GEインタビュー「IoTを成功させるためには、早い段階での経営判断が重要」 (2/2)

GEデジタル インダストリアル インターネット推進本部長 新野昭夫氏へのインタビュー後半は、GEのPredix(プレディックス)活用事例と、IoTを成功させるポイントなどについて話を伺った。

・前編:GEインタビュー、根幹を支えるプラットフォームPredixの核心にせまる(1/2)

Predixがサポートしている範囲

-Predixがサポートしている範囲を教えてください。

新野: サポート範囲は広いですが、インダストリーにフォーカスしています。パブリッククラウドのようなコンシューマー向けはフォーカスしておりません。まだ完璧ではありませんが、インダストリーで要求されるような機能やパフォーマンスをPredix上で構築していくことができます。

 
-つまり実態としてはアプリケーションの塊みたいになっていて、ある程度そのノウハウの使い回しが効くような形になっているということでしょうか。

新野: おっしゃる通りです。共通化できるものはできるだけ共通のモジュールにして、Predixというプラットフォーム上でご提供しています。それはGEが開発したものもありますけれども、第三者が開発して載せることもできますので、スマホのApp Storeみたいなようなイメージで今それを充実させようとしているところです。

 
-そのカタログはどういう単位になるのでしょうか。

新野: 細かい単位になりますが、解析エンジンや、そのままだとノイズが乗って使えないデータのようなものを、きれいにするモジュール(クレンジング)などがあります。簡単なアプリを作ろうと思ったら、まず履歴データをデータベース、クラウドに持ってくるモジュールがあり、それを実際の設備から出てきたデータをそのデータと結びつけるようなモデリングをするモジュールもあります。それにある解析をさせて、その結果を見える化するためのビューを作るモジュールを組み合わせていくと、1つのアプリができるようなイメージです。

 
-実際に様々な実体験の中から生まれてきているモジュールで、汎用的に使えるように作り込まれているものが多いということでしょうか。

新野: そうですね。もともと、われわれの製造部門がそれぞれ個別にソフトウェア開発をおこない、同じサードパーティーのシミュレーション解析ソフトを使っていました。

しかし、そういったものをそれぞれのビジネスで独自にやるのではなく、Predixというプラットフォームを作ったので、その上で共通部品として作っていった方がコストも下がるし、結果的にそれを汎用的なものにしておけば、様々な使い回しが効きますよという発想です。よって、GEのノウハウが詰まったようなモジュールもあれば、サードパーティーのモジュールもあります。

 
-そうすると、GEの製造工場においてはほとんどPredixが使われているのですね。

新野: 徐々にですね。400以上ある工場の中で今年75工場を対象にして、来年もまたそれぐらいの規模を目指して、ということでどんどんスマート化、ブリリアント・ファクトリー化が進んでいますので、うまく効果が出たものを順次アプリ化して載せていきましょうということです。

GEインタビュー「IoTを成功させるためには、早い段階での経営判断が重要」 (2/2)
左:IoTNEWS代表 小泉耕二/右:GEデジタル インダストリアル インターネット推進本部長 新野昭夫氏

 

Predix 活用事例

 
-Predixが他社で利用された事例を教えてください。

新野: われわれは「APM」と言っていますが、アセット・パフォーマンス・マネジメントということで、東京電力の火力発電所の予兆診断や機器の最適化などをご提供するアグリーメントを結ばせていただいたところです。東京電力が火力発電所を運転・保守をされており、それの支援ツールというか、支援情報になるかなと思います。

GEインタビュー「IoTを成功させるためには、早い段階での経営判断が重要」 (2/2)

(東京電力の件は、GEジャパン コーポレート・コミュニケーション本部 ダイレクター社外広報担当 小池氏に話を伺った)

小池氏: 千葉県の富津火力発電所ではコンバインドサイクル発電設備の中のガスタービンや、発電機などにセンサーがついています。これらの機器の稼働状況をPredixのクラウドにいったん取り込んで、アセット・パフォーマンス・マネジメントという機器の最適化を図るようなアプリケーションが、この機械の最適な稼働状況を示してくれます。それを人が判断をするように見える化してくれる仕組みが、近日中に稼動予定です。先ほど新野が申し上げたように現場の課題を掘り下げて、ワークアウトでまとめました。

参考までに、さきほど申し上げたカタログというのは、predix.ioというPredix開発者向けのポータルサイトのカタログというところに入っていただくと、ずらずらと並んでいます。

そこには様々な会社の名前が入っているように、お客さまが実際開発したものもありますし、GEの社内カンパニーが作ったものもありますし、またPredixチームが作ったものもあります。また、アナリティクス用のアプリケーションもオープンになっています。Predix.ioは誰でもご覧いただけますし、APIも公開していますし、価格まで載っています。

 
-エンタープライズですと、私はERPやCRMのことに関連するような仕事をやったことがあるのですが、そういうことはされますか?

