ボッシュの2017年度戦略 レポート1

ボッシュ株式会社は2017年6月8日、東京の渋谷本社にて年次報告記者会見を行った。
今後ボッシュは、どのような方向性で商機を模索していくのか。本レポートではボッシュのそうした取り組みについて紹介していく。

ボッシュ 2017 年次記者会見 レポート:

  • ボッシュの2017年度戦略
  • ボッシュにおけるAIの研究開発と事業への活用
  • ボッシュのAIを活用したスマート農業向けのソリューション
  • ボッシュの2016年度の日本における第三者連結売上高は、約 2,670億円(約22億ユーロ)で前年とほぼ同い水準だった。同会見冒頭において、ボッシュ株式会社代表取締役のウド・ヴォルツ氏は、2016年度の業績報告で、日本の自動車メーカーに対する全世界での売上は前年比6%で増加し、2015年から引き続きプラス成長となったことを述べた。日本で、自動車のメガトレンドである「電動化」「自動化」「ネットワーク化ソリューション」の3分野で、既に量産プロジェクトを受注しているという。また、日本における2017年の第三者連結売上高は、3~5%増加する見通しだ。さらに、日本のボッシュ・グループの従業員数は2016年12月末時点で約6,600人だったが、2017年は従業員数が微増する見込みだという。

    ヴォルツ氏は、「2017年は、自動車向けインフォテインメントシステムや二輪車向け製品の需要増加が見込まれることから売上の増加が予測されており、すでに幸先の良いスタートを切ることができた」と述べ、さらにIoTによる事業領域の拡大についてもふれた。

    自動車分野


    ボッシュ株式会社 代表取締役 ウド・ヴォルツ氏

    ボッシュでは、自動車を異なるドメイン間の通信における中心的役割を担う位置づけとしている。

    電動化:電動化ソリューションが順調に拡大

    48Vハイブリッドシステム、日本の自動車メーカー向けに2019年量産予定

    48Vハイブリッドシステムは、高電圧のハイブリッドシステムよりも手頃なコストで燃費向上に貢献する、ボッシュは、日本の自動車メーカー向けから複数48V ハイブリッドシステムのプロジェクトを獲得し、2019年以降順次量産が開始される予定だという。

    パワートレイン事業拡大のための新組織設立

    48Vハイブリッドシステムは、さらなる電動化への効果的な架け橋だが、ボッシュが提供する電動化ソリューションは低電圧から高電圧のハイブリッドシステム、プラグインハイブリッド、電気自動車、燃料電池に至るまで多岐にわたる。2018年初頭からは、eモビリティに特化した事業部門と既存のガソリンシステム事業部とディーゼル システム事業部を統合させた「パワートレイン ソリューションズ事業部」を設立し、顧客の求めるパワートレインに関するすべての技術を、コンポーネントからモジュール、システム一体などあらゆる形で提供するという。また、燃料電池のシステムについては、2017年の初めに燃料電池システムに特化した組織、「FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle:燃料電池車)プロジェクト推進室」を日本国内に新設し、日本の自動車メーカーへのソリューション提案を強化する。

    自動化:自動運転へ向けて開発能力をさらに強化

    システム開発力の強化

    ボッシュは、2015年から日本で自動運転の公道試験を開始し、2016年には自動運転を含む先進技術のシステム開発力をさらに強化するための新組織「システム開発部門」を設立した。この組織は、既存の事業部門の枠組み超えたクロスファンクショナルな機能を持ち、包括的なシステム開発を手がけている。システム開発に特化したこの部門では、現在60名以上の様々な知識や経験を持ったエンジニアが開発に取り組んでおり、新組織の設立により日本の自動車メーカーに対して、より広範な開発サポートの提供が可能になった。また、システム開発部門では、自動化の技術にとどまらず、ネットワーク化ソリューションと連携した技術やサービスを提供する体制の強化にも取り組んでいる。

    自動運転を見据えたステアリングシステム事業の強化

    自動運転の重要な要素のひとつであるステアリングシステムでは、2015年1月にボッシュ・グループ傘下に加入した合弁会社が、グループ内の「オートモーティブ ステアリング事業部」として順調に日本での事業を拡大している。グループ加入当時に比べ、現在人員が約3倍に増加し、2017年の夏には新たなテストセンターが稼動を始める。今後、ますます増加する自動化のニーズに対応するため、またシステム開発部門との連携を強化するために、さらに積極的な事業展開を計画している。

