三菱電機、気流や温度分布を予測して快適な室内環境を実現する「ビル向け快適気流制御技術」を開発

近年、ビル用空調市場では、新型コロナウイルスなどの影響により、これまで以上に健康や快適性に配慮した空間へのニーズが高まっている。さらに室内の気流に対する意識も高まり、気流の可視化や所望の室内環境を実現する気流制御が求められている。しかし、気流は部屋の形状や機器の配置などさまざまな条件で変化するため、センサーでの把握が困難で、これまで温度ムラや風あたりなどで不快感が生じるといった課題があった。

三菱電機株式会社は、室内の空気の流れ(気流)や温度分布を予測して快適な室内環境を実現する「ビル向け快適気流制御技術」を開発した。

具体的には、気流解析を活用し、室内全体で快適性を実現する気流制御技術と、気流を可視化するソフトウエアを開発した。

気流制御技術

室内における気流制御は現在、個々の室内機がそれぞれのセンサーで取得した情報を基に、独立して制御している。このため、部屋の形状や室内機の位置によっては部屋の隅まで吹き出し気流が到達しない場合がある。また、隣接する室内機からの吹き出し気流同士が衝突して局所的に風速が上がる場合もあった。

今回開発した気流制御技術は、部屋の形状と室内機の位置情報を持つ3次元モデルを生成し、吹き出し角度、風量、発熱量などを変化させた複数の条件の気流・温度分布をCFD解析により予測する。空調機のセンサー値を基に現在の状況に近い条件で解析した結果を選択し、さらに所望の室内環境を実現する吹き出し条件を求めて制御する。

三菱電機、気流や温度分布を予測して快適な室内環境を実現する「ビル向け快適気流制御技術」を開発
気流制御技術の効果(室内平面の風速分布)
これにより、複数の室内機の実環境に適応した気流制御が可能になった。気流解析により複雑な気流・温度分布を予測できるため、足元や障害物の影になるエリアも考慮し、室内全体が最も快適となるように風量・風向を制御する。上図の右側に示す例では、斜め吹き出しとすることで気流同士の衝突を避けつつ、部屋全体で流れを形成し部屋の隅まで気流を届けることができる。

三菱電機のZEB関連技術実証棟「SUSTIE」での暖房試験において、窓からの冷気で足元温度が上がりにくい窓際エリアの上下温度差(床上0.1mと床上1.7m)の改善効果を確認した結果、上下温度差が3℃以上となる時間帯を現行制御の163分から3分に短縮することができた。

気流を可視化するソフトウエア

快適性に配慮した空間を実現するために、室内環境の可視化が求められている。その一つの手段である気流解析は、人手による解析用のモデル構築に手間を要し、かつ条件設定などの解析に関する専門知識を持つ人員数に限りがあるため、多くの案件に対応することが困難だった。

今回開発したソフトウエアは、従来のモデル作成作業を省力化し、条件設定から結果表示までの作業が容易で、結果を直感的に分かりやすく可視化して表示する。BIM(※1)データから自動的に部屋の形状や室内機、給排気口の位置情報を収集し、気流解析に必要な3次元の室内モデルを自動で構築する。

また、什器の追加、室内機や給排気口の位置変更を画面上で簡単に実施でき、当社製の空調機や換気装置の型番もデータベースから選択して入力できる。解析結果は2つのパターンを比較表示でき、気流の流れがアニメーションで表示されると同時に、温度分布、CO2濃度、給気口から流入した空気の到達時間のいずれかを値に応じて色付けするコンター図(※2)で表示できる。

例えば、給排気口の配置を検討する場合、このソフトウエアを使用すると、窓側に給気吹き出し口と廊下側に排気吸い込み口を配置した下図の給排気口配置パターン1に比べて、中央部分に給気吹き出し口を追加し、窓側と廊下側に排気吸い込み口を分散配置した給排気口配置パターン2の方が、室内全体に吹き出し口から取り入れた空気がいきわたることがわかる。

三菱電機、気流や温度分布を予測して快適な室内環境を実現する「ビル向け快適気流制御技術」を開発
気流を可視化するソフトウエアのイメージ
これにより、気流解析に関する専門知識がなくても容易に設定ができ、室内機の風量や台数、配置といったシステムおよび機種によって異なる性能の違いを室内環境の差異としてわかりやすく可視化することで、ソリューション提案の支援を行うソフトウエアとして活用することができる。今後、このソフトウエアを活用して、ビルオーナーや設計事務所に適切な室内環境の実現に向けた提案を実施していくとのこと。

三菱電機は今後、さらなる効果検証のために今回の実証実験とは異なる条件でも評価を行い、2024年度以降の実用化に向けて開発を進めるとしている。

※1 BIM(Building Information Modeling):建物のライフサイクルに必要な情報を一元管理・活用する手法。
※2 コンター図:圧力や温度のようなスカラー変数の空間分布において、同一値の点を結び、値に応じて色付けした図。