GEインタビュー、根幹を支えるプラットフォームPredixの核心にせまる(1/2)

世界の成功事例と呼ばれる、GEのIoT。その根幹を支えるプラットフォームPredixの核心にせまるべく、GEデジタル インダストリアル インターネット推進本部長 新野昭夫氏に話を伺った。

実際に現場の話を伺うにつれて、単なるシステムの導入ということではなく、どういう風にプロジェクトを進めていくべきか、ということまでが明確になった。

GEのプラットフォーム 「Predix(プレディックス)」

新野: まずはPredixについてご説明する前に、私どもの取り組みについてご説明します。IoT化を進めていくために、組織を超えて情報共有を行い、データも様々な部門がそれぞれの目的で取っているものをいったんテーブルに挙げて、「こういうデータが取れているのでしたら、こういった解決方法があります」といったことをわれわれのデータサイエンティストなどがスキルを駆使してご提案するということを一つ一つ行っています。

 
─コンサルティングをされているわけですね。

新野: それがコンサルティングかというと、それはちょっと違っています。われわれはコンサル会社ではないので、「会社のあるべき姿」や「ビッグピクチャー」などを提示するのではなく、お客さま自身に課題を自分たちで見つけていただいて、自分たちで解決策も見つけてもらう。そのためのサポートとしてデータサイエンティストを参加させ、われわれGEが昔から行っているワークアウトと言われるファシリテーションを行い、ユーザーエクスペリエンスデザイナーも参加します。

日々同じ業務ばかりやっていると視野がどうしても狭くなってしまうので、こうしたセッションを通じてどんどん柔軟な思考をしていただいて「それだったらこういう解決方法もあるね」といったことを、お客さまから挙げてもらうように時間をかけてやります。お客さま自身が課題を見つけて、それに対して「こういうシステムがあったら楽になる」とか、「便利になる」ということを現場の方にもマネージャーの方にもホワイトボードに書いていただく。

そこから優先順位をつけて「こういうデータがあるのでしたらこういう技術でこういうシステムでできますよ」というところを説明すると、「じゃあやりたいな」となってくるので、それが終わると、もうある意味システムの仕様ができているようなものです。そこまでいけばほとんど成功で、アジャイルで早いサイクルでまわしてプロトタイプを使っていただいて、ご意見をもとに直していく。

そうすると、皆さんが「これがあったらいいな」というシステムができあがりますので、当然使ってくれるわけです。

─それはヒットしますね。

GEインタビュー、根幹を支えるプラットフォームPredixの核心にせまる(1/2)
左:GEデジタル インダストリアル インターネット推進本部長 新野昭夫氏/右:IoTNEWS代表 小泉耕二

 

「IoTがブームで終わってしまうのか、良い方向へ進むのか」の別れ道

新野: 今までのシステムの作り方というのは、情報システム部門が現場の意見を集約して、ベンダーさんがそこで1年ぐらいかけて作って「さあ、使いなさい」という流れが多かったと思います。現場の意見を集約するところまではいいのですけれど、ベンダーと会話していく中で、予算の関係で様々な機能を削ったりするので、最終的に決まったものが必ずしも現場に沿ったものになる保証はありません。

そこのギャップを埋めるやり方をしないと、IoTといってもあまり使っていただけないものを作ってしまう可能性があります。そこが、「IoTがブームで終わってしまうか、IoTによって会社や社会がそれによって良くなるのか」の別れ道かという気がしています。

 
─産業系のIoTは今おっしゃっているような形で動いていて、御社のサービスを利用する企業は「散々やってきたけど、ここからどうしよう?」という悩みを抱えられているのかなと思います。御社はそういったファシリテートするノウハウはどのように社内に蓄積されていますか?

新野: もともとワークアウトという、基本的にはブレインストーミングを系統立てて、短期間に関係者を集めてサッとまとめるという手法で、ジャック・ウェルチが会長の時にやっていたようなものなので、GEの社員であれば自然とそういうことが身についています。

しかし、お客さま主体であるときには、なかなか方法論がうまく流れないようなときに、それをサポートしてあげるようなファシリテーションの仕方があります。それに加えて先ほどのようなUXデザイン。ユーザーエクスペリエンスの人間がお客さまの「このシステムだったらいいな」というようなものを引きだしていきます。

後半の方で課題が見えて、こういうふうなものが欲しい、となったときに、「じゃあどういうデータを取っているのだろう?」といったところから始まって、「こういうデータがあったらこう使えますよ」とユーザーエクスペリエンスとファシリテーションとデータサイエンティストがそのワークアウトに参加しているのが大きいと思います。

 
─今までだと分断されていて、どこかの会議でまとまった内容をレファレンスしながら違う人たちがまた話し合うという流れが多く、一緒に話し合わないことが多かったようです。

新野: そう聞いています。われわれは5年間色々試行錯誤しながらこういう形、組み合わせ、プロセスでIoTをやっていかないとなかなか難しいというのを作ってきました。自然に私もお客さまのところではそういうプロセスでやっていますが、他のベンダーさんに聞くと、「いや、このステージではこの部門にユーザーエクスペリエンスデザイナーがいるので」とか、「ここまで来たら、今度データサイエンティストが投入されます」などと会議が分断されているようです。

