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ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー

清水建設は、3つの柱で構成された中期デジタル戦略2020「Shimz デジタルゼネコン」を軸に、デジタルデータを活用した施工の管理やロボット化・自動化、都市・建物のデジタルツイン構築や社内業務を支援するデジタル化基盤構築など、ものづくりにおけるデジタル化を加速させている。

そこで本稿では、中期デジタル戦略2020の具体的な内容をはじめ、デジタル戦略を実現するために必要な人材や組織体制などについて、清水建設株式会社 デジタル戦略推進室 デジタル戦略推進室長 伊藤健司氏にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

3つの柱を軸に、ものづくりにおけるデジタル化を促進する

中期デジタル戦略2020「Shimz デジタルゼネコン」では、「ものづくりをデジタルで」「デジタルな空間・サービスを提供」「ものづくりを支えるデジタル」の3つの柱となるデジタル化コンセプトが策定されている。

1つ目の柱である「ものづくりをデジタルで」では、建築事業と土木事業という異なる事業領域のコンセプトを統一し、プロジェクトの上流から下流の運用まで一貫したデータ連携体制の構築を目指している。

建築であれば、設計の企画段階でのシミュレーションを行うためのコンピュテーショナルデザイン「Shimz DDE」の活用や、建築物に関するデータを工事が完成するまで連携する「Shimz One BIM」に加え、施工現場において施工管理のデジタル化だけでなく、ロボットや3Dプリンターを活用する「Shimz Smart Site」によるデジタル化施工を推進している。

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
建築における企画から運用までの、ものづくりのデジタル化を表した概要図

土木であれば、3次元モデルを活用して計画から施工・施設運用までデジタル管理を行うCIM(Construction Information Modeling/Management)を連動させた、生産システムの構築などを行っている。

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
土木における計画から運用までの、ものづくりのデジタル化を表した概要図

建築と土木は、やり方や担当者、必要とされる技術も異なるため、各事業に合わせたデジタル活用が必要となる。

しかし、「上流から下流までものづくりをデジタルで行う」という、基本的なコンセプトを統一したからこそ、これが実現できるのだと伊藤氏は述べる。

また、こうした建築物に関するデータに、センサデータなどの様々なリアルデータを掛け合わせることで、2つ目の柱である「デジタルな空間・サービスを提供」を実現していくのだという。

具体的には、様々なセンサデータやデバイスのデータを連携させる、清水建設が提供する建物OSである「DX-Core」や、総合ビル管理システムの「BECSS」などを活用して、運営管理の効率化や、資産価値の向上を実現していくというものだ。

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
都市・建物のデジタルツインを活用し、新たなデジタルサービスの提供を実現する。

こうしたデジタル空間やサービスの提供を行うためには、建物が建った後のデータも必要となるが、通常は建設後のデータは発注者である顧客のものであるという考え方が一般的だ。

しかし清水建設では、1980年代よりビル管理システム「BECSS」を自社開発・提供していたため、「BECSS」を中心にビル以外の設備データなどの連携も実現することができたのだという。

伊藤氏は、「BECSSの導入は、弊社が建物を受注した際に提案を行うことが多かったのですが、そこにDX-Coreというソフトウェアプラットフォームを掛け合わせることで、他社の施工物件にも提案できる仕組みを構築することができました。

さらに一部のデータをクラウドに上げることによって、同一のお客様の複数の建物の運用情報を管理したり、同一地域の複数の施設の運用情報を管理したりといったことが可能になりました。

また、建物周辺の交通や人流といったリアルタイムデータを掛け合わせることで、スマートシティの実現にも寄与できると考えています。」と、これまで構築してきた仕組みを発展させ、新たな価値創造を行っているのだと語った。

そして3つ目の柱である「ものづくりを支える業務のデジタル化」では、セキュリティも含めた安全を担保しながら、デジタル環境のインフラ整備や、データマネジメント基盤、業務システム基盤を構成し、社内の業務を支援していく。

