める目的は、クルマを街から締め出し、渋滞を解消することが一つあります。あともう1つは、ヨーロッパは石畳の道路が多いですから、この上をクルマが通るとメンテナンスが大変です。そのため、「マイクロモビリティ」へ移行することで、保全のコストをおさえられる、というメリットもあります。

また、規制については、利用エリアを限定する傾向も見られました。例えば、オランダのハーグの中心部では、eスクーターは1台も見なかったのですが、モバイクのシェアバイクが少しありました。

ただ、エリアがとても限定的です(アプリのマップで見られます)。しかも、さらにその中の小さなエリアが、駐輪エリアになっていて、そこに駐輪しないといけないのです。

まあ、不便ですよ。私はそれを知らずに、利用可能エリアの外を15分ほど走ってしまいました。アラートも何もありませんでしたが(笑)。

モビリティの自由度が高くなっている反面、行政が求めるニーズにも対応することも重要になってきているのだと思います。

MaaSのカギを握る、「マイクロモビリティ」の現状と課題 ―八子知礼×小泉耕二【第18回】
株式会社アールジーン社外取締役/株式会社ウフルCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー) IoTイノベーションセンター所長兼エグゼクティブコンサルタント 八子知礼

小泉: 私が中国でシェアバイクを体験した時に思ったのは、事業者側からすると、乗り捨てした自転車を回収するのが大変だろうなということです。ユーザーが乗り捨てた自転車は、夜中に担当の人がきて回収します。なので、朝になるときれいに並んでいます。

自転車は、トラックに積んで回収します。その際、自転車をトラックに載せる人と、受け取る人あわせて2名の人員が必要です。また、自転車だと1台でかなりの幅をとります。

それがeスクーターになると、一人でトラックに積み込めます。すると、2人から1人に人員を削減できますし、小さい分たくさん載せられるので、効率的だと思います。

でも、あまりにもたくさん乗り捨てられてしまうと、1台の自転車を回収しに行くだけで一苦労です。そうすると、やはりエリアを限定せざるをえないような気がしますね。

八子: 例えばLimeの場合、アプリでマップを見ると、全体の90~95%が市内に集中しています。郊外ではぽつんと3~5台ずつくらい、マップの上に表示されていました。

次ページ:マイクロモビリティが普及するための条件

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