ルーツは「クオーツ時計」、微小な電力を“拾って”IoT化する新技術 ―エイブリック武内勇介博士インタビュー

5. 他社と共創し、LPWAにも展開

武内: さきほど、おむつと木の発電の2つの例をご紹介しましたが、他のアプリケーションも色々と進行しています。

現時点で最も製品化に近いのが、大成建設様との共同開発で生まれた「水漏れ検知」のソリューションです。水道管などから僅かに漏れた水滴で発電し、水漏れの現状をスマートフォンなどのデバイスに教えてくれます。水道管に異常があるときだけ作動してデータを送れますから、メンテナンス費用を大きく削減できます。

武内: もう一つは、「CLEAN_アセパッチ」と呼んでいる酵素発電センサです。私たちが日頃かく汗には、乳酸が含まれています。ですから、皮膚から発生する乳酸の量を検出できれば、汗のかき具合をモニタリングできます。

「CLEAN_アセパッチ」では、乳酸を分解する酵素を電極に塗っておきます。酵素が乳酸を分解する際に、電子を発生します。その電子を「電力」として検出することで、汗のかき具合を調べることができます。

他にも、たとえば果糖と反応する酵素を使えば、果物の甘みが分かりますし、さらにアルコールを分解する酵素を使えば、お酒の度数がわかるかも知れません。最近では、遺伝子工学の技術を使うと、さまざまな酵素を自在につくれると聞いています。それらの酵素を電極に使うと、ターゲットの有機物を検出できのではないかと考えています。

ルーツは「クオーツ時計」、微小な電力を“拾って”IoT化する新技術 ―エイブリック武内勇介博士インタビュー
IoTNEWS生活環境創造室長 吉田健太郎

武内: 今後はLPWAなどの分野にも幅広く展開したいと考えておりますが、自社だけでは限界があります。無線モジュールでの展開は他のメーカーの方々と提携して、色々な無線方式に対応できるようなビジネスモデルを考えています。

また、弊社としては、「CLEAN-Boost」の技術を使ったたくさんのソリューションがあちこちで勝手に生み出されるような、「プラットフォーム型」のビジネスを志向しています。そのために、「CLEAN-Boost」技術が世の中のより多くの方に知っていただくようなしかけを行っていきたいと思います。

吉田: 今回、お話を伺っていて、「CLEAN-Boost」は「省電力」の技術という見方の他に、実は見落としていた巨大な“超省電力市場”が埋もれている可能性があるのではと感じました。

武内: エネルギーハーベスティングの普及には、技術の理解と共に、使えるセンサの種類が増え、この技術がいろいろな分野に浸透していくことが必要です。そのため弊社では、簡単な確認用センサと無線モジュールをパッケージにした実験キットの販売を開始しました。

より多くの方々にエネルギーハーベスティングでどんなことができるかを実感いただきたいと思っております。特に発電するセンサやハーベスタを独自にお持ちの方、研究されている方には、確認用センサの代わりに無線タグにつないでもらい、電池レスセンシングを実感してほしいと思っております。

吉田: 貴重なお話をどうもありがとうございました。

【関連リンク】
「CLEAN-Boost」

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