AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは?

スマートファクトリーのプラットフォーム化と要素技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1

第2回スマート工場EXPOが今月17~19日、東京ビッグサイトで開催された。IoT、FA、ロボット、AIなど、スマートファクトリーを実現するための技術、ソリューションが出展。昨年より規模は2倍に拡大したという。工場のIoT、デジタル化という観点で、今回取材して気づいたことは、主に以下の3つだ。

  1. 顧客がPoCを簡単に始め、すぐに成果が出せることを目指した、可視化や予知保全のパッケージソリューションが増えてきている。
  2. データの取得から可視化、予知保全に至るまでのプラットフォームを、エコシステムとして共有する動きが進んでいる。
  3. センサーやロボットなどの要素技術において、高い技術力を持つ製品が多く見られた。

1と2については、データの取得から活用に至る一連のソリューションが充実してきたこと、そのうえでパッケージ化の顧客ニーズが高くなってきたことが背景にあると考えられる(PoCに取り組む顧客の母数が増えたこともあるだろう)。

そんななか、ソリューションを提供する企業は、どこまでをエコシステム化し、どこで差別化をはかるのかを問われてきているとも言える。

今回のレポートでは、2と3にフォーカスして各展示を紹介していく。

”エッジ”のオープンプラットフォーム「Edgecross」

スマートファクトリーのプラットフォーム化と差別化技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1

Edgecross(エッジクロス)コンソーシアムは、昨年の11月、政府が掲げる「Society5.0」と「Connected Industries」に寄与することを目的として、アドバンテック、オムロン、NEC、IBM、日本オラクル、三菱電機株の6社を中心に設立された団体だ。

NEC・アドバンテック・オムロンなど6社がEdgecross(エッジクロス)コンソーシアムを設立、エッジコンピューティング領域で連携

具体的には、エッジコンピューティング領域における共通のソフトウェアプラットフォーム「Edgecross」をつくるということが目的だ。今年4月からの製品化が予定されている。

Edgecrossが担うエッジコンピューティングの領域は、CC-LINK IE、EtherNet/IP、EtherCAT、OPCなど、あらゆる通信プロトコルに対応する「データコレクタ」、データのリアルタイム処理やモデル管理などを行ういわゆる「エッジ」の層、そして、稼働監視やデータ分析、予知保全などを実行するアプリケーション、この3つの層を担う。

Edgecrossはソフトウェアであり、同コンソーシアムに参画する企業のハードウェア(産業用PC)にインストールすれば利用できる。産業用PCは、既にアドバンテックやCONTECなど多くの企業の製品が対応している。また、データを活用する最上位のレイヤー(オンプレ、クラウド)については、NEC、IBM、日本オラクルなどが対応している。

スマートファクトリーのプラットフォーム化と差別化技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1

製造業IoTのオープンプラットフォームと言えば、ファナックの「Field System」がある。しかし、同プラットフォームの産業用PCは「FIELD BASE PRO」やシスコ製品で決まっているが、Edgecrossでは複数の企業が参加できる、など違いがある。

インダストリー4.0のシナリオからすると、今後のプラットフォームの統一化は世界的に進んでいくと考えられており、両プラットフォームの動向も注目されるところだ。

高速イメージセンサーを活用した工場ソリューション

スマートファクトリーのプラットフォーム化と差別化技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1
アーム型ロボットが、部品を右から左に運んでいる。中央にある青のデバイスには従来のCMOSセンサーが、赤のデバイスにはIMX382が搭載されている。
 
次に、スマートファクトリーに貢献する「要素技術」に着目し、いくつか製品を紹介していく。

可視化や予知保全をはじめ、工場IoTのさまざまなソリューションを手がけるFAプロダクツは、ソニーの最新のCMOSセンサー「IMX382」を活用した高速画像処理のソリューションを、今回の出展から新たにリリースした(実用化はこれから)。

カメラなどに搭載されるCMOSセンサーは画像処理能力に優れており、最近では自動運転などにも活用が期待されている。しかし、従来のCMOSセンサーは高速に動く物体を撮るのが得意ではないという弱点があった。

なぜなら、CMOSセンサーは、対象物をとらえる「検出センサー」と、画像を撮像する「画像センサー」が別のチップになっており、信号を送る際にどうしてもタイムラグが発生するからだ。

しかし、ソニーが昨年開発した「IMX382」は、この二つの機能を一つのチップで実現しており、検出センサーがいらない。つまり、外部トリガーなしで画像センサーのみで撮像できるため、対象物への高い追従性が実現する。

スマートファクトリーのプラットフォーム化と差別化技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1
左の画像では対象物がぶれて見えるが、右の画像では対象物が鮮明に映っている。
 
FAプロダクツは、アーム型ロボットを使い、「従来のCMOSセンサー」(青)と「IMX382」(赤)がそれぞれ高速で動くピースを撮像するというデモを行っていた。実際に画像を見ると、従来のCMOSセンサーでは画像がぶれてしまっていたが、「IMX382」ではきれいに撮像できていた。

スマートファクトリーのプラットフォーム化と差別化技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1
高速撮像が可能になる機構とメリット/デメリット
 
