CES2018で感じた、コンシューマーIoTにおける“繋ぐ”価値の必要性

CES2018 HUAWEIのキーノートで発表されたWhole-Home Wi-Fiシステム(上写真)を見て、10年以上前に携わっていた、オフィス用IP電話のことを思い出した。

当時、オフィス内のどこであろうとIP電話で安定した音声通話を提供するためにWi-Fiのメッシュネットワークの構築と毎日安定したネットワークが提供される運用に苦慮していた。

システムの提供から離れて何年も経過したが、ここにきてコンシューマー向けのインテリジェントなWi-Fiソリューションに出会い、じわりと感動をしている。当時は制御システムがそれぞれのアンテナをコントロールするのものだったが、この製品は1つ1つがお互いを意識して安定したネットワークを維持する仕組みになっているからだ。

さらにはPowerlineネットワーク(建物に設置されている電力線を使って情報を伝達する方法)にも対応し、家庭の設備状況にもよるが、コンセントに繋がっている電力線を活用できるため、それぞれのWi-Fiルーターを有線LANケーブルで接続する必要もない。現状でも、多くの家庭で、急にWi-Fiが途切れる、テレビでVOD等を視聴する際に不安定になる、といったことが発生している。このようなインテリジェントWi-Fiが増加していくことで家庭内のネットワーク環境が急速に高品質化していくだろう。

安定した家庭内Wi-Fi環境は重要だ。

しかし、安定した通信ができるだけでは生活者のストレスは減るが、大きな行動変化はない。スマートシティの創造にAIとコネクテッドが必要なように、家庭内でも通信環境にAIが必要になってくる。インテリジェントWi-Fiから、家庭内でのインテリジェント・コネクテッド環境が求められていく。

家庭内に必要なAIがコントロールする通信環境

CES2018 LG

CES2018のSamsungやLGのブースでは、製品の単体展示よりもリビングやキッチンという場所の展示がメインになっていた。

利用シーン展示はこれまでもあったが、今回は目的別ハードでコーナーを括るのではなく、人の行動を先回りするインテリジェントな環境の提案と受け止められた。

例えば料理を作る場合、冷蔵庫で材料提示とレシピ提案があり、レンジやオーブンが調理の準備を自動的に始め、気になったことはAIスピーカーに質問し、調理時間はタイマーで自動設定してくれる、というようなイメージだ。

将来的には調味料をロボットアームで渡してくれることや、材料の軽量、下ごしらえの自動化も実現されるだろう。

人の行動を中心に、人が快適に行動できる環境を次々と先回りして構築されていく未来が垣間見えた。

 
このような未来を考えた時、Wi-Fiはどうなっていくのだろうか。生活者視点では、Wi-Fiでも、LTEや5Gでも、速度と品質が一定以上であれば、使い勝手は変わらないため、通信手段は条件を満たせばどのようなものでも良い。

生活者が新たな価値を感じる環境を提供するためには人の行動を先回りすることが重要になる。

そのためには「通信の安定性」ではなく、人の周囲にあるそれぞれのデバイスが繋がり合い、それぞれのデバイスが認識し合うことが必要となる。

CES2016のキーノートでIBMではAIという言葉は使わず、“Cognitive(認識・認知)”と言っていたが、「認識し合う」ことで構築される環境、提供される体験は全く新しいものになるだろう。

ふと思うことがある、通話に対して時間で対価を得ていた時代。今ではすっかり通話は“し放題”が当たり前になった。

データ通信の方は、モバイルの場合は従量制。

人と人を繋ぐ、人とクラウドを繋ぐことには価値があり、今でも通信料金、インターネット接続料金は多くの人がその価値の対価として支払っているように、“繋ぐ”ことは非常に大きな価値を持つ。

IoT時代は人もモノも情報も、あらゆるものが繋がり合う時代。

AIが多様な“繋ぐ”を提供するとき、何と何を繋ぐと対価を得られるのだろうか、ビジネスになるのだろうか。

冷蔵庫と電子レンジを繋ぐことで有料化できる価値があるのかもしれない。

キッチンにある家電やシンク、コンロが繋がり、料理ができなかった人が、できるようになるキッチンとして提案されたら、多くの人が対価を払うだろう。

洗濯機に衣類を入れるだけで洗濯、干す、畳む、収納を全て自動で実現してくれる、洗濯機とベランダ、クローゼットを繋いだマンションがあれば、維持費等、サブスクリプションで新たな収入を得られるのではないか。

企業にとって収益が得られることが顕在化するとスマートホームやコンシューマーIoT市場の拡大が加速するだろう。

コンシューマーから対価を「得ない」ビジネスモデルが増えているが、コンシューマーIoTの促進のためにも、コンシューマーから対価を「得られる“繋ぐ”」を探索してきたい。

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