NICTと金融庁、深層学習を用いて金融分野向けのAI翻訳システムを開発

国立研究開発法人情報通信研究機構(以下、NICT)は、AI翻訳を多分野で高精度化するために、その基盤となる翻訳文書を収集する翻訳バンクの活動を進め有効性を実証してきたが、個別組織単位の収集を越えて一気に大規模に収集する方式を模索していた。

一方の金融庁は、国際金融センターの実現に向けた取組の一環として、金融分野に特化した高精度なAI翻訳によって英語での情報の受発信を容易にし、金融行政を更に高度化することを目指していた。

このほどNICTと金融庁は、金融分野の文書を日本語と英語の間で双方向に翻訳できるAI翻訳システムの開発に成功した。

同システムは、金融庁は同庁及び金融関係の業界団体の所有する翻訳文書を大量に収集してNICTに提供し、NICTは翻訳文書をAI用の学習データに変換し、更に精製したデータを深層学習に用いて開発された。

同じ原文に対する従来の汎用翻訳システムによる訳文と、上記の金融分野向けの高精度AI翻訳システムによる訳文の品質の比較を行ったところ、最高品質である金融専業翻訳者レベルに達した割合は前者で約2割だったが、後者では約5割と大きく増加し、NGレベルの割合は半減することが確認できた。

NICTでは、同システムについて2022年3月1日から民間事業者に技術移転を開始している。同システムを用いることで、金融専業翻訳者レベルに達した訳文の割合が従来の2割から5割に向上することが可能となり、金融分野の文書の翻訳作業を効率化できることから、日本の国際金融センター機能の強化への貢献が期待される。

NICTと金融庁、深層学習を用いて金融分野向けのAI翻訳システムを開発
従来の汎用翻訳システムと金融分野向けAI翻訳システムの比較
日本語原文 汎用翻訳の訳文<理解可> 金融分野向け翻訳の訳文<専門級>
保険契約に解約価額がある場合、契約を解約する保険契約者に損失を負担させることを可能にするための解約時の契約価額の削減 where insurance contracts have a surrender value, reducing the value of contracts upon surrender to enable losses to be imposed on policyholders that surrender their contracts. A reduction in the value of policies at surrender to enable policyholders who surrender policies to bear losses if they have a surrender value ;
なりすましに対抗するため、各参加者に固有の生体認証番号(BIN)が作成されている。 A unique Biometric Identification Number (BIN) is created for each participant to counter identity fraud. To counter identity theft, a unique Biometric Identification Number (BIN) is created for each participant.

(訳文の改善例)

なお、同研究は、NICTが「自動翻訳エンジンの金融専用モデル構築に関する委託研究」を金融庁から受託したものである。

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