富士通、5G無線システムの総CO2排出量削減に貢献する5G SA方式対応の仮想化基地局を提供開始

近年、汎用CPUの性能向上や、通信における無線信号の処理や制御技術(テレコム機能)のソフトウェア化などの技術の進化を背景に、汎用サーバーで構成され、要件ごとの専用ハードウェアの開発が不要な仮想化基地局の導入に注目が集まっている。また、O-RAN(※1)などに代表される無線基地局仕様のオープン化の潮流とともに、柔軟な機器調達と基地局構築コストの削減を通して、携帯電話の利用者のニーズやユースケースに応じた自由度の高い通信サービスの提供が期待されている。

しかし、専用機器で構成されないこれまでの仮想化基地局は、従来型の無線基地局と比較して性能効率が低下する傾向があり、同等の性能を維持するにはより多くのハードウェア機器を組み込む必要があるため、結果的に消費電力などの環境負荷が高まってしまう課題がある。また、安定性や冗長性においても、従来の仮想化基地局ではキャリアグレードの通信品質を十分に担保できない場合があった。

富士通株式会社は、5G SA(Stand-Alone)方式対応の、ソフトウェアにより仮想化した基地局(以下、仮想化基地局)を新たに開発し、2022年3月より通信事業者向けに検証用としての提供を開始する。

今回提供を開始する仮想化基地局は、5G SA方式に対応のO-RAN仕様に準拠したものである。以下の技術を用いることで、従来の仮想化基地局が抱えていた課題の解決が可能となり、5G無線ネットワーク全体の最適化と、設備および消費電力の削減を実現し、通信事業者の5G無線システムの総CO2排出量削減に貢献する。

  • ソフトウェアの制御方式を改善した富士通独自カスタマイズ
  • ソフトウェアの制御方式を改善することで、これまで以上の高い性能およびキャパシティを実現する。通信速度の高速化を図るとともに、通信可能な範囲を2倍から4倍に向上する。

  • ダイナミックリソースアロケーション技術
  • 地域や時間帯によって変化する基地局の利用状況(通信量)に応じて、運用に必要なサーバーの演算リソースを柔軟に変更可能とすることで、余剰なリソースを削減し消費電力を低減する富士通独自のダイナミックリソースアロケーション技術を開発する。

    RANインテリジェント制御部(RIC (※2))、およびネットワーク全体のオーケストレーションと管理を行うSMO(※3)を同技術と連携させることにより、携帯電話利用者の移動やアプリケーションの利用状況を推定し、最適なリソース配置を実現するという。

  • オートセルリプランニング技術
  • AIにより将来の通信量の変動を予測したうえで、富士通独自の量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」(※4)を用い、現在の汎用コンピュータでは解くことが難しい、多数の基地局の電波が重なる環境下での無線装置(RU)と仮想化基地局(CU/DU)の組み合わせの中から最適な接続先を導き出す問題を高速に解くことで、最適な演算リソースの配分を可能にする技術である。

また、2022年3月より、通信事業者の検証用として汎用サーバー上で動作するソフトウェアの提供を開始し、フィールド試験を含めた各種検証を支援する。2022年度中に各通信事業者の商用サービス網での展開に向けて、グローバルに提供を開始する予定である。ソフトウェア機能のアップデートを順次行い、環境負荷低減技術をさらに向上させ、2025年に従来型基地局システムと比較し、総CO2排出量を50%以上削減することを目標としている。

なお、同製品の技術には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(c1)仮想化基地局制御部の高性能化技術の開発」の成果の一部を活用している。

※1 O-RAN:相互運用可能でオープンな無線アクセスネットワーク(Open RAN)の仕様策定を推進する標準化団体「O-RAN ALLIANCE」の仕様のことで、Open RANソリューションは、同仕様に準拠。また、富士通はO-RAN ALLIANCEに加盟。
※2 RANインテリジェント制御部(RIC):無線のリソース管理の最適化やオペレーションの自動化が可能なRANの制御部。
※3 SMO:Service Management and Orchestration。ネットワーク全体のオーケストレーション(設定、構築の自動化)および管理機能を統合したフレームワーク。
※4 デジタルアニーラ:計算量が膨大なため一般的なコンピュータでは解くことが難しい組合せ最適化問題を解くことに特化した、富士通独自のドメイン指向型計算機アーキテクチャ。

プレスリリース提供:富士通

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