近年、欧米の先進企業では、企業で抱える特許情報を分析し、経営戦略に活用するIPランドスケープ(※1)が急速に普及しており、知的財産の観点から、競合他社の動向や自社の強み、課題を顕在化して、自社が注力すべき技術の判断に活用している。
国内の企業においても、事業のグローバルな競争が激化する中、IPランドスケープへの注目が高まるものの、人手による膨大な特許情報の分析には多くの工数を要し、急速に変化する市場環境に合わせた迅速な対応が困難な状況となっている。また、業務内容の高度化に伴い業務量が増加する一方で、昨今の働き方改革の機運の中、業務の効率化も求められている。
株式会社日立製作所(以下、日立)は、特許情報提供サービス「Shareresearch」において、AIを活用し知的財産部門の業務効率化を実現する新機能を販売した。Shareresearchは、企業や研究機関などの知財部門や発明者などがWebブラウザ上で国内外特許情報を検索・閲覧し、グローバルな特許情報を収集するためのサービスである。
今回新たに追加した機能は、AIと日立の特許検索のシステム開発ノウハウを活用して、特許公報内に記載される課題の抽出作業や特許技術の分類を自動化するほか、他社技術の出願動向を簡易な操作でマップ形式に可視化するものである。新機能の主な特長は、以下のとおりである。
- 課題を自動で抽出し、特許の内容把握を効率化するAI読解支援機能
- 膨大な特許情報を分類する自動分類付与機能
- 特許出願技術の動向を可視化する技術マップ機能
特許公報の文章中には、課題とその解決手段が記載されている。特許分析・調査では、他社による発明観点などの動向を把握するため、特許公報を検索し、特許内容が把握できる課題を、知的財産部門などが人手で読解し抽出している。しかしながら、特許公報に記載される課題は一般的に長文で情報量が多いため当該箇所の把握に時間を要している。
AI読解支援機能では、この抽出作業において、AIと日立の文書解析技術のノウハウを適用することで、対象箇所を自動抽出し効率的に課題を把握することができる。
従来、知的財産部門は、特許公報に対し、独自に設定したコード(社内分類)を人手で付与しており、付与されたコードを検索時の絞込みに活用することで、製品企画時などにおいて、関連する特許調査が容易となる。同機能は、この分類作業に対して、AIと日立の文書解析技術のノウハウを活用し、コードを自動的に付与して特許分類を行う。なお、SDI(※2)機能で通知された特許公報においても同機能を活用できる。
Shareresearchで検索して得られた特許情報から、各特許出願技術の動向を、複雑な操作なくマップ形式に可視化できる。具体的には、AIと特許専用の文書解析技術のノウハウによって特許公報を読解・分析し、各特許がどのような技術・キーワードで成り立っているかをマップとして可視化する。類似の特許はマップ上に近く配置するなど、他社の出願傾向を視覚的に把握し、分析できるため自社の経営判断の一つの指標として活用できる。
これらの機能を活用することにより、特許情報から自社の強み・弱みや他社動向を把握し、将来の事業環境を分析することができる。また、特許情報の読解や抽出にかかる時間を短縮し、特許業務の熟練度に関わらず分析作業の効率化を図ることが可能になる。これにより、知的財産データを活用した経営戦略の策定を図るIPランドスケープ推進の支援や調査担当者の働き方改革の促進に寄与するという。
なお、Shareresearch本体の利用料は月額30万円からで、各オプションは個別見積だという。
※1 Selective Dissemination of Information (情報の選択的配信)。特許情報の検索式をシステムに予め登録すると、検索式に該当する新たな特許公報などが登録された際にユーザーに通知をする機能。
※2 自社や他社の知財を俯瞰的に分析し、将来の事業環境を予測することで経営戦略を立案すること。
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