GEインタビュー、根幹を支えるプラットフォームPredixの核心にせまる(1/2)
IoTNEWS代表 小泉耕二

 
─でも横のことを気にしながらやらないと、取っているデータ自体がそもそもどういう意味を持つのかわからない難しいデータが多いと感じていて、産業機械から出てくるようなデータは、例えば「振動」というデータがあったときに、片方ある一面しか見ない人が振動とは何かを決めてしまうことによって違う見方が損なわれてしまう可能性があります。

新野: おっしゃる通りです。データは何かを目的にして皆さん取られているので、その目的のために使わないとあまり価値を生みませんが、そのデータを違った視点で見るところにデータサイエンティストのスキルがあります。

過去に、ある工場のラインにマシンがあって、このマシンが突然壊れることが課題だという話がありました。「どういうデータを取っていますか?」と聞くと、「保守部門はこういうデータ取っていますが、ラインの組み立ての人たちはこういうものを取っています」などと、様々な部門からその機械まわりで取っているデータがありました。

それで「この機械の稼働状態をちょっとトラックする必要があるよね」と、そのために機械が動いているとき、電流などをセンサーで感知して「そうしたら稼働状態のデータが取れるよね」という話になってきました。しかしデータサイエンティストが言ったのは、「そんなことをすると追加でセンサーをつけることでコストもかかるし、その分もっといい方法があるかも知れないじゃないか」と提言をして結局行き着いたのは、朝、作業員が来てその機械にスイッチを入れると機械が稼動することから、作業員の出退勤状況を確認すればよい、ということでした。

その工場では、作業される方がタイムカードをガチャンと入れて、出ていく。そこまでリアルタイム性は必要ないので、それが要するに機械のスイッチオンオフとほぼニアリーということで機械の稼働状況が把握できたのです。

 
─30分ぐらいの誤差ですよね。

新野: はい。「それぐらいの誤差だったら、これは使える」と、データサイエンティストはデータを顕在化させます。ほとんど価値がない勤怠管理のためのデータだったものを逆に「IoT的にうまく有効活用しましょう」、というアイデアをどんどん出して、融合して、こういうデータがあったらこういうことができますというのが、成功するためのひとつのやり方かと思うのです。どうしてもこれを解決するときに、取れていないデータが欲しいというときにはつけざるを得ませんが、あくまでも最後の手段という考え方で臨んでいます。

 
─スタート時点でとにかく線でも引かないと、また機械からデータを取れないと言われると、なかなか始められません。

新野: そうですね。ただ、けっこうそういうお客さまは多いのです。将来何に使うかわからないから、とにかく全部にセンサーつけておく、というケースもあるのは事実ですが、でもそれが有効に使われるケースは多くないですね。データがむしろ負債になっていて、そのためのストレージの費用や、センサーの費用を考えると、必ずしも価値を生んでいないことになります。

 
-御社のガスタービンやジェットエンジンにセンサーをつけたという、有名なIoT事例の話になると、「うちはガスタービンを作ってない。GEと同じような結果は出ないのではないか」とおっしゃる方がいます。それについてはどうお感じですか。

新野: 確かにそういうイメージがあるかも知れませんが、われわれがリーチできていない、ミドルサイズ、スモールサイズの企業もニーズがあると思っています。われわれが作ってないマシンであっても、先ほどのデータサイエンティストなどが出向いていって、お客さまの課題を深掘りしていく中で解決できることもたくさんあります。例えば、LIXILさんのケースは全くセンサーもつけていませんが、工事事業者の工事計画の最適化というところにも使っています。

GEが作っているものは画像診断機器や航空機エンジンなどインフラ向け産業機器が多いのですけれども、それを作っている工場もグローバルに400以上あって、そういった工場のラインで様々なIoTを試しながら、それをお客さまにIoTのソリューションとして展開するということをやっています。「われわれはIoTに関してもっと広く技術提供できます、ソリューション提供できます」というスタンスです。

 
-なるほど。御社は生産過程そのものも改善されようとしています。その中でできることを模索しながら、どんどんノウハウ化していって、世界に広げようとしている印象を持っています。

新野: ええ。まさにおっしゃっていただいたように、われわれの最終製品をどういうふうなas a Service化するかというところを、もちろんジェットエンジンにやっていますし、そのジェットエンジンを作る工場で色々試行錯誤しながら持っているノウハウをいかにIoTのソリューションとして提供するかということもやっています。

GEインタビュー、根幹を支えるプラットフォームPredixの核心にせまる(1/2)
GEデジタル インダストリアル インターネット推進本部長 新野昭夫氏

 
-グローバルで課題の共有をしていますか?

新野: もちろんしています。様々なお客さまを手がけていく中で、ベストプラクティスなどが共有されます。

 
-アプローチがコンサルティングファームに似ていますね。

新野: いえ、コンサルティングファームはコンサルティングファームのバリューがあって、経営のコンサルテーションから現場までカバーされているので、ニーズは別物だと思っています。

われわれは最終的にソリューションを提供する、エグゼキューションのところまで実行するので、だからこそできることを小さくても積み上げていきます。最終的にはゴール設定はしますけれども、「こういうプロセスでやっていきましょう」ということを実行部隊が具現化していくので、そこはコンサルティングファームの業務とは違うところだと理解しています。

 
後半は、GEのPredix(プレディックス)活用事例と、IoTを成功させるポイント

Previous

ミツフジ、着衣型生体センサーなどのウェアラブル総合ブランド「hamon®」の販売を開始

STマイクロエレクトロニクス、IoT機器やウェアラブル機器の開発を加速させる、小型マルチセンサ・モジュール「SensorTile」を発表

Next