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
ものづくりのデジタル化を支える社内業務も、デジタルを活用して環境を整えている。

これに対し伊藤氏は、「こうした業務の効率化に関しても、個別の部門が独自に実行するのではなく、全社として構築しています。

デジタルを取り入れることによるメリットを熟考し、いかに人の仕事とITを融合させ、業務の効率化や新しい事業創出を実現してくかという点に注力しています。」と語った。

3つの柱を実現するための人材像とは

この3つの柱の中で、これまでは特に「ものづくりを支える業務のデジタル化」を中心に進めてきたが、新型コロナウィルスの影響やデジタル化の進展により、他の2つの柱の重要度が増してきていると伊藤氏は語る。

「建築の現場に人が集まりものづくりをするということが、以前のようにはできなくなりました。そうした中で、いかにデジタルを活用してものづくりを行っていくかということや、デジタルを活用した新たな価値提供が必要になってきています。

これらを実現しようとすると、デジタルの知識だけではなく、現場業務の知識やお客様のニーズ、お客様の施設に訪れる利用者についてなど、建物にまつわる幅広い知識が求められます。そうした人財の育成や採用に今、力を入れています。」と、清水建設に必要な人材像について触れた。

そのために必要なのが、デジタル人材の位置付けや人材配置、社内部門間や社外との人材交流や採用・育成なのだという。

デジタル人材の位置付けは、「一般従業員」に対して「デジタル活用人財」「デジタル推進人財」「高度デジタル人財」とし、各部門に配置される。

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
4つの人財の位置づけを表した図

一般従業員に対しては、日常業務の中で最低限必要なICTを活用できるよう、底上げ教育が実施される。

一方、デジタル活用人財は、一般部門の中でも積極的にデジタルを活用し、業務の効率化を図るべく実行していく人材だ。

更に、デジタル推進人財は、各部門の中でのデジタル推進や、デジタル戦略推進室といった高度デジタル人財が策定したデジタル施策を推進していく役割がある。

そして高度デジタル人財は、清水建設のデジタル化を牽引すべく、「デジタル戦略推進室」「事業部門」「技術研究・技術開発部門」と3つのカテゴリーに配置され、デジタル技術を駆使して新たな価値を創出する人材である。

デジタル戦略推進室は、全社のデジタル戦略の策定やデジタル化の推進役だ。

それに対して事業部門の高度デジタル人財は、デジタルを活用した事業創出や、デジタルを自らの事業の中で活用するための事業戦略を策定し、デジタル戦略推進室と連携・並走していく役割の人材だ。

最後の技術研究・技術開発部門の高度デジタル人財は、ある領域の最先端技術に特化した専門性を持った人材で、その技術PoCを実施し、活用を提案していく。

こうした人材がうまく機能するよう、人材配置には工夫が施されていると伊藤氏は語る。

例えば、清水建設の本業となる建設事業部門と技術開発部門では、各部門の高度デジタル人材が積極的にデジタル化の活動を行っている。一方、非建設事業や内勤管理部門では、デジタル戦略推進室がサポートしながら日常業務のデジタル化を推進している。(下図上部)

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
社内のデジタル人材の配置と、社外との交流を表した図

また、社内で賄えない知識や経験、人材に関しては、採用や外部パートナーとの連携・交流により、組織体制を強化しているのだという。(上図下部)

経営戦略に落とし込まれた人材の採用と育成

次に、こうした人材の採用や育成について伺った。

高度デジタル人財の採用は、デジタル戦略推進室の人材、ENG・設計・設備系という事業系人材、技術開発系人材という3つの領域で実施されている。

高度デジタル人財の採用は経営戦略の一つとして組み込まれ、採用枠が確保されているのだと伊藤氏は言う。

「全社としてデジタルの重要性は増しており、採用枠も年々増えています。また、キャリア採用比率や年齢構成なども考慮しながら、戦略的に採用を進めています。」(伊藤氏)

