東芝と統数研、工場の現場技術者の知見を学習する不良原因解析AIを開発

製品の品質低下は生産コストに直接影響するため、製造現場においては、製品の品質を監視し品質低下がみられる製品の検出、原因の特定、対策の実行を素早く行う必要がある。

特に半導体の製造現場では、製造装置の経時変化やメンテナンスによる装置の状態、また、納入される材料の特性変化等により、製品の品質が日々変動するため、定期的(毎週~毎月)な品質監視が求められる。監視データから品質が低下する原因を特定するには、AIで原因を推定し、現場技術者による推定結果の妥当性の確認(解析結果の精査)が必要である。

しかし、製造現場には多数の工程および製造装置があり、それぞれが複雑に連携している。また、1つの製造装置あたり必要な監視項目は約400にのぼると言われており、監視データは極めて膨大になる。現場技術者が効率的に解析結果を精査するには、より効率的な原因推定を行うAIの開発が不可欠である。
東芝と統数研、工場の現場技術者の知見を学習する不良原因解析AIを開発
大規模な監視データから品質に影響する原因を自動的にあぶりだす手法として「Least absolute shrinkage and selection operator(Lasso)」というAIがあるが、前回の解析から原因に本質的な変化がない場合においても、データの中に存在するノイズの影響で誤った原因を提示し、解析結果が変わるという課題がある。

現場技術者の知見による解析結果と異なることから、解析結果の精査には数日間必要だった。これはLassoによる原因解析が不安定なことに加え、現場技術者の知見の反映が難しいことに起因している。
東芝と統数研、工場の現場技術者の知見を学習する不良原因解析AIを開発
株式会社東芝および大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所(以下、統数研)は、半導体工場等の製造現場における不良原因解析AIにおいて、現場技術者の知見の反映を可能にすることなどにより、従来数日かかっていた解析結果の精査時間を1日に短縮できるAI「Transfer Least absolute shrinkage and selection operator(以下、Transfer Lasso)」を共同開発した。

Transfer Lassoは、現場技術者が過去に精査した製造プロセスの知識や物理的な法則といった知見を反映することで、過去に実施したことがある解析結果の精査のやり直しが不要になる。また、技術者のAIに対する不安を払しょくし、より納得感のある原因解析の提供にもつながる。

さらに、前回の原因解析結果をもとに取得した監視データの傾向の変化を検知し、変化(差分)があるときのみ、新たな原因や解消された原因を提示することを可能にした。差分のみに着目することでデータにおけるノイズ等の影響を受けにくくなり、膨大なデータの中から本質的な原因を安定的に提示することができる。

一般的に品質低下の原因と推定される項目は、1つの製造装置あたり10程度に絞り込む必要があると言われているが、Transfer Lassoにより、従来、絞り込みに数日かかっていた現場技術者の精査時間を1日以内に削減することができる。また、定期的な原因解析にかかる作業時間を短縮し、素早く対策を検討することが可能になる。

Transfer Lassoは、理論保証のある汎用的な手法であることが認められ、NeurIPS2020に採択された。
東芝と統数研、工場の現場技術者の知見を学習する不良原因解析AIを開発
東芝では、2020年度末までにパワー半導体工場においてTransfer Lassoを適用する予定だという。また、2021年度末をめどに化学プラント等を対象としたプラント監視制御システムへの搭載を目指すとのことだ。

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