富士通研究所、外観異常を高精度に検出する画像検査AI技術を開発

近年、製造業の現場では、多様化する顧客ニーズに伴い、多品種少量生産や製品の高機能化が進み、さらなる作業効率の向上と高度な品質管理の対応が求められている。

特に製造ラインでの検査工程においては、検査員が目視や監視カメラの画像からキズや加工ミスがないかを人手で検出しているが、これらの作業の効率化に向けてAIの導入が進んでいる。

しかし、現場で発生する異常は、多種多様で頻度も稀であるため、高精度かつ効率的に異常を検出できるAIの開発が求められている。

そこで株式会社富士通研究所は、製造ラインの検査工程で不良品と判断された製品の異常についての画像を教師データとして準備しなくても、人工的に異常を付加した製品の画像を生成しながらAIモデルを学習させることにより、キズや加工ミスといった外観の多種多様な異常を高精度に検出する画像検査AI技術を開発したことを発表した。

この技術では、検査対象の画像に異常がある場合に、AIが異常を取り除いた正常画像を復元し、検査対象の画像と復元した正常画像との差分を捉えることで異常箇所の検出を行う。

今回、学習用に用意した正常画像に、形や大きさ、色などの多種多様な異常を人工的に付加した画像を生成しながら、異常を取り除いた正常画像を復元できるようにAIモデルを学習させる方法を開発した。

正常画像を復元する性能が高まったことで、異常を含んだ画像を教師データとして準備しなくても、異常箇所を高精度に検出できるようになった。

富士通研究所、製造ラインの検査工程の効率化する画像検査AI技術を開発
従来技術のとの比較。

学習の際には、正常画像とAIが復元した画像とを比較して、大まかな形状や細部の構造、質感など各特徴の学習度を評価し、AIが捉えられていない特徴を優先して学習するように、付加する異常の大きさ、色、個数を制御する。

例えば、AIが大まかな形状を正しく復元できていない場合に、正常な外観に影響しない小さな異常を少量発生させた異常画像を多く学習させる。

また、細部や質感が少しだけ異なる場合には、細部が隠れるほどの大きい異常や目立つ模様を付加した異常画像を多く学習させる。

このように、AIの復元状況を評価しながら、AIが特徴を復元できない弱い部分を多く学習させることで、すべての特徴を捉えた正常画像を復元できるようになった。

さらに、5000種類以上の人工物を撮影した画像のライブラリから、形、大きさ、色が様々な素材を生成し、異常の個数や付加する位置を確率的に変えて異常を付加する技術も新たに開発し、製造現場で発生する多種多様な異常箇所の検出が可能となった。

今回開発した技術を、様々な工業製品の外観画像を集めた公開データを使って異常の検出を行う標準的なベンチマークを実施したところ、個体ごとに毛並みや色味の異なるカーペットや、配線の形状が部位によって異なるプリント基板のように、正常な外観にバリエーションがある製品のクラスにおいて、異常を検出するモデルの性能を測定する指標であるAUROC(※1)において、98%を達成した。

また、ねじやナットなど個体ごとのバリエーションが無く、良品が同一の外観を持つ製品において、従来技術(※2)と同等の精度を維持している。

そしてこの技術の有効性を、電子関連機器の製造工場である富士通インターコネクトテクノロジーズの長野工場の検査工程において検証したところ、プリント基板の検査工数を25%削減できる効果を確認したという。

今後は、この技術で検出した異常を種類や検出箇所に応じて分類する技術を、富士通株式会社のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を支える技術としてさらに開発を進めるとともに、製造業のDXを支援するものづくり事業ブランド「COLMINA(コルミナ)」への製品適用を目指す、としている。

 

プレスリリース提供:富士通研究所

(※1)AUROC:Area Under the ROC Curveの略。異常を検出するモデルの性能の良さを表す指標。百分率で最大100%までの値を取り、指標が大きいほど、モデルが良い性能であることを表す。

(※2)従来技術:MVTec ADを用いた異常検出技術のベンチマークランキングに掲載されている技術。

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