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
高度デジタル人財採用における、年別の採用枠と構成比率を表した図

また、デジタル戦略推進室の教育に関しては、若年層・中堅層別に、社内の業務のデジタル化を進め、業務の効率化を実現するために、ICTスキル教育だけでなく、プレゼンテーションやロジカルシンキングなどのヒューマンスキル教育なども織り込んだ、独自の教育カリキュラムが実施されている。

高度デジタル人財以外の採用は従来の手法で行われ、教育や育成に力を入れていると伊藤氏は述べる。

一般従業員向けの教育は、新入社員向けの情報系基礎教育と、全社員向け初級情報系教育が実施される。

例えば、業務で活用されている機器やツール、ネットワークといった基礎知識から、そのために必要なセキュリティなど、体系的にICT活用について学べる構成になっているのだという。

デジタル活用人財とデジタル推進人財に関しては、デジタル戦略推進室や部門での新規採用活動に加え、担当業務内容に合わせた中級の情報系教育が実施されており、上級の情報系教育の検討・準備も進んでいる。

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
各人材に対する採用や育成方針が描かれた図

また、人材の交流という意味で、デジタル戦略推進室で採用された人材が各部門にローテーションで配属されるケースもあるのだという。

これに対し伊藤氏は、「デジタルの知識を持ったデジタル戦略推進室の人財が、ローテーションで一定期間各部門へ配属され、デジタルによる課題解決を行うとともに、業務知識を持ち帰るという循環を生み出しています。

また、今後は上級の情報系教育の一つとして、各部門の課題を持っている人財を、デジタル戦略推進室に配属し、課題解決のための短期研修を実施して各部門に戻っていくという取り組みも実施していこうと考えています。」と、社内での人材交流を行いながら教育していく方針について語った。

その他にも、建築・土木事業の中で、課題解決のためにITを活用した優秀な事例を、お互いに発表し共有する場である、「事例発表会」が実施されている。

「優秀な人財は、建築や土木の日常業務に対しても、発想力を活かして尖ったアイディアを創出しています。そうしたアイディアを水平展開することにより、参考にしながらも新たな独自性を発揮する人財が生まれています。」(伊藤氏)

DXを加速させる組織体制の変革

さらに、人材の採用や育成だけでなく、組織体制の変革も実施されている。

以前は社長の直下にCIOが配置されているという構成だったが、2019年4月、新たにデジタル戦略推進室が発足されている。

伊藤氏は、「当時のCIO兼副社長と、どのような組織体制にするべきか議論を重ねました。デジタル企画を行う複数の機能を社長直轄で別に構成するという案もありましたが、最終的には、施策に展開した際に従来の情報システム部門が関与しないと解決できないケースが多いということを加味して、ひとつの組織として構成しました。

企画機能は独立させ、経営・建築・技術・土木といった企画と、人事・法務を兼務で構成し、全社のデジタル化をどうするか議論できるようにしています。」と述べる。

ものづくりにおけるデジタル活用に必要な人材や組織体制とは ―清水建設 伊藤氏インタビュー
以前の組織体制から、2019年4月、2021年10月と、組織体制の変革を表した図

そして2021年10月には、ものづくりや周辺サービスの強化へ向け、新たにDX推進部が立ち上げられている。

DX推進部には、建築企画・設計・建築技術・土木技術・設備・エンジニアリングといった、技術系の人材が兼務で配属されている。

また、デジタル戦略推進室のデジタル化企画の機能も見直され、採用と全社員教育、室内教育の機能を総合的にコントロールできるように統合されている。

このように、全体的な戦略へ向けた施策を構築し、その施策を実現するための採用と教育、組織体制を統合的に考え、構築しているのだと伊藤氏は述べた。

デジタルを活用し、時代を超えて価値創造を行う

最後に、今後必要とするデジタル人材について伺った。

伊藤氏は、必ずしも専門技術に長けた人材が、事業会社におけるICT・デジタル化推進部門に必要ではないと語る。

専門性を追求してしまうと、時代が変化したときに企業として必要でなくなってしまう可能性が生まれるからだ。そうなると人材にとっても企業にとっても、良い結果にはならないだろう。

