これまで建物を構成する各種部材の製作やそれらの施工状況に関する進捗管理は、担当者が工場へ都度状況を確認し、現場を巡回することで収集した情報を、紙の図面にメモやマーキングすることで対応してきた。このため、関係者間で最新の進捗情報を円滑かつタイムリーに共有することが難しく、その結果、連絡不備等による工事の手戻りや手待ちが発生することが課題だった。
鹿島建設株式会社は、工場で製作する各種部材の製作・運搬・施工の各フェーズにおける進捗予定と実績を、BIMデータと連携して管理する進捗管理システム「BIMLOGI」を開発した。
同システムでは、部材ごとに付与された固有のIDとBIMを紐付けることで、部材ごとの製作から出荷・運搬、現場での受け入れ、施工、検査までの予定と実績を管理する。情報の登録には各部材のID情報を持ったQRコードを利用する。
製作時に工場で貼り付けたQRコードを、管理フェーズごとにスマートフォンで読み取ることで、自動的に部材ごとの進捗状況がクラウド上のシステムに登録される。対象となる部材は、鉄骨、外装材、内装材、建具、衛生・空調・電気設備機器などである。
登録されたデータは、Webブラウザを用いてリアルタイムにビジュアルで確認できるため、進捗情報を関係者間で円滑に共有することができる。これにより、作業の手戻り・手待ちを削減する。また、同システムに登録された実績情報を協力会社の出来高帳票として活用することで、協力会社からの出来高請求を正確かつ容易に照合できるようになり、事務処理作業の削減や適切な工事代金の支払を可能にする。
さらに、部材取付後の検査フェーズでは、部材ごとに検査項目を設定でき、図面へのチェックや写真と合わせた検査の記録が可能だ。検査結果は自動的に登録されるため、検査未了箇所の抽出を容易に行うことができる。
同システムの活用により、日々刻々と変化する工事の進捗状況を、リアルタイムに把握し関係者間で共有することができるようになるため、工事の手戻りや手待ちの発生を減らすことができる。
今回、同システムの開発にあたり、2020年4月より都内の大型建築現場に同システムを導入し、鉄骨工事で約3,000、カーテンウォール工事で約2,000、建具工事で約900、電気・空調・衛生設備工事で約60,000点の部材を対象に進捗管理を検証した。その結果、各部材の製作状況や施工の進捗状況を関係者間でリアルタイムに共有でき、該当工事における手戻りや手待ちがほぼなくなるなど、より合理的な現場管理につながることが実証された。
今後鹿島建設は、同システムと既開発の各種現場管理ツールを連携し、現場の様々な施工データを収集のうえ分析することで、現場管理のさらなる合理化を目指す。さらに、各部材の製作や運搬時のCO2排出量が明らかになれば、同システムの進捗データを積算することで、現場ごとのCO2排出量がタイムリーに把握できるようになるとのことだ。
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