TESLAはなにがすごいのか、見えてきたその野望

2016年9月のパリのモーターショーで、メルセデス・ベンツは「CASE」と名付けた中長期戦略を発表した。

Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared&Services(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をつなげたのが「CASE」だ。

ところで、「コネクテッドカー」と「自動運転」の違いとはなんだろうか。

例えば、超高速・低遅延・同時多数接続の5Gが自動運転を実現するためには必要だという説明をよく見聞きする。

そのため、コネクテッドカーと自動運転がセットにされてしまっており、それぞれ異なる技術であるということがあまり整理されていないように感じる。

Tesla社のSmart Summon(スマート・サモン)

Tesla社は既に自動運転レベル2(アクセル&ブレーキ制御、ハンドル操作のサポート)を実現しているが、今年の春、Tesla社の自動運転車に、Smart Summon(スマート・サモン)という機能が実装された。

Summon(サモン)とは英語で「召喚」を意味する言葉で、その名の通り、車の所有者は自分の居る位置や指定した場所まで車を呼び寄せることができる。※呼び寄せられる車の距離は約60mが限界。

例えばスーパーで買い物をして、帰ろうと思ったら雨が降っていたというときには、Smart Summonを利用して、車をスーパーの出口に横付けすれば濡れずに済むというユースケースが考えられる。

では、このTeslaのSmart Summon機能をコネクテッドカー、自動運転という側面からみてみる。

まず、基本的な仕組みは次のようになっている。

車の所有者はスマートフォンでTeslaのアプリを立ち上げる。そして、所有者はアプリ上で、GPSで取得した位置情報を車に送信する。一方、車は位置情報を受信し、8つのカメラ、12の超音波センサー、1つのレーダーを駆使して指定の位置まで無人で走行する。

この仕組は、コネクテッドカーと自動運転の技術が組み合わされているものだと気づく。つまり、下記のように切り分けられる。

  1. コネクテッドカーの技術
    スマートフォン(端末)と車(端末)が通信し、位置情報の送受信を行う。
  2. 自動運転の技術
    車が移動をはじめる前に止まっていた駐車位置から指定位置に至るまで、周囲の環境を様々なセンサーを用いて絶え間なくセンシングし人や障害物を検知・回避しながら走行する。

コネクテッドカー、自動運転とは

総務省の「平成27年版情報通信白書」では、コネクテッドカーは次のように説明されている。

コネクテッドカーとは、ICT端末としての機能を有する自動車のことであり、車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し、ネットワークを介して集積・分析することで、新たな価値を生み出すことが期待されている。

ICTとは、「Information and Communication Technology」の略語で、直訳すると「情報伝達技術」をいう。この情報伝達技術を備えている車が、コネクテッドカーということになる。

つまりスマートフォンのように「インターネットを介して他の端末と通信を行い、様々な情報を送受信することができる端末としての車」と考えるとよいのではないだろうか。

例えば、ウェザーニューズとトヨタが10月に開始した実証実験では、ワイパーの稼働データ(強い・弱い)から降水量を推定するというが、このワイパーの稼働データを送ることのできる車がコネクテッドカーに該当する。

[参考記事] ウェザーニューズとトヨタ、気象データとワイパーの稼働状況を活用して気象リスクを把握する実証実験を開始

一方、自動運転については米国の自動車技術会が2014年に発表した定義が世界的に採用されており、日本も同様に採用している。

この定義では、完全な自動運転が実現されるまでを6段階(レベル0~レベル5)に分けて、それぞれ説明されているが、下記にはレベル5すなわち完全自動運転の定義を示す。

  1. 運転自動化システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を持続的かつ無制限に(すなわち、限定領域内ではない)実行。
  2. 作動継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない

ここでは完全自動運転の状態についての定義があるのみで、どのように実現されているかは説明されていない。

では、自動運転に必ずインターネットを介した通信が必要なのだろうか。

例えばGoogle系のWaymoの自動運転車両はオフラインで動いている。

自動運転車はカメラや距離を測定できるセンサーによって、道路状況を把握する必要はあっても、インターネットによる通信は必要ではない。

このように自動運転がコネクトしている必要がないとすると、コネクテッドカーと自動運転は別物だと考えた方が良さそうだ。

コネクテッドカーと自動運転の掛け合わせが生み出す相乗効果

しかし、多数の車がコネクトしたらどうか。車載カメラで渋滞情報、信号情報、道路工事、路面の状態などが、クラウドにアップロードされる。

その内容に基づき、人工知能が各々の目的地に合わせて最適な車両ルートを割り出す。そして、各車両が自動で制御されるといったことが現実になると人々の移動が最適化されるはずだ。

このように通信技術と自動運転がコラボレーションすることによって、人々の暮らしがより豊かになる。そのような未来を描くときに、コネクテッドカーと自動運転が区別されることなく語られるため、混同しやすいのだと思われる。

ところで、コネクテッドカーと自動運転が掛け合わることで生み出されるこのような付加価値というのは現実に生まれているのだろうか。

例えばGoogle系のWaymoはロボットタクシー事業にいち早く乗り出した企業だが、アリゾナ州のフェニックスという地域限定で無人のタクシー配車サービスを実現している。

Waymoだけでなく、中国のバイドゥやドイツのメルセデスもWaymoの背中を追いかけ、ロボットタクシー事業への取り組みを進めているところだ。

また、Teslaについては「Tesla Network」というプラットフォームに所有するTeslaの自動運転車をタクシーとして登録することで、マイカーを無人タクシーとして配車できるという構想を持つ。

もしこの構想が実現すれば、Teslaの電気自動車のオーナーが、マイカーをネット上にタクシーとして登録し、配車を希望する人のところまで、車が無人で走行するというシェアリングエコノミーが出来上がる。

その結果、C(コネクテッドカー)、A(自動運転)、S(シェアリング)、E(電動化)が融合するサービスが誕生することになるのだ。

TeslaはCASEの世界をいち早く完成させ、移動全体を取り込もうとしているのではないだろうか。

Previous

寒い日に嬉しい、IoT風呂(バス)

進化するソニーのスマートウォッチ「wena」スターウォーズコラボも

Next