東芝、インフラ設備や製造装置の異常予知・動作解析の高精度化に貢献するAI技術を開発

IoT技術の普及に伴い、インフラ設備や製造装置に取り付けた複数のセンサーにより日々変化する多変量時系列データを大量に収集することが可能となりつつある。

時系列データを用いた異常予知・検知には、通常は起こり得ないようなデータ点を検知する「外れ値検知」、異常が起きている部分時系列を検出する「異常状態検出」、時系列データのパターンが急激に変化する箇所を検知する「変化点検知」の3つの手法がある。異常状態検出と変化点検出は時間的な変化を含んでいるため扱いが難しいといった課題があるが、検知精度の向上には不可欠であり、近年時間的変化の要素を取り入れた解析が注目されている。

特に変化点検知においては、複数センサーの時系列データ間に時間のずれが生じることが課題となる。例えば、インフラ設備における圧力制御や速度制御等では、計測・制御の結果がセンサーデータに反映されるまでに一定の時間がかかるため、データ間の振る舞いに時間遅延が生じる。

また、発電プラントや工場などでは、数千にも及ぶセンサーをプラントの主要部分に配置して、センサーの値を監視しながら保守や管理業務を行っている。万が一、プラントのある箇所で異常が発生した場合、センサー値を元にどの時間に何が発生したのかを把握する等の原因究明を行うが、各センサーの検出時刻は数千にも及ぶセンサー間で同期を取っておらず、時間のずれが発生しているため、原因究明や対策立案を困難にするケースがある。

更には、製造現場における作業員の生産性改善等に利用されるモーションキャプチャでも、たとえば右手と左手の動作が完全には同期していないため同様にセンサーデータ間に遅延が生じる可能性がある。データ間に時間のずれが生じると、設備や機器に変化が起きた正確な時刻を把握できず異常のタイミングを正しくつかむことが困難なため、複数センサーのデータ間に生じる時間遅延の影響を予め織り込んだ変化点検知技術の開発が望まれていた。

株式会社東芝は、インフラ設備や製造装置の異常予知・検知、動作解析の精度を向上するAI技術「Lag-aware Multivariate Time-series Segmentation」(以下、LAMTSS)を開発した。

LAMTSSは、設備や装置に取り付けられた複数のセンサーから得られる複数の時系列データセットにおいて、データ間に生じる時間のずれを自動補正する技術で、異常発生等のデータに変化が起きた時刻を従来方式に比べて10分の1以下の誤差で検出できることを確認した。

これまで時間のずれの補正は人手で対応する必要があったが、同技術により大規模インフラシステム等の多くのセンサーが組み込まれている場合においても、複数のデータ間の時間のずれを補正することができる。これにより、リアルタイムでの異常予知・検知に加え、異常の根本原因の特定や動作解析への適用により生産性の向上への貢献が期待できる。

また、LAMTSSでは動的計画法(※1)に基づく動的時間伸縮法(※2)により、ところどころ発生する微小な波形のピークのずれを自動で合わせ込み時間ずれを自動補正することで課題を解決する。これにより、人工データを用いた性能評価では、従来の技術と比較して10分1の以下の誤差で変化点を正確に検出することが可能になった。

このように、LAMTSSで計測・制御等に伴う時間遅延を加味することで、設備の異常状態をより正確にとらえることが可能となる。特に、インフラ・製造分野において、異常発生等によるシステムの停止時間の削減等に貢献できると見込んでいる。

なお、同技術はAI・データマイニング分野の難関国際会議SIAM International Conference on Data Mining(SDM) 2020で採択された。

※1 動的計画法:解きたい問題を、よりサイズの小さな等価な問題に分解することによって計算時間を削減する最適化手法のこと。
※2 動的時間伸縮法:時系列データを部分的に伸縮させる既存技術。

Previous

産総研と日立、移動体データ形式「MF-JSON形式」が地理空間情報の国際標準として採択

古河電工、AI/IoT技術でDXを推進する新組織「デジタルイノベーションセンター」を設立

Next