中小建設事業者のDXを促進し、業界全体を発展させる ーBRANU 代表取締役 名富達哉氏インタビュー

建設業界の大多数は中小企業から成り立っている。BRANU(ブラニュー)株式会社は、そうした中小建設事業者に対し、テクノロジー活用を支援するサービスの提供を行っている。

今回は、建設業界の課題や、そこに対してBRANUが提供しているサービス、建設業界のあるべき姿などについて、BRANU 代表取締役名富 達哉氏にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

建設業界に感じた課題と可能性

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): まずは、BRANUについて教えてください。

BRANU 名富達哉氏(以下、名富): BRANUは、中小建設事業者に特化してDXの支援を行っている会社です。時代の移り変わりとともにサービスの拡充を行っていますが、2009年に創業して以来、一貫して「中小建設事業者に向けたDX支援」という軸で事業展開を行っています。

直近に関しては、建設業界のバリューチェーンひとつひとつに向けたSaaSのプロダクト開発・提供と、コンサルティングを通して生産性向上を支援しています。

具体的なプロダクトは、集客・採用活動を支援するノーコードWebサイト管理ツール「CAREECON Sites(キャリコンサイツ)」、マッチングプラットフォーム「CAREECON(キャリコン)」、クラウド施工管理ツール「CAREECON for WORK(キャリコンフォーワーク)施工管理」などを提供しています。

小泉: そもそもなぜ建設業界に特化しようと思ったのでしょうか。

名富: もともと私の実家が総合建設業だったこともあり、私自身現場に立った経験もあります。ですので、建設業界がどういう業界なのか理解していました。

また、新卒で入った会社は、産業別にICTソリューションを提供する会社でした。そこでの配属先がたまたま建設業・リフォーム業の事業部で、建設業界はICTの利活用が非常に遅れていると感じました。

建設産業は自動車産業に次ぐ大きな産業なので、ここで貢献できれば社会的インパクトが大きいと思い、起業に至りました。

デジタルマーケティングでDXを加速させる

小泉: それでは各サービスの内容について教えてください。まずは、「CAREECON Sites」はどのようなサービスなのでしょうか。

名富: 「CAREECON Sites」では、ノーコードでWebサイト制作ができることに加え、サイトに訪れたユーザーの行動トラッキング・スコアリング、顧客管理、メルマガ配信などが行えます。

中小建設事業者のDXを促進し、業界全体を発展させる −BRANU 代表取締役社長 名富達哉氏インタビュー
感覚的にWebサイトを作成する事が出来る。

コードを書かなくても、パーツをパズルのように組み合わせることで制作できる仕様ですが、要望があれば制作段階からサポートし、コンサルティング業務を行っています。

また、Webサイトの最終的な目的は「集客」や「採用」ですので、制作して終わりにするのではなく、しっかりと運用していくことが大事だと考えています。

小泉: 実際に様々な企業の運用をされていると、運用ノウハウも溜まってくると思うのですが、象徴的な効果の事例などがあれば教えてください。

名富: 中小建設事業者はあまりPRをするという発想がなく、Webサイトを持っていない事業者が約6割という状況です。ですから、競合が少ない分デジタルマーケティングを行うだけで大きな効果があります。

Webサイト公開後、受注案件の30%がWeb検索経由になり、売上が5倍増になった例や、Webサイトに施工写真を載せることで、今まで請けていた業務以外の依頼が来るようになり、事業が拡大したという事例があります。

また、仕事が増えると人材獲得が必要になるので、集客目的で制作したWebサイトを求人の内容に変更し、求職者向けのブログ記事の更新や広告運用を支援し、約4か月で4人の人材を確保できたという事例があります。

小泉: 制作して終わりではなく、どれだけWebサイトを動かせるかという点が大事なのですね。

仕事・採用・会社選びの新たな選択肢

小泉: それでは次に、「CAREECON」について教えてください。

名富: 「CAREECON」という建設業界向けのオンラインマッチングプラットフォームを提供しています。

中小建設事業者のDXを促進し、業界全体を発展させる −BRANU 代表取締役社長 名富達哉氏インタビュー
「CAREECON」のHP。

建設業界は現在、仕事は沢山あるのですが、人手不足です。多くの業者や職人さんが先の仕事がない状況といわれています。

つまり、仕事はあるけど人手不足であったり、人手はあるけど仕事がなかったりといった状況の事業者が、それぞれ仕事や人材を探しているということです。ですが、多くの業者がそういった情報を発信する場がなく、機会損失が生まれていると思います。

そこで、紹介を前提とした限定的な仕事の受発注ルート以外にも、インターネットを使った仕事や採用、会社選びという新たな選択肢を増やすためにも「CAREECON」を提供しています。

