全社員がDXを自分ごと化し、不動産業のイノベーションに取り組む ―三井不動産 角田氏・丹羽氏インタビュー

三井不動産は、2022年4月4日、全社員を対象にしたDX研修「DxU(ディー・バイ・ユー)」を発表した。

これまでにも、2020年のDX本部立ち上げや、デジタルを活用した新たなサービスの展開など、不動産を「モノ」としてではなく、ハードとソフトを掛け合わせて「サービス」として提供する、「Real Estate as a Service」の実現へ向けた取り組みを加速させている。

そこで本稿では、三井不動産が取り組んでいるDXの取り組みや「DxU」の内容、今後の展望などについて、三井不動産株式会社 人事部 人材開発グループ 主事 角田佑介氏と、DX本部 企画グループ 丹羽七海氏にお話を伺った。(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

「Real Estate as a Service」の実現へ向けたVISIONや取り組み

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉): 御社にとってのDXの位置付けや、DXの取り組みについて教えてください。

全社員がDXを自分ごと化し、不動産業のイノベーションに取り組む ―三井不動産 氏インタビュー
三井不動産 DX本部 企画グループ 丹羽七海氏

三井不動産 丹羽七海氏(以下、丹羽): 今年の4月に発表した、DXの推進状況や成果、推進事例などをまとめた「DX白書2022」でも明示しておりますが、当社では「Real Estate as a Service」というコンセプトを標榜しています。

これは、不動産を「モノ」としてだけでなく、「働く」「住まう」「楽しむ」といった、⾏動を起点にした「サービス」として提供するというコンセプトで、その実現に向けて最も重要な手段がDXであると位置付けています。

具体的には、大きく2つの目的でDXを推進しています。

1つは、お客様の価値提供のためのDXです。「働きやすい」「暮らしやすい」「楽しい」などの様々な場面でサービス提供をし、お客様の満足度向上と社会課題解決を目指すDX活用です。

2つ目は、ビジネスプロセスの効率化のためのDXです。従業員の生産性を向上させる働き方改革と、サービス向上によるお客様満足度向上を目指すDX活用です。

具体的なサービス内容としては、2017年に始動した三井ショッピングパーク公式通販サイト「&mall(アンドモール)」や多拠点型シェアオフィスの「ワークスタイリング」をはじめとした、不動産の枠組みに捉われない新たなサービスを展開しています。

全社員がDXを自分ごと化し、不動産業のイノベーションに取り組む ―三井不動産 氏インタビュー
三井不動産のDXプロジェクトや、イノベーション体制強化施策のまとめ(「DX白書2022」6ページより抜粋)

小泉: 多岐にわたるサービスを展開されていますが、全体的な方向性をトップダウンで行っているのか、各事業部から発案されていくのか、事業の推進はどのように行っているのでしょうか。

丹羽: 具体的なサービスのアイデアは、商業施設本部やビルディング本部、各街づくり推進部といった事業部門発のものが多いのですが、全体としての方針も明確に打ち出されています。

グループ長期経営方針の「VISION 2025」では、「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」を掲げており、それを実現すべくDX推進における注力テーマを「DX VISION 2025」にまとめ、「事業変革」と「働き方改革」、そしてそれを支える「推進基盤」という3つのコンセプトと重点ポイントを整理しています。

全社員がDXを自分ごと化し、不動産業のイノベーションに取り組む ―三井不動産 氏インタビュー
DX VISION 2025(「DX白書2022」4ページより抜粋)

小泉: 会社全体としての大きなコンセプトのもとで、各事業部門からサービスが発案されているのですね。

しかし、デジタルを活用した発案を行うには、デジタルの知識が必要になってくると思うのですが、御社の事業部の中にもともとデジタル人材が在籍されていたということでしょうか。

丹羽: 現状DXプロジェクトは事業部門にDX本部が伴走しながら進めていますが、今後は事業部の中にもデジタルの知識を持った人材を増やしていきたいと考えています。

三井不動産 角田佑介氏(以下、角田): 事業部門からの発案をより活発にし、円滑にDXプロジェクトを推進していくためには、全社員がデジタルの基礎知識を持っている必要があります。

そこで、全社員向けのDX研修「DxU」が開始されたという経緯があります。

全社員向けにするべきかどうかという議論はありましたが、特定の部署や人材のみへの研修にしてしまうと、自分ごととして捉えられないと考えました。

全社員を対象にすることで、全体のマインドセットを変えていくという方針があります。

また、弊社ではジョブローテンションも活発です。そのため、デジタル技術や知識を持った人材も、様々な事業部に異動しながら業務を行い、人材の交流を図っています。

全社員がDXを自分ごと化し、不動産業のイノベーションに取り組む ―三井不動産 氏インタビュー
三井不動産 人事部 人材開発グループ 主事 角田佑介氏

小泉: 現状では事業部門にDX本部が伴走しながらプロジェクトを進めていきつつ、研修やジョブローテーションによる社内変革も並行して実施されているのですね。

6つの重点研修ポイントを4つのステップで習得していく「DxU」

小泉: それでは、「DxU」の研修内容について教えてください。

角田: 「DxU」では、三井不動産として重要なDXのポイントを「重点研修ポイント」として6つ整理し、ビギナーからマスターの4つのステップで研修を進めていきます。

全社員がDXを自分ごと化し、不動産業のイノベーションに取り組む ―三井不動産 氏インタビュー
「DxU」のロードマップ

全社員必修のステップ1では、会社として本気でDXに取り組んでいるということを示すために、DXの重要性を理解してもらう研修動画を配信しました。

ステップ1でDXを自分ごととして捉えてもらった後、ステップ2~3では、E-Learningコンテンツ「Udemy」のコースや当社独自のIT研修を学習してもらう仕組みです。