新野: そうですね。ERPなどの基幹系はそれを使われる方も皆さんオフィスにいて、それぞれの業務でインプット・アウトプットがあるので、パッケージ化されて共通で様々な企業に導入されていますね。しかしIoTとなると現場が含まれますので、やはりカスタマイズされた画面でないと使っていただけなくなってしまいます。

例えば、先日実施した現場の方と情報システムの方が出席されているワークアウトでは、情報システム部門の方はどうしてもコンサバティブなので、システムを作るときにGEのこういう技術を入れるとセキュリティがどうだとか、こういうデータは出せないとなることがあります。しかし、現場の方たちが「お前ら、このプロジェクトつぶす気か。ここでお前らが変われなかったら、もう口出しさせない」「邪魔するな」と言ってくれたのです。

 
-変な言い方かも知れないですけど、すごく人間味がありますよね。

新野: いやもう本当にウェットな世界です。IoTとなるとやっぱり現場のプロダクティビティをいかに上げるかですので、そこで働いている方のニーズを汲み取る作業は丁寧にやらないと失敗します。ある意味泥臭いところのプロセスが非常に大事かなと思っています。

 
- 非常に泥臭いという結論で良かったです。

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IoTNEWS代表 小泉耕二

 

IoTを成功させるには経営層のコミットが必要

新野: まさにアナログでウェットなのですけども、ひとつ申し上げないといけません。われわれはプロセスのことを「アウトカム・ベース・セリング」といって、お客さまのアウトカム、成果に寄与しなければやる意味がないと思っています。長年かけてGEデジタルが構築したアウトカム・ベース・セリングのプロセスの中にはかなり早い時期のトップのエンゲージメントといいますか、経営層の「やるぞ」という決断が非常に重要です。

日本式のボトムアップでいくと、この手のIoTは本当に成功するか、失敗するか、効果出るか、出ないかというのは、なかなかわかりません。ボトムアップですと、最後の決定権者が「ちゃんと費用対効果は出るのか?」と質問した瞬間に「出ます」とは言い切れないものなので、そこでダメになってしまうというケースはいくつも見てきています。

「これはどうなるかわからないけど、やるんだ」「この課題解決するためにはこういったこともやらなきゃいけないんだ」という経営層の決断がプロジェクトの最初の段階であって、それを検討するチームは現場の方を含んだチームの方が最終的にそのワークアウトまでやって、そのチェックポイントでその進捗をちゃんと経営層が確認して、次のステップに進んでいくメカニズムが働かないとなかなか難しいと思っているのです。

 
-そうだと思います。お言葉を返すようで恐縮なのですが、とはいえ、経営層が「これやったら良かろう」と思いつかない方もいます。一度部下に投げて、部下が企画書を書いて、「これだったらやってもいいかな」という時点で、御社がやってきて「これはもう決断しなきゃダメだ」と言って、決断するという流れになるのかと思っています。

新野: それでも全然いいです。様々な組み合わせがあって、必ずしもボトムアップがダメと言っているわけではなく、それが機能するようなケースも実際にありますし、そこはどの程度の課題に取り組むのかとか、ケースバイケースで全然違っています。ただ確率としてうまくいくのは、トップの方がコミットしてくださっているケースです。

 
-最後に今後の展開を教えてください。

新野: Predixという産業向けのIoTに特化したプラットフォームを、様々な産業の用途に使っていただきたい、というのがわれわれの目指しているところです。そのためにはエコシステムを広げていかなければいけません。日本ではまだまだこれからで、エコシステムを広げている途上です。英文になりますが、パートナー申し込みができるサイトもありますし、われわれも日々「いかがですか?」とお話をしています。プロジェクトを実行していただくようなシステムインテグレーター、ソフトウェア開発パートナー、それをカタログの上に載せていただくパートナーなど、様々なパートナーとエコシステムをどんどん広げていきたいと思っています。

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GEデジタル インダストリアル インターネット推進本部長 新野昭夫氏

 
-本日はありがとうございました。

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