MaaSアプリから街づくりまで手掛ける小田急電鉄のモビリティライフ戦略―Mobility Transformation Onlineレポート3

共通データ基盤「MaaS Japan」による事業者間連携

2点目に紹介された取り組みは、共通データ基盤「MaaS Japan」による事業者間連携である。

「MaaS Japan」は小田急電鉄がヴァル研究所の支援のもと開発しているオープンな共通データ基盤である。この「MaaS Japan」を通して「EMOT」の機能や、他の交通事業者・自治体が開発するMaaSアプリ機能を、事業者間で連携して利用する事ができる。

「立川おでかけアプリ」

「MaaS Japan」による事業者間連携の具体例として紹介されたのが、2020年2月に行われた「立川おでかけアプリ」の実証実験である。これは小田急電鉄とJR東日本、ヴァル研究所が協力し、乗車券と沿線施設の利用券がセットになった電子チケットと、リアルタイム運行データを用いた立川駅周辺の交通機関の経路案内を、1つのアプリで提供するという実験だ。

立川おでかけアプリの実証実験構成図
立川おでかけアプリの実証実験構成図

電子チケットについては、小田急グループの立川バスの1日乗車チケットや、多摩モノレール1日乗車券と多摩動物公園の入場整理券がセットになったチケットを、「立川おでかけアプリ」内で購入できるようにした。これらの電子チケットは、「EMOT」と同様、アプリ画面がチケット代わりになる仕組みになっている。

立川おでかけアプリの電子チケットや、経路案内の画面
立川おでかけアプリの電子チケットや、経路案内の画面

また、経路案内については、「MaaS JAPAN」だけでなく、JR東日本の「Mobility Linkage Platform」とも連携を行い、JR中央線・南武線、立川バスのリアルタイムデータを反映させた経路検索が出来るようにした。

新型輸送サービス

西村氏が3番目に挙げたのは、新型輸送サービスに関する取り組みだ。具体的には以下の2点について説明があった。

自動運転バスの実証

2019年8月には小田急グループの江ノ島電鉄がSBドライブ、神奈川県と連携して江の島周辺での自動運転バスの実証実験を行ったほか、2019年冬には多摩ニュータウンでも実施した。

オンデマンド交通の実証

2020年2月より小田急線新百合ヶ丘駅周辺にて、「しんゆりシャトル」というオンデマンド交通の実証実験を行った。(新型コロナウイルス感染拡大にともない、現在は実験を中断)

西村氏によれば、「しんゆりシャトル」は「バスとタクシーのあいだのモビリティが何か出来ないか」という発想から生まれたという。買い物の帰り、通院、塾の送迎といった、地域のちょっとした移動において利便性を感じてもらうのが、この「しんゆりシャトル」の狙いだそうだ。

オンデマンド交通「しんゆりシャトル」の実証実験
オンデマンド交通「しんゆりシャトル」の実証実験
利用者はスマートフォンの実験専用アプリ内において、3ステップで「しんゆりシャトル」の手配が出来る。まず出発地、目的地をアプリ上の地図でタップして指定する。すると、アプリ側でシャトルの到着時間、乗降地点を提案し、その内容で問題なければ利用者は呼び出しを確定する。

スマートドライブとの街づくり

4点目に挙げた取り組みは、スマートドライブとの協業による「街づくり」である。2020年3月、小田急電鉄とスマートドライブは「安心・快適な新しいモビリティ・ライフの実現に向けたプロジェクト」について協業を行い、「安心・快適のまちづくり」「愛着のまちづくり」に取り組む事を発表した。このプロジェクトの具体的内容については、スマートドライブ・弘中氏より以下のような説明があった。

運転見守りサービスの提供

スマートドライブが提供する家族の運転見守りサービス「SmartDrive Families」を小田急沿線に提供し、車の位置特定や、運転特性を見る運転診断スコアといった機能を住民が利用することで、地域の安全運転を促す。

ヒヤリハットのポイントを共有

急加速、急ハンドルといった危険運転が発生するポイントを、住民の運転データから抽出し、運転に注意を要する地点を地域の住民で共有することによって、事故のリスクを減らす。

住民の安全運転を促すための取り組み
住民の安全運転を促すための取り組み

安全運転に対するポイント付与

正しい駐車場所に駐車する、法定速度を守って道路を走行する、といった正しくモビリティを利用する事によって、地域の店舗で使えるポイントやクーポンをドライバーに付与する仕組みを検討中だという。

地域の安全運転に貢献するドライバーにはポイントを付与する仕組みを導入する予定だという
地域の安全運転に貢献するドライバーにはポイントを付与する仕組みを導入する予定だという

この取り組みについては、スマートドライブが提供する安全運転診断サービス「SmartDrive Cars」を活用する予定とのことだ。

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