「Udemy」の中で、人事部とDX本部が選んだコースを、ステップ2が基礎編、ステップ3が応用編として、ラーニングパスを作成しています。

ステップ2は原則全社員が2022年度末までに修了することを目標として掲げており、より専門的な内容に踏み込むステップ3は、2022年度末までに300人程度の修了を目標としています。

小泉: その300人は選抜された人材ということでしょうか。

角田: ステップ3に関しては、自己申告制で、自分のペースで受講することができます。弊社には、正社員以外にも準社員と呼ばれる契約社員の方々が在籍していますが、そうした人材にも門を広げ、弊社で働いている方は誰でも無料で受講することができます。

また、受講内容に関しても、6つの重点研修ポイントに紐づくコース設計をしており、所属している事業や関心のあるトピックに関するコースを選択できます。

例えば、商業施設本部に所属しているお客様との接点が多い方であれば、顧客志向のプログラムが多く学べるコースを重点的に学ぶ、といったことが可能です。

小泉: ステップ4のマスターはどのような方が受けるのでしょうか。

角田: ステップ4に関しては、「DxU」が開始された中で、より効果的なプログラムは何かということを検討している段階です。

ステップ1〜3はインプット中心ですので、ステップ4では業務に活かせるようなアウトプットを中心に実施できればと考えています。

例えば、既に弊社で実施されている事業提案制度「MAG!C」やデータ活用案件創造プログラム「データブートキャンプ」との連携、国内外含めた教育機関などの外部プログラムへの派遣など、幅広く検討しています。

受講する人材に関しては、ステップ3のスペシャリストを修了した方の中から、募集を募ったり人事からの指名をしたりというイメージをしています。

幅広いフィールドでデジタルを活用する可能性

小泉: 今後、三井不動産に応募したいと考えている読者へのメッセージをお願いします。

丹羽: 当社では、2017年にIT技術職掌を新設して以来、PM、クラウド系・AI/IoT系・セキュリティ系エンジニア、データサイエンティストなど、様々な専門スキルを持つ人材を約60名採用し、現在も積極的にプロフェッショナル人材を採用しております。

事業領域が幅広いため、特定の分野に限らずに様々な事業やプロジェクトに関わることができ、「IT×事業」で非常に幅広いキャリアの可能性があるのは当社の魅力のひとつだと考えています。

また、当社の事業は「働く」「住まう」「楽しむ」といった身近な領域にもあり、お客様の喜ぶ姿をイメージしながら仕事をできることも、大きなやりがいになるのではないでしょうか。

全社員がDXを自分ごと化し、不動産業のイノベーションに取り組む ―三井不動産 氏インタビュー
DX本部の体制(「DX白書2022」10ページより抜粋)

小泉: それでは最後に、今後の展望について教えてください。

丹羽: デジタル人材育成の文脈においては、やはり全社員がDXを自分ごと化していくことが最も大切だと考えています。

不動産業をイノベーションし、「Real Estate as a Service」を実現していくために、DXは重要な手段となっています。そのため、DXはITに明るい特定の人材だけで進めていくものではなく、全員が主体的に取り組んでいくべきものだという意識を社員の皆さんに持っていただきたいです。

そのために、「DxU」をはじめとした取り組みにより、全社員の知識・スキルの底上げを実現していこうと考えています。

角田: これからは、OJT(職場内訓練)だけでは能力開発が補完しきれない時代だと考えています。

例えば弊社では、「街」という大きなフィールドで事業展開していく中で、デジタル知識をはじめとする不動産業界外の様々な知識が必要となってきます。

ですから、今回の全社DX研修に限らず、自己啓発の重要性を伝えるべく、今後も全社を巻き込んで取り組んでいきたいです。

小泉: 本日は貴重なお話をありがとうございました。

三井不動産ではこんな人材を募集中

2022年6月6日時点での募集要項です。詳細な最新の情報はコチラからご確認ください。

企業名

三井不動産株式会社

募集要件

次の2点を目安とする。

  1. 四年制大学卒または大学院卒の方
  2. 以下いずれかの経験・職歴をお持ちの方
  • IT実務経験4年以上の方
  • IT企業でインフラ(ネットワーク・OS・パブリッククラウド等)、セキュリティ業務を経験された方
  • IT企業もしくはITコンサルティング企業で、システム開発(業務システム・顧客系システム等)におけるプロジェクトマネジメント業務を経験された方
  • IT企業、事業会社のIT部門もしくは事業会社でデジタルマーケティング・IoT・データ分析・AI等先進技術業務を経験された方

給与

概算 年収750万円~1,400万円(基礎給与・賞与(2回)を含む)(時間外勤務手当・諸手当別途)

諸手当

借家手当、家族手当、通勤手当(全額支給)など

勤務地

本社または全国各地・海外

勤務時間

スーパーフレックス制度(※コアタイム無し)
完全週休2日制(土曜・日曜・祝日)

休暇

有給休暇、年末年始休暇、結婚休暇など

福利厚生

カフェテリアプラン、住宅融資制度、社会保険制度、育児休業制度など

その他

グループ会社への出向を命ずる可能性あり。

応募者の登録フォーム

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