    ネットワーク化:コネクテッドカー向けソリューションがさらに拡大

    車載ファームウェアの無線アップデート(FOTA: Firmware update over the air)、2019年に日本の自動車メーカー向けに提供開始予定

    コネクテッドカーの市場規模は、今後5年間で年率25%近い増加が見込まれている成長が著しい分野だという。コネクテッドカーの利点のひとつにソフトウェアやファームウェアの無線アップデート(FOTA)がある。FOTAにより、インフォテインメントだけでなく、自動運転など自動車の制御に関わる機能も無線で追加・更新が可能になるそうだ。ボッシュは、更新時の車内通信統制の役割を担うゲートウェイコンピューターからサイバーセキュリティ対策まで、FOTA に必要な全てのソリューションを一貫して提供できる世界でも数少ないサプライヤーだという。2019年には、日本の自動車メーカーの量産車向けにFOTAのソリューション提供を開始する予定だ。

    ボッシュの技術で駐車がより簡単に

    ネットワーク化が恩恵をもたらすのは運転だけではなく、駐車にも大きな変化をもたらすという。駐車にネットワーク化技術を取り入れるコネクテッドパーキングは、駐車スペースを探すストレスからドライバーを解放する。駐車場の空きスペースを検知し、リアルタイムで駐車スペースを確認・予約できるアクティブ パーキングロット マネジメントや、ドライバーが駐車場の入り口で降車し、スマートフォンで駐車の指示を行なうと車が自動で駐車スペースに向かい、また逆に車を呼び出すことも可能な自動バレットパーキング、路上を走行する車両が路肩の空き駐車スペースを検知し、リアルタイムで生成される駐車マップにより空きスペースの情報をユーザーに提供するコミュニティ ベース パーキングなどの便利なサービスがある。現在、ボッシュは欧州や米国でコネクテッドパーキングの実証実験に取り組んでいるが、日本市場においてもコネクテッドパーキング向けソリューションの提供を検討している。

    eCallのサービスセンターを日本国内に設立

    ボッシュは、2016年末から日本国内において緊急通報サービス(eCall)の提供を開始した。これは、自動車が事故の衝撃を検知するとボッシュのサービスセンターに自動的に通報されるシステムで、ボッシュはこのシステムに必要なハードウェアだけでなく、通信サービスも提供している。ボッシュは、日本を含めすでに世界40ヶ国以上で運用実績があるeCallのマーケットリーダーとなっているという。現在、日本国内ではeCallのみ提供しているが、今後、コンシェルジュサービスやロードサービスアシスタントなどサービスの拡大を検討している。

    また、ヴォルツ氏は、ボッシュのこれからの取り組みは、自動車だけにとどまらないことを強調し、AIの研究や、AIを活用した新事業が発表された。

    製造業でのIoTソリューション

    日本の製造業の顧客へIoTソリューションを提供している取り組みについても触れた。日本では、現在20件以上のプロジェクトが進行中で、中には日本初のプロジェクトもあり、世界に横展開を検討しているそうだ。また、データマイニングによって、人と機械がチームとして協働し、カイゼン活動をスピードアップしているという。

    AI(人口知能)でIoT事業を強化

    ボッシュは、モビリティの分野に限らず全ての事業領域において、IoTをリードするサプライヤーを目指している。現在、IoTソリューションは画一的なサービスからユーザーそれぞれの嗜好や特性に合ったカスタマイズされたサービスを提供するパーソナル化へと向かっている。IoTサービスのパーソナル化において、重要な役割を担うのがAIだという。このため、ボッシュは、2017年にAIの研究センター、Bosch Center for Artificial Intelligence(BCAI)を設立した。

    IoTによる事業領域の拡大:AIを使用したスマート農業向けソリューション

    ボッシュは、IoTに必要な3つのレベル(センサー、ソフトウェア、サービス)すべてにおいて活発に事業を展開している世界でも数少ない企業だという。この強みを活かし、日本で全く新しい事業領域に進出する。ボッシュは、2017年内にスマート農業向けソリューションPlantect(プランテクト)の提供を開始する予定だ。

    ボッシュにおけるAIの研究開発と事業への活用、ボッシュのAIを活用したスマート農業向けのソリューションについては、続きのレポートでさらに詳しく紹介をしていく。

    ボッシュ 2017 年次記者会見 レポート:

  • ボッシュの2017年度戦略
  • ボッシュにおけるAIの研究開発と事業への活用
  • ボッシュのAIを活用したスマート農業向けのソリューション
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