専門的な知識や人材は、その都度外部連携を行うという方針を取る方が建設的だと言う。現に清水建設では、外部の専門家や人材、大学との連携を積極的に行っている。

社内の人材としては、時代が変わっても本質を理解し、企業の戦略を立てて実施できる人材が必要であると述べる。

そのため清水建設では、新卒で入社した社員は、半年間建築現場での業務を行うという。その後少なくとも2つの事業部門を経験し、業務知識とIT知識への学びを深めていく。

伊藤氏は、「適切な戦略を立てて遂行していくには、弊社の業務知識を理解している必要があります。業務部門の垣根を超え、デジタル化の提案が積極的にできる人財を採用し、育成していきたいと考えています。

デジタル技術はあくまで手段ですので、技術に偏った発想ではなく、技術の価値と企業の方向性を理解した上で価値創造できる人財を求めています。」と、社内に必要な人材像について語った。

清水建設ではこんな人材を募集中

2022年5月16日時点での募集要項です。詳細な最新の情報はコチラからご確認ください。

企業名

清水建設株式会社(SHIMIZU CORPORATION)

募集職種

①DXプロデューサー
②社内システムエンジニア(プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャー)

仕事内容

①DX推進(建設現場および事業部門とともにDXを推進する)

  • DX関連ビジネスに関する調査、検討、トライアル及び建設/非建設事業に関わるDX業務支援
  • デジタル活用事例の社内情報共有及び社外へのアピール

②シミズグループのデジタル戦略立案・推進と社内システム開発・ITインフラ構築・維持運用

  • シミズグループのデジタル戦略・企画を立案し推進する
  • 社内外のステークホルダーと連携してのシステム開発やITインフラ構築のプロジェクトマネジメント(中期的なシステム構想、システム化計画、要件定義、設計、開発、運用、管理)
  • PC、タブレット、スマートフォン等のIT資産の調達から管理及びセキュリティ対策・運用

求める人材像

①②の共通特性

  • 主体性、行動力、論理的思考力、コミュニケーション力、向上心、好奇心、建設業への関心、明るく元気な方

①DXプロデューサー

  • 先端技術に関する情報を取集する「探求心」を持ち、従来の手法にはとらわれない「アイディア」を考え、「挑戦的」なプロジェクトを遂行できる人

②社内システムエンジニア(プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャー)

  • 柔軟な思考と旺盛な好奇心・チャレンジ精神を持つとともに、社内外の関係者を粘り強く折衝・調整する力を有し、目的・目標の達成に向けた強い意志を持つ人

応募資格

大学 学部卒、大学院修了

資格要件

  • プロジェクトリーダーまたはプロジェクトマネージャーの経験がある方
  • 情報処理技術者上級資格または同等の資格を有する方

雇用形態

正社員(グローバル職)

勤務時間

8:30~17:10(所定労働時間:7時間40分)

給与

年収:500万円~800万円(賞与含む。時間外手当、通勤手当は別途支給)

勤務地

本社:東京都中央区京橋2-16-1
(基本本社勤務。グローバル職採用のため転勤の可能性あり。)

休日・休暇

完全週休2日、祝日、年末年始、夏季休暇、慶弔休暇、リフレッシュ休暇、年次休暇(11~20日、半日単位での取得も可)、ボランティア休暇、パタニティ休業 他
※年次休暇については入社時期により異なる

募集期間

通年

採用予定人数

2〜3名/年

応募者の登録フォーム

清水建設採用ページに遷移します。現在の募集内容については、こちらのページから確認し、ご応募ください。

 

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