同社は、このシステムを工場向けのソリューションとして応用できないかと、ソニーと共同開発を進めている。たとえば、前述のデモのように高速で動くラインの異常検出などが応用例としてまず考えられる。

あるいは、産業用ロボットに搭載すれば、追随性が高く対象物の状態や動きをリアルタイムでフィードバックできるので、AIを活用した自律的な動作やティーチング作業にも応用できるかもしれない。

スマートファクトリーのプラットフォーム化と差別化技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1
左から、メーター、IMX382搭載カメラ、モニタリング画面
 
さらには、アナログメーターの状態を「可視化」するツールにも活用が期待される。

工場で使われているメーターは通常、現場の担当者が目視で管理し、点検した内容を紙に記録するなどの対応を行っている。カメラで監視するという方法もあるが、それはメーター単体ごとに監視し、人がチェックするというのが普通だ。

それでは手間である上に、精緻なデータは得られない。また、異常を発見した際は「人が走って止めに行く」などの対応が必要だ。

しかし、「IMX382」を組み込んだFAプロダクツのシステムを使えば、メーターの動きを高速で撮像することで、精緻なデータとして可視化できる。また、一つのカメラで複数のメーターを一度に監視し、異常があった際は装置自身で自動停止できるという。

FAプロダクツは、他にも「IMX382」を応用したさまざまなアプリケーションを検討していくとのことだ。

アナログ機器からデータを取得する「IO-LINK」デバイス

スマートファクトリーのプラットフォーム化と要素技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1
左上が「IO-LINK」ゲートウェイで、左下のアンテナとケーブルでつながっている。その上にある三つのデバイスが、RFIDタグだ。用途により形などの特長が異なる。タグをアンテナに近づけると、データの書き込み/読み取りができる。

「IO-Link」は、「IEC 61131-9」で標準化されたI/O接続技術だ。この技術を活用して、センサやアクチュエータのデータをデジタル信号で上位システムに接続することができる。

ドイツのセンサ専業メーカであるBALLUFFは、さまざまなセンサデバイスや、センサとPLCの間のハブとなる「IO-Link」ゲートウェイなどを販売している。

同社は、最新の製品として、RFIDを活用したソリューションを提案していた(近日中に発売予定)。インダストリー4.0では、部品もICタグを搭載し、他のモノや機械とつながることが想定されており、重要な要素だ。

金型やエンジンなどの部品に、HF/UHF(RFIDの周波数帯、UHFはHFより通信距離が長いなどの特長がある)タグを搭載する。それをアンテナが読み取り、「IO-Link」ゲートウェイを通してPLCと接続される。このタグは、いわばメモ帳の役割を担う。

スマートファクトリーのプラットフォーム化と要素技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1
・3つのRFID:用途により形などの特長が異なる(中央はボルト型)。
・左下はアンテナ。RFIDタグをかざすとデータの書き込み/読み取りができる。
 
PLCからこのタグに情報を書き込み、また読み取りもできる。タグは、その部品での使用が終われば、次の部品に接続して何度も使うことができる。タグには、接続する部品の形状や使用環境に応じてラインナップがある。

データを収集し、活用するまでのIoTプラットフォームは充実してきているが、その前に欲しいデータを取得できなければ、宝の持ち腐れになってしまう。そのため、このようにあらゆる機械や部品からいかにデータを収集するかというハード面での技術も重要となってくるだろう。

「空気圧」を駆動力とする人協働ロボット「BionicCobot」

スマートファクトリーのプラットフォーム化と差別化技術 —第2回スマート工場EXPOレポート1
FESTOの人協働ロボット「BionicCobot」
 
空気圧機器メーカーであるドイツのFESTOは、インダストリー4.0をテーマにした幅広いデバイス製品を提案していた。そのなかでも、もっとも注目を浴びていたのは、人協働ロボット「BionicCobot」だ。

同社は、ロボットメーカーとしても注目されており、2011年には鳥の飛行を模倣した興味深いロボットを開発している。

デジタル化された工場ではロボットを活用する場面も増え、ヒトとロボットの協働作業が重要になってくると考えられている。そのため、安全策を必要としない「人協働ロボット」が注目されている。

多くの人協働ロボットはモーター駆動だが、FESTOの「BionicCobot」は空気圧アクチュエータで駆動するという。コンプレッサーと同社の電子制御システムがあれば、モーターなしのロボットが実現する。

空気圧を使ったロボットは、モーター駆動に対して、ヒトに触れた時の柔軟性に優れ、安全だという。また、モーターを搭載していないので軽いという特長がある。「BionicCobot」の総重量は6 kgで、過般質量は約1.5 kgだ。

他メーカーと同様に、タブレットを用いてノンプラミングで動作をティーチングすることが可能だ。同製品は、海外ではもう販売しているところもあるようだが、日本では今年の夏ごろよりリリース予定だという。

【関連リンク】
エッジクロスコンソーシアム(Edgecross Consortium)
FAプロダクツ(FA Products)
ソニー(Sony)
バルーフ(BALLUFF)
人協働ロボット「BionicCobot」

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