東芝、検査対象の外観が異なる場合でも検知可能な異常検知AIを開発

近年、製造現場では、AIを活用し製品の歩留まりを改善するといった生産性向上の取り組みが進んでいる。製造部門向けAIの市場は、2020年の11億ドルから2026年には約15倍の167億ドルに成長すると予測されている。

製造現場における製品の外観画像を用いた異常検知においては、そもそも製品の異常の発生頻度が低く異常データの収集が困難であるため、正常データのみから学習する手法が求められている。異常データを必要としない手法の一つとして、基準となる正常データとの差分を検知するものがある。

この手法は、ボルトやナットのように部品を固定の画角・構図で撮影できる場合には有効だが、検査対象の外観が撮影した部位や製品の種類によって異なる場合においては、基準となる正常データを準備することができず適用が困難だ。

例えば、半導体ウェハの欠陥検査ではウェハ上の複数個所を撮影し、その拡大画像から欠陥となる塵や傷の有無を確認する。撮影箇所の外観は撮影した部位や製品の種類によって異なり、塵や傷の形状も多種多様であることから、一つの見本(正解)に対する正誤で欠陥の有無が判定できないという状況があった。
東芝、検査対象の外観が異なる場合でも検知可能な異常検知AIを開発
こういった状況に対応する深層学習を用いた技術として、正常データのみから「正常データらしさ」を学習するAIを使用する手法がある。この手法では、画像データから画像の特徴を潜在変数に数値化(符号化)し、それを再度画像データに復元する。正常データのみを用いて学習したAIでは異常データは正しく復元できないため、入力時と復元時の画像データの差から、撮影した部位や製品の種類によって状況が異なる場合においても異常検知につなげることができる。

一方で、類似した画像同士を誤った潜在変数に対応づけて学習してしまうことがあり、正常データを正確に復元出来ず、検知精度が十分ではない。

株式会社東芝は、独自の深層学習手法を用いて製造現場における製品の外観画像から異常を検知するAIを開発した。

同AIは、製造現場では収集が困難な異常データを使用することなく正常データのみから学習し、検査対象の外観が撮影した部位や製品の種類によって異なる場合においても異常を検知することができる。

具体的には、潜在変数から復元された画像データを再度潜在変数に数値化(再符号化)し、2つの潜在変数が一致するような制約を課して学習する。従来の、入力時と復元時の画像データの比較をより厳密にすることに加え、潜在変数の比較も行うことで、撮影した部位や製品の種類によって状況が異なる場合においても、より高い精度で画像を復元させ異常を検知することが可能となった。
東芝、検査対象の外観が異なる場合でも検知可能な異常検知AIを開発
今回、同AIを使用して世界共通の手書き数字画像の公開データ(※)で異常検知を実施したところ、検知精度が従来の69.5%から79.1%に改善することに成功した。また、社内の半導体製造工場で収集した検査画像に対しても、50.5%から91.6%へと検知性能を改善した。

同AIにより、従来目視で行っていた半導体ウェハの品質検査等の自動化が期待でき、製造現場における生産性の向上に貢献する。

今後東芝は、同AIを2021年度に東芝デバイス&ストレージ株式会社傘下の半導体製造工場の画像検査工程に適用する計画とのことだ。

※ 公開データ(MNIST):AIの性能検証で使用される代表的なデータセット。0~9の手書き数字のデータ。

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