オムロンは、設定した温度になるようヒータなどを制御する、温度調節器の開発・製造を長年行っており、包装機、半導体装置、成形機などに活用されている。
そうした中、包装機に利用されていた温度調節器に、新たな包装材にも対応する機能が求められているという。
包装機を保有する食品や日用品メーカーが、海洋生物や人間の健康被害にも影響を及ぼす、海洋プラスチックゴミ問題から、プラスチックの削減・廃止の実現へ向けた取り組みを行っているからだ。
具体的には、商品を包装している従来のプラスチック包装材を、紙製のクラフト包材や生分解性プラスチックなど、環境に優しい包装材への変更が行われている。
しかし、こうした新たな包装材は、熱に対する反応が従来のプラスチック包装材とは異なり、「熱が伝わりにくい」「溶けやすい」「変形しやすい」といった性質がある。
これにより、接着不足、シワの発生など、包装不良が多発し、メーカーは量産に進むことができないという課題があった。

そこでオムロンは、包装材を接着する際の温度変化を10分の1にする「パーフェクトシーリング」を開発した。
従来の温度調節器では、包装器が包装を開始すると、包装材をはさんで接着を行うシールバーの熱が奪われてしまい、設定温度に戻ることができなかった。この温度変動が上図のような包装不良を引き起こすという。

こうした課題に対してオムロンは、温度の正確な測定と、独自の温度制御アルゴリズムを開発することで対応した。
従来の温度調節器の温度センサは、耐熱の問題から、包装材を接着するシール面から少し離れた場所に搭載されていた。また、高速に動く包装機に対応した応答性がないという問題もあった。
そこで、シール面の直近に接続できる耐熱性と、高速な動きにも対応できる応答性を持った温度センサを開発したことにより、正確な温度が測定できるようになった。

また、温度変化が起こってしまうシール面への対応は、温度をブレなく安定的に制御できるよう、温度制御アルゴリズムを改善し、パラメーターを自動制御するAIを開発した。
正確な温度を新たな温度センサで測定し、その測定値をもとにAIで温度制御することにより、温度変化を10分の1にまで抑えることができたのだという。
今後は、製造工程の異なるペットボトルなどの品目においても、素材の変更が行えるよう、新たな技術開発を行なっていく予定だ。
「パーフェクトシーリング」の企画・担当者の西出美穂氏は、「パーフェクトシーリング発売当初の2018年頃は、包装材を新素材にするという動きは、欧州を中心とした一部の先進的なグローバルメーカーのみだった。しかし、最近では日本やアジアでも、包装材を変える研究が行われており、シール不良の相談を受けることが増えてきた。脱プラへの動きはさらに加速していくため、是非パーフェクトシーリングを活用してほしい。
また、電子部品など、プラスチックの包装は食品以外にも増えていくと考えている。今回の技術を応用し、様々な分野で展開していきたい。」と語った。
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