また、より多くの建設業者に利用してもらうために、「CAREECON」は完全無料で提供しています。

建設業、特に中小規模ではデジタル化に対して前向きではないのが現状です。

デジタルに対して苦手意識があると、導入費用や使いこなせないといったことが課題になります。まずは無料でデジタルに触れるきっかけができればと思っています。

小泉: 案件と人材がうまくマッチされていない状況の中で、こうしたサービスは業界としても有難いですね。

プロジェクト管理をスマートに

小泉: 次に「CAREECON for WORK施工管理」 について教えてください。

名富: 「CAREECON for WORK 施工管理」は、中小規模の現場管理業務を効率化できるクラウド施工管理ツールです。

施工管理は、工程管理・品質管理・原価管理・安全管理で成り立っています。そうした管理を、アナログからデジタルへシフトするツールです。

プロジェクトごとに紐づいた工程表、写真やファイル、報告書機能やメンバー間のコミュニケーションを、時間・場所を問わないクラウド上で確認、作業できるというものです。

中小建設事業者のDXを促進し、業界全体を発展させる −BRANU 代表取締役社長 名富達哉氏インタビュー
現場管理に必要な業務をクラウド上で行える。

建設業界のプロジェクト管理は案件ごととなっており、システム開発のプロジェクト管理と似ています。

しかし建設業界では、各案件の施工現場をデジカメで写真を撮り、オフィスまで持ち帰り、案件ごとにサーバーに分けて…と、膨大な時間がかかっていました。

そこでクラウド上に情報をアップロードし、案件ごとに紐つけていくことで、情報共有などの事務的作業を効率化し、生産性の向上に寄与していると思っています。

小泉: 建設とシステム開発でプロジェクト管理の方法は似ていても、デジタルの活用度合いが対極的に違っていたのですね。そこを埋めてあげるだけでも生産性は大幅に向上するのが分かります。

CSと開発の並走でサービス導入を進める

小泉: 各サービスが中小建設事業者の課題解決の支援を行っているのは分かったのですが、今までデジタルを利活用してこなかった企業に、まずサービスを使ってもらうのが難しいのでは、と感じました。どのように導入を進めているのでしょうか。

名富: まずは導入検討段階で、サービスを無料で最大3ヶ月利用してもらいます。3ヶ月ですと大体2現場、運用支援を行いながら共に進め、実際に生産性が上がった結果を可視化して提出します。

そうすると結果的に数字が上がり、生産性が向上して仕事が効率化する、ということを実感してもらっています。

ツールだけ提供して終わりだと、利活用してもらえずに解約されてしまうケースが多々ありました。

ですから、CS(カスタマーサクセス)は開発メンバーと同じくらい重要だと考えています。導入前の営業だけでなく、運用後も一社一社サポートを行っています。

小泉: 開発の段階で工夫されている点はありますか。

名富: 管理者側はツールでのメリットを理解してもらえれば、比較的活用してもらいやすいのですが、現場の方にはなかなか浸透しません。

実際に現場の方から、「ログインの仕方が分からない」「管理項目が多い」「使い方が分からない」などの声が挙がりました。

そこで、とにかくシンプルなUI・UXを徹底して開発しています。また、作業者と管理者でUI・UXを変えているという点が当社の大きな特長だと考えています。

作業者の入力画面では、余分なものを一切排除し、ワンタップ・ツータップでデータを上げられる状態を作り、作業を邪魔しない工夫をしています。

建設業界の底上げをして新たな発展へと繋げる

小泉: 最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

名富: 建設業界は99%以上が中小企業です。ゼネコンだけが変わっても建設業界は変わらないため、DXを推進することで下から底上げしたいと考えています。

建設業界は縦にも横にも広く、十数というピラミッド構造になっています。ゼネコン、下請け業者、職人、それぞれの役割があり、全体で成り立っています。

しかし、日本経済を支える基幹産業でありながら、過去50年間生産性が高まっていないのも事実です。

ピラミッドの上と下ではデジタルへの価値理解の差も大きく、産業構造や情報流通の歪みをテクノロジーで正すことで、業界の進歩に貢献したいと考えています。

また、ピラミッドの上と下では、テクノロジーへのリテラシーの差が大きいことも業界の進歩を妨げているのではないかと感じています。

たとえばゼネコンは、様々なテクノロジーを活用していますが、ゼネコンと中小企業の温度差が大きすぎると、業界自体の発展が難しいと思います。

そうした温度差を埋めるためにも、まずはSaaSから、費用負担も軽く、業務改善につながるデジタルトランスフォーメーションの入り口にして頂ければと考えています。

小泉: 本日は貴重なお話をありがとうございました。