「IoT SIM」それは、グローバルIoTプラットフォームへの進化
2016年にグローバルSIMをリリースして以来、130カ国を超える国と地域で使うことができる同社のサービスだが、海外でも活躍する企業における利用ニーズは高い。
例えば、フジテックでは、海外で使われるエレベーターの遠隔監視に採用していたり、フランスのGo4ioTという企業では農機等の盗難防止モニタリングアセットで使われているのだという。
そもそも、2015年にソラコムは、そのサービスを開始して以来、セルラー通信だけでなく、LoRa WANやSigfoxといった非認可帯域でのLPWAや、LTE-Mと呼ばれる認可帯域でのLPWA通信などのサービスも提供してきている。
これらのサービスはどの通信を使っても同一の管理画面で管理することができて、例えばLPWAだからといってセルラー通信とできることは同じということも特徴だ。
ネットワークの選択肢が多いということに関して、経緯的にも日本国内からスタートしたこともあり、NTTドコモの回線やKDDIの回線を使うことが前提で、グローバル対応に関してはローミングサービスが前提となっていた。
ところが、今回の発表では、これらの通信サービスは統合され、「IoT SIM」と名付けられた、SIMが1枚あれば、世界中でSORACOMのプラットフォームを利用できるようになり、価格も日本を含むほとんどの国で、1MBあたり0.02USDという低価格の通信を実現したのだ。
これは、グローバルで一つの価格、一つのサービスを提供していくという意思表示であり、ソラコムのサービスが「グローバルIoTプラットフォーム」となることを意味する。
さらに、eSIMの利用や、海外でもマルチキャリアに対応できるなど、利用企業の利便性を考慮しつつ低価格を実現している。
現在の事例としては、「POCKETALK」を提供するソースネクストの「FamilyDot」という製品が紹介された。これは、71カ国で利用でき、これを持っているだけで家族の居場所をスマートフォンで確認できるという製品だ。eSIM版のIoT SIMがつかわれているのだという。
これまでであれば、海外進出を考えた場合、各国の通信会社とそれぞれ契約をしなければならないだけでなく、それぞれの仕様を考慮したシステム開発も必要であったため、簡単に海外進出することはできなかった。
しかし、今回の利用価格でIoT SIMが提供開始されることで、小ロットからでも世界に向けてIoTデバイスを販売開始することができるのだ。Amazon.comなどのECサイトを活用すれば、例えばeSIMが搭載されたウエアラブルデバイスを開発し世界に向けて販売するというようなことがいとも簡単にできてしまうようになったということなのだ。
また、日本国内だけの利用の場合でも、1つのSIMでNTTドコモとKDDIの回線が利用可能となり、NTTドコモの回線を使うより、KDDI回線を使う方が1/10のコストで利用が可能になるということが発表された。
さらに、グローバルSIMを使う場合、これまでは「ランデブーポイント」と呼ばれるドイツの都市に一旦ネットワークを経由させて通信サービスを利用していた。この場合、例えば日本でグローバルSIMを使う時は、一旦ドイツを経由して通信をしていたため、若干の遅延が起きていたのだという。
そこで、IoT SIMでは、ランデブーポイントを日本と米国にも配置し、主要国での遅延を極小化する努力をしたということだ。
また、もともと管理画面で通信速度を変えることができるというSORACOMの特徴があったが、今回fastという設定で2Mbpsであったのを、「4xfast」という設定が可能となり、最大8Mbpsでの通信も可能となるという。
次ページは、「グローバルをスタンダードとしたSORACOM」
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。