一般的にAIチップでは、判断する基準を設ける「学習」と、学習した情報から処理を判断する「推論」を行う。このとき「学習」は、膨大なデータを取り込みデータベース化し、随時更新する必要があるため、学習を行うAIチップには、高い演算能力が求められると同時に消費電力も大きくなる。
そのため、エッジコンピュータ・エンドポイント向けの省電力かつ現場学習できるAIチップの開発は困難であった。
そうした中、ローム株式会社は、IoT分野のエッジコンピュータ・エンドポイントに向けて、AIによりモーターやセンサなどを搭載する電子機器の故障予兆予知を、超低消費電力かつリアルタイムで実現できるオンデバイス学習AIチップを開発した。
今回開発された試作オンデバイス学習AIチップは、AIのベースに慶應義塾大学の松谷教授が開発した「オンデバイス学習アルゴリズム(3層ニューラルネットワークのAI回路)」を採用している。
そのAI回路を、ロームが商用化に向けて500万ゲートから2万ゲートに0.4%まで小型化し、独自のAIアクセラレータ「AxlCORE-ODL」として再構築。8-bitマイクロプロセッサ「tinyMicon MatisseCORE」でAIアクセラレータの演算制御を行うことで、数10mWの超低消費電力でAIの学習・推論を可能にしている。
これにより、クラウドサーバとの連携や事前のAI学習なしに、機器が設置された現場で未知の入力データ・パターン(例:加速度、電流、照度、音声など)に対して、「いつもと違う」異常度を数値化して出力することができる。

なお、AIチップ評価用に、マイコンボード「Arduino」用拡張基板を装着できる(Arduino互換の端子を備える)評価ボードを準備している。(トップ画)
評価ボード上に無線通信モジュール(Wi-FiとBluetooth)や64kbit EEPROM(メモリ)を実装しており、この評価ボードにセンサなどのユニットを接続して、センサをモニター対象に取り付けることで、AIチップの効果をディスプレイ上で確認することができる。この評価ボードは、ロームの営業から貸し出されている。
今後ロームは、このAIチップのAIアクセラレータを、モーターやセンサの故障予知のためにIC製品へ搭載することを予定。2023年度に製品化着手、2024年度に製品として量産予定だ。
また、2022年10月に開催される「イノベーション・ジャパン2022」「CEATEC 2022」にて、松谷教授の研究成果としても紹介